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地獄の練習会

「それくらいで疲れた?練習中に座っていいわけないだろ」


 突き刺さる冷たい視線。周囲には崩れ落ちる男子高校生の集団。やばいところに来てしまったかもしれない。


 ため息をついて俺たちに背を向け、「休憩」とだけ吐き捨てるように言うと本日の講師はあっという間に姿を消した。


 平和だったのは準備体操だけで、ウォーミングアップという名の体育館の端から端までインターバル五秒の往復走(何回やったから忘れた)から始まった練習は恐ろしいものだった。最初がそんな終わりなき地獄のシャトルランだったから、すでにこの時点で心が折れかけている人がチラチラいた。だってさ、制限時間に間に合わなかったらその場で腕立て五回スクワット五回してからまた地獄に合流するんだよ。そんで俺がちょうどきつくなってきた頃にようやく、「全員五回連続遅れず走りきったら終わり」とかいう恐っそろしい条件が宣告された。一生終わんないかとおもった。

 そうしてお次は、唯一の希望だった休憩を挟むことなく体幹トレーニング。いつも部活では一、二分とか三十秒とかで各メニューこなしてたけど、それをこれまた延っ々繰り返すもんだからもう腕はプルップル。まだラケット一回も持ってないのが信じられないくらいだった。

 そのまた次は、ここまで来ると覚悟していたもののやっぱり休憩なしでフットワーク(もちろん制限時間とペナルティ有)が始まり、もう阿鼻叫喚だった。俺も、あんま記憶がない。


 そうして今に至ったものの、かれこれ一時間以上ラケットを握っていない事実と丸一日の練習のうちまだ一時間しか経っていないという事実とを理解することを脳が拒んでいる。チラリと周囲を見回せば、流石というべきか三強と虎視眈々とそこに割って入ろうとしているいくつかの学校の選手は、汗も軽くしかかいていないしもちろん座り込んでもいない。嬉しいことに晴風の面々もしっかり立っている。俺はめっちゃ肩で息してるけどね。頭もフワフワするし。

 一瞬静まりかえった後、お互い顔を見合わせながらひとまず言われたとおり休憩に入る。これだけの大人数がいると、学校ごとに固まって水分補給へと向かう様子はなんか迫力がある。


「あれ?やっぱり涼だよね?」


 俺もどうにかみんなの後に続いて南先輩の元へと歩き始めたところで、一番聞きたくなかった声がした。聞こえなかったふりをしてそのまま距離を取ろうとしたものの、残念ながら肩を掴まれる。


「何?」

「何?はないでしょ?は~……ほーら、やっぱり参加してるじゃん」


 立ち止まる俺に気づいたのかわらわらと戻ってくるチームメイトを見て、ああこれは隠し切れないと悟る。ほんっと、今日ろくなことない。


「どーしたん?知り合い?」

「涼のチームメイトかな?初めまして、涼の兄の天野(よう)です!」

 『えー?!』


 晴風高校バドミントン部一同の悲鳴が、高い天井に吸い込まれていった。

 俺にとってこの練習会が、物理的にも精神的にも地獄の練習会になった瞬間だった。

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