最終日:午後(解散)
「小夜川!羽代!全国で待ってるからな!!」
凄い。自分たちはインターハイ出る前提なのか。まあ二連覇中だし、この二日でどれだけ強いかは嫌というほど見せつけられてわかっているけどさ。
夕日に照らされて一層ピッカピカの笑顔で囃子…………囃子はなび君はさも当然のように言い放った。ホント、名は体を表すとはこのことなんだな、と昨日初めて名前を聞いて笑ってしまったのを思い出す。本人にはそんなこと言えないけど、舞宮さんや副部長の氏子さんも、囃子について名前の通りの奴だって言ってたな。突っ走り、爆発し、そしておとなしくなり、また突っ走り。「はなび、憎めない奴なんだけど、同時に無自覚に色々刺してくるタイプでもあるからさ。ちょっとヒヤヒヤしちゃうんだよね。……あ、囃子のことね!」って舞宮さんが笑って、「まあ、手がかかるほどかわいいとも言うけど、もうじき俺等だって居なくなっちゃうしな」と氏子さんが頭を掻いていたっけ。僕は全国王者を率いるツートップに囲まれて反応する余裕がなかったけどさ。
まあ囃子のことは置いといて、本来は今頃晴風高校に到着しているはずなのにどうしてまだ埼玉に居るかといえば、急遽午後も残って練習したからである。コーチはどうやら自分が学生時代、祭千の監督に練習会で少しだけ指導してもらったことがあったらしい。それを伝えたところ話が盛り上がり、加えて先生も自分はまだバドミントンを全然知らないから、強豪祭千を作り上げた監督に学びたいと熱く語ってなぜか意気投合。「自分は名目上顧問であり監督ですが、残念ながら今のあの子たちを支える術をほとんど持っていません。でも、あの子たちが本気で全国を目指しているのはわかるから、だから、自分も全力以上の力でサポートしたいんです」って言葉には正直鼻がツンとした。そこまで本気で向き合ってくれてるんだなって思って。
祭千の皆さんには仮にも敵になるかもしれない相手に良いんだろうかって思うくらい色んなことを教えてもらった。実践での立ち回りとか、終盤に意識すべきこととか、本当に沢山のことを吸収させてもらった。僕だけじゃなくて小夜川にもスマッシュのアドバイスをしてくれる選手がいたり、天野先輩と花光先輩のダブルスや、僕と幹人先輩のダブルスについても色々外から見てのアドバイスをくれたり、たった半日でチーム全体が変わった。自分たちの学校だけじゃなくて、関東のバドミントンをもっと盛り上げたい。そこから全国も盛り上げて、高校バドミントンをもっともっと人気にしたい。そう微笑んだ舞宮さんが凄く大人に見えて、僕なんて自分や頑張ったとしてもチームのことで精一杯なのに、そんなに広い視野でバドミントンについて考えているんだって本当に驚いた。
まあそんなこんなで時間は過ぎて、時間の関係で解散も晴風に戻ってからじゃなく各自家に直行へと変わった。元々予算の都合上バスを借りられたのは行きだけで帰りは電車の予定ではあったんだけど、きっとこっちの駅って人多いんだろうな。うっかり迷子にならないようにしないと。女子はすでに帰宅中みたいだけど、雪渡さんが駅で迷子になったりして大変だったって長山先生のところに連絡が来ていた。ちなみに晴風の最寄り駅はなんと徒歩三十分。そして我が家の最寄り駅は徒歩五十分。さらに言うと晴風の最寄りはかろうじて駅員さん居るけど、家の最寄りは無人駅。だからここから歩いて十分足らずで最寄り駅だなんてこととても信じられない。
「それじゃあ、二日間本当にありがとうございました!」
整列して松下先輩の号令に続き挨拶をして、チーム祭千の見送りを背に駅へと歩き出す。
「三強中心の群馬をかき回す台風の目になってね」
「……?」
最後に舞宮さんがなにか呟いていたような気がしたけれど、囃子の声にかき消されて聞こえなかった。




