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我等上州羽球部!―青春部活群像劇―  作者: 織羽朔久
青葉と小鈴さん(番外編?)
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合宿二日目消灯前(一方その頃)

時は戻り颯太郎が囃子君の爆発に出くわしていたちょうどその頃のこと。ある意味番外編のような感じかもしれません。


小鈴さんの過去の話を少々。合宿中あまり登場しなかった青葉を添えて。


 「あれ?鈴?」


 聞き覚えのある声。でもできれば勘違いであってほしかった。


「…………久しぶり」

「あー!やっぱそうじゃん!」


 残念ながら振り返れば頭に浮かんだ人物が少し成長した姿で手を振っている。私が小学生の頃、通っていたバドミントンスクールのチームメイト。


「そっか、みーちゃん小学校までは埼玉って言ってたもんね。知り合い?」

「…………元、チームメイト」


 相手があれこれ投げかけてくるのにあたしが何も返せずにいたからか、キョロキョロと私たちを見比べていた莉里ちゃんが首をかしげる。その問いかけに、ようやく喉から言葉を押し出した。


「そっか!あ、軽井莉里っていいます!」

「桃野三菜子です。よろしく」


 埼玉に合宿行くことが決まってから、もしかしたらとは思ってた。でもたくさん学校がある中で、まさか彼女の居るところに来てしまうなんて。

 私が転校するって決まった時、同じ中学に行かないなら敵だ。なんて言って私を無視して孤立する原因をつくったくせに、随分都合がいい。まあ、あれがあったおかげで周囲に振り回される必要なんてない。自分の思ったように堂々とやってれば文句言える人なんてそうそういないってことわかったけど。


「やだなー、もしかしてクラブでのこと気にしてるの?あれってバドミントン続けてたら関東とか全国で会うかもしれないから、負けないぞってことだったのに~!」


 仮にそうだったとして、あの時あたしが傷ついたことは変わらないから。


「なんのこと?こっちでも凄い良いチームに入って楽しんでるから。今日は戦えるの楽しみにしてるね」


 あの子がレギュラーに入ってないのは着ているユニフォーム見てわかっていたけど、その上でこれを言ったんだからあたしも大概かもね。引きつった顔を見てちょっとすっきりしたし、試合としても祭千相手の団体戦で一勝一敗に持ち込めて最高だった。


 夜自販機で遭遇した青葉も、


「女子めっちゃ調子よかったね!強豪って感じだった!」


 なんてキラキラした目で声を掛けてくれたから、悪い気はしなかったな。実はあたし個人で見ると負け越してるんだけど、それはそれこれはこれ。

 でもその褒め言葉の後に、


「小鈴さん、祭千きてから元気なさげだったけど大丈夫?今は日中より顔色よさげだけど……」


 なんて言うから驚いた。あたしは冷めてるし感情もわかりにくいかわいげない奴だと自分では思ってたし、周囲からもそう見られていると思っていたんだけど、案外顔に出てるんだなって。


「…………よく気づいたね?今はむしろ凄くスッキリしてるから気にしないで」

「そりゃ気づくよ。小鈴さんはルールも教えてくれたし、自主練もしょっちゅう付き合ってもらってるし、僕にとっては一番の先生だもん」


 そこで素直に「ありがとう」を言えない自分は、やっぱり子供だなって後から思った。でも、こうも当然のような顔で褒め殺されると本当にどうして良いかわからないから。


「あ!そーいやさ、小夜川のスマッシュ特訓小鈴さんもアドバイスくれたり練習付き合ってくれてたって聞いたよ?雪渡さんも言ってたけどやっぱメニュー組んだり分析するの上手いんだね!すっごいね!」

「っっっっっもうっ!」


 ほんっとにどうしたら良いの?!この褒め殺しお化けを誰か止めて!

 あたしの声にならない声は、大分懐かしい埼玉の空へと吸い込まれていった。


中学時代の颯太郎にとってクールで周囲に左右されない人に見えた小鈴さんは、こうした過去があってのことでした。誰しもつらいことや悲しいこと、嬉しいことや楽しいこと、たくさんのことを経験して少しずつ変わっていくのかもしれません。


合宿編、これにて完結です。活動報告にあるようにインターハイ予選に向けてもう一山あるので、次回からもよろしければお付き合いください。


閲覧、評価、ブックマーク、いいね等いつも本当にありがとうございます。

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