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二日目:午後その1(登場!祭千高校)

「い、い、い、いよいよふぇすね…………」

 

 ものすごく噛んでいる青葉に突っ込む者は誰もいない。いや、そんな余裕がないというのが正しいかもしれない。いきなり諸々すっ飛ばして全国の頂点との戦いだもん。どうして今日試合で明日合同練習なんだろ。いや、最初練習でも緊張することに変わりはないけどさ。


「よし、それじゃあオーダーは昨日も伝えていた通り第一ダブルスに天野・花光、第二ダブルスに松下・羽代。第一シングルスに小夜川、第二シングルスに松下、第三シングルスに羽代でいこう。こんなチャンスめったにないし、今は負けたら終わりの大会じゃない。思いっきりぶつかっていこう。青葉も、今回は試合に出ないけどいつ自分の出番がやってくるかわからないと思って、自分だったらどうするかをしっかりイメージしながら応援しよう」

『はい!』

「じゃあ、私からも一言だけ。技術的なことは何もアドバイスしてあげられない。だけど、少なくとも君たちが毎日毎日練習を続けてきたことは知っています。だから誰よりも応援しています。練習してきた以上のことは出せないとは思いますが、でも、気持ちだけは負けないつもりで行ってきてください。前向きでいれば、絶対運は向いてきます」

『はい!』


 コーチと先生からの言葉を聞きながらも、なんだかフワフワしている自分がいる。まあそりゃ、人生で団体戦に出た回数なんて片手で数えられるくらいだから当然かもしれない。


「それじゃ、いってらっしゃい」


 コーチの声を背中に受けながら、祭千学園がすでに待ち受けるコートへと乗り込む。ネット越しに整列する七人。さっき案内してくれた氏子さん……はわかるけど、他の人はとりあえず強そうってことしかわからない。全員僕より身長高いし、うわ、なんか凄い圧がある。相手は同じ高校生。それは頭でわかっていても、やっぱりちょっと構えてしまう。


「あっ!去年の関東一回戦の奴!」

「へっ?」


 こんなところに知り合いなんているはずないんだけど、どちら様だろう?ネット越しの視線が痛い。オールバック、怖い。背中に変な汗をかきながら、相手の言葉を思い返す。ん?関東大会……、一回戦…………!?


「あっ!」


 思い出した!去年の中学最後の大会。もう二度とやるかこんな競技!と思いながらも、奴らの悔しそうな顔を見ることが出来てすがすがしい気持ちで本当に久しぶりに楽しかった試合。これで最後!引退引退!ってのびのびやった試合の相手だ!


 関東大会常連で、僕に勝った後もどんどん快進撃を続け全国に出場。そこでも確か良い結果残してなかったっけ?だから実質僕も全国レベル~とかお馬鹿な歌を歌いながら帰った記憶がある。文字として日記に残していたら恥ずかしさで死ぬところだった。危ない危ない。


 だが、申し訳ないことに名前を全く覚えていない。顔覚えも悪ければ名前覚えも悪い僕に、一年前一度会っただけの相手を覚えていろなんて無茶なのである。逆にあっちはよく僕のことなんて覚えていたな。


「そこ、すぐ試合に入るから私語は後にしなさい」


 げっ、相手の先生に怒られちゃった……。慌てて謝りつつも、逆立ちしたってオールバックさんの名前は出てきそうになかったからラッキーだなんて思った。


「それでは、祭千高校対晴風高校の練習試合を始めます。礼」


 挨拶と握手を済ませ、気を取り直していよいよ試合がはじまる。女子の方は何校か集まっての練習試合みたいで、アップを済ませた後は別の体育館に移動してしまった。

 だから周囲に知ってる人なんて全然いない。対して祭千は強豪だけあって部員も多い。完全アウェイな感じ。そんな中まず松下先輩と僕はダブルス2。どんな人が相手だとしても、やってきたことをまずはしっかり出そう。


「羽代、それじゃ今日はよろしくな。緊張してるか?」

「お願いします!うーん……、緊張してるっていうよりはこんなところで試合できるなんて思ってなかったから武者震いって感じです」

「ははっ!白間川ん時も思ったけど、羽代って案外コートに立つと肝据わってるな」


 いつも通り楽しそうな松下先輩。先輩がこんな感じだから僕も通常運転でいられるところもあるんだけどね。今回は、普段組むことが多かった小夜川は第一シングルス。小夜川とも僕が動きの指示を出しつつゲームメイクをって感じで成り立ってはいたんだけど……。でも勝ち抜いていくことを考えた時にやはり晴風実力トップの松下先輩が試合に出る機会を増やした方が良いんじゃないかって方針になって、そうなると代わりに誰を第一シングルスに配置するかって問題が出てきた。


 ダブルス一番手の天野・花光組を崩すことは出来ればしたくないとなると、残る選択肢は僕と小夜川。松下先輩との相性を考えた結果今に至る。松下先輩と試合をするのは他校相手だと昨日の合同練習が初めて。果たしてどこまで通用するのか全くわからないものの、わからないなりにやってやるぞ。僕がやるべきことは先輩にダブルスでも百パーセントを発揮してもらうこと!


 じゃんけんの結果サーブからスタート。相手は二人とも三年生みたい。身長が高い方の人が、確か挨拶の時部長だって言ってた。絶対上手いんだろうな。


 あーダメダメ。余分なことは考えない!深呼吸深呼吸。


「よっし。最初から思いっきりやろう!」

「はいっ!」


 一球入魂。どこのコートだって、相手が誰だって、自分のバドミントンをする。


「ラブオールプレー!」


 昔から何度も何度も聞いた始まりの合図なのに、晴風に来てからはどうしてだろう、何回聞いてもワクワクする。


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