二日目:午後その5(頑張れ!凸凹コンビ)
サービスオーバー ワン・オール
主審が得点を知らせればすぐに歓声が沸く。祭千コールの圧がすごい。
「そうだよな!さっきのマグレだよな」
「よかった〜、やっぱ今日は早めに帰れそー」
盛り上がりに乗じて気づかれないと思ってる?それは大間違い!バッチリ聞こえています。そこの黒縁メガネの人とピョンピョン髪はねまくりな人!
だがしかし、彼らの言う通り正直さっきのはだいぶ運が良かった。さて、これで次は僕がレシーブ。ロングサーブで下げられたらどう動こうか。こうなったらいっそのこと、よっぽど高く上がったロブとかクリア以外は、全部前にいる松下先輩に処理してもらうっていうのも手かもしれない。
でもそれって結局ほぼ相手二人対松下先輩一人って感じになっちゃうよな。というかそれ以前に僕の方にばっかシャトル集められて、僕と相手二人の二対一にされる未来が見える。それで体力切れで僕がヘロヘロになったあたりで畳み掛けられておしまい。
あー。分かってはいたけど完全に僕が「穴」だ。明らかに他三人と実力が違う。又の名を晴風第二ダブルスの弱点。 うーん……、自分が一番分かってるけど改めて認識するとかなりグサッとくる現実だ。
そりゃね、いきなり全国王者相手に勝てるとはそりゃ思ってないです。勝たないといけないのは今じゃなくて、インターハイ本戦。そこにすら手が届くか怪しいから、今できることは試せるもの全部試してとにかく全力でぶつかることと、相手の様子はよーく見て良いところをどんなカラッカラのスポンジよりも吸収しまくること。
全国王者相手に試合ができるなんて、とんでも無い経験値になる。ただの消化試合になんて絶対にしたくない。
全員コートかベンチにいる時点で、晴風は祭千みたいな応援なんて絶対に望めない。だから今後どんな試合であろうと必ずアウェイになるのは確定済み。それに県内の体育館ならどこが会場になったってみんな大抵馴染みがあるけれど、県外になれば初めての場所で試合するのが当然になる。
この大応援団に囲まれた超アウェイな環境も、見慣れない初めての体育館だって、県の準決や決勝、それこそ全国に行かなきゃ本来は経験できなかったことかもしれない。ぶっつけ本番よりも、事前に予習できた方が絶対いいに決まってる。
全力で当たって砕けて、通用するところ、まだまだ足りていないところをこれまた全力で見つけないといけない。
なんとなくこれが白間川との部室防衛戦以来の初めての団体戦だったのもあってか、なんか自分で思ってる以上に力が入っていたのかもしれない。あの時は部室没収、最悪廃部も見えてくるようなとにかく絶対に負けられない戦いだった。バドミントン部が無くなったら、そもそもインターハイどころかどんな大会にも出られなくなってしまうから。
それに引っ張られて、今回も必要以上に「勝つこと」を意識しすぎたのかも。もちろんどんな試合だって勝ちに行かないとだけどさ、でも今日は練習試合。負けても次がある。わかっているつもりでいたのに、無意識のうちに変な力が入りすぎていたんだな。
だからって負ける気満々最初から降参なんてするわけはない。ちゃんと勝ちに行くけれど、ただ手堅い立ち回りをするんじゃどんどん差が広がって押し切られるのは目に見えている。だから、さっきの「なんとしてでも前衛で粘ろう作戦(今命名)」みたいに思い切ったことをどんどんしていく。地力の差はわかりきっているからこそ、そうじゃないと足りないものも通用するものも何も見えてこないはず。そうしてあわよくば一点目みたいな不意打ちをおみまいして、また体育館を森林のごとき静寂に包み込んでやろうと思う。
「悪い!ちょっと浮いたな」
あれこれ考えていた僕は駆け寄ってきた松下先輩の声で現実に引き戻された。そうだ、まだ一対一。考えることが多すぎて、なんかもっと時間がたったような気がしている。
「先輩、僕せっかくの練習試合だから色々試してみたいと思うんです。こんな機会滅多にないから、必ず何かを掴んで帰りたくて」
「良いじゃん!俺もまだダブルスって慣れてないけど、やってみるとすげー楽しいって最近思う。やってほしいこととかあればじゃんじゃん言ってほしいし、俺も羽代みたいにもっと試合中広い視野でいられるように勉強させてもらうな!相手の良いところも、じゃんじゃん盗んで帰ろうぜ!」
よーし!果たしてどんな結果が待っているのか全く想像ができないけれど、とにかく一本集中!ついでにギャラリーのみなさんに無名校の恐ろしさをお見せすることも目標にしたい。「早めに帰れそー」発言はかなりムカッとしたし。
試合になると中々書けない不思議。




