一日目:夕食
なんだか浮世離れした人だな。最初はそう思った。どこか近寄りがたいしあんな大人っぽいのに同じ高一とは思えない。
「一年生?」
「ひぃぇ?そ、そうです」
「ドーキューセーだ。なんでケイゴなの」
だから、ノックの時突然話しかけられてめっちゃびっくりした。最初自分に言ってるとは思わなくて、思わず声が裏返ったのは許してほしい。そんな僕の様子にふにゃりと笑う顔を見て、おかしな表現だけどなんか初めて目の前にいるのは同じ人間なんだって思った。
トキ君曰く、「見た目で勝手に近寄りがたいと思われてるみたいだけど、別に人と話すのヤじゃないし。ニホンゴそんな得意じゃないからうまく話せてないかもしれないけど」だって。最初に宮郷さんから紹介があったけど、それだけ海外暮らしの期間が長いのに今こんなに話せること自体凄いと思うんだけどな。
色々あって父はそのまま自分の生まれた国に残って、僕は母と二人で小さい頃暮らしてた母の地元に帰ってきたんだって。それで今二人暮らししてるって笑う横顔はやっぱり凄く大人に見えて、なんて言葉を返したら良いのか僕にはわからなかった。
そうしてはじまりぎこちなかったものの、元々トキ君は話すことが好きみたいでなんだかんだ練習の合間合間に声をかけてくれるから、いつの間にか敬語も抜けていたっけ。そんな風にして言葉を交わせるようになったタイミングで始まった試合練習は本当にワクワクの連続で、時間はすぐに過ぎてしまった。
小夜川君と組んだり、練習中だけど松下先輩とも組んだり。必殺小夜川スマッシュは、やっぱりとんでもない武器だ。一回僕の肩口をかすめたときは思わず「ヒェ!」って声が出ちゃった。小夜川が一番良い形でスマッシュが打てるように、僕も配球とかフットワークとか、もっと磨かなきゃ。
松下先輩とのダブルスは欠点が明確にある。先輩の動ける範囲も打てる球も多いが故に、相手に任せる球と自分が取る球との判断が苦手みたいで、近くに来たから取ろうとした僕と自分が取れると思って動いてきた先輩がごっつんこしたりお見合いしたりが多発。
ある意味取ろうと思えばほとんど自分で取れちゃうってとんでもなく凄いことなんだけどね。でもダブルスは二人でやる競技だから、それだけじゃ勝てない。
追いつくことは難しいけど、それでも僕が松下先輩に合わせられるようにならないと。先輩は割と動きが直感的だから、それを生かすには僕がゲームメイクできるようになった方が絶対良いよなって思って最近は修行中。考えることは多いけど、でも楽しい。晴風に来てからはシングルスよりどっちかといえばダブルスに手応えを感じている。
そしてどんな相手とでも合わせられるようにする練習の一環でトキ君とも組ませてもらったんだけど、凄かった。対戦相手として戦った時点でわかっていたものの僕だったら二歩は動かないといけないところにちょっと手を伸ばしただけで届いちゃう。
リーチがまるで違う。高校生になって、ちょっと身長も伸びて体もできてきて、めっちゃ良い感じ!これなら中学の頃のあいつらにだって見劣りしないかも。なんて思ってたのにトキ君と比べたら大人と子供みたいでなんか複雑。
まぁ、僕は僕のやり方で進むしかないなんてわかってるけどさ。それでも人間って、無い物ねだりしてしまうものなんだよな。それでもあの反応の早さとか、返球の早さとか、僕でもできそうなこともあったから吸収できるだけ吸収してやるぞって必死だった。でも中学の頃みたいな切羽詰まった感じじゃ全然なくて、むしろ楽しい。すんごく充実した時間を過ごせたなって思う。
もっともっと練習したかったけどやっぱり空腹には勝てずに、今は夕食のバーベキュー真っ最中。
「ソウは、夏に大会出るの?」
おにぎりを取りに行こうとしたタイミングで、隣でモグモグとナスを頬張っていたトキ君が首をかしげる。
「そうだね。個人戦はどうなるかわからないけど、団体戦で全国目指す」
「そっか。白間川もチームで頑張るみたいだから、セイフウと試合できるといいな。今日、久しぶりにバドミントン楽しかったから」
そう笑うトキ君の目は楽しげだった。
「全国大会なんて出たこともないから、全国優勝なんて雲の上だけどさ。でも、せっかくやるならいっぱい勝ちたいじゃん?例え誰が相手でも、負けたくない!もちろん白間川にも負けない!」
「雲の上……?ちょっとわかんないけど、ソウたちならきっと空飛べるよ」
ちょっとトンチンカンな返答に思わず吹き出すと、トキ君はむくれていてさらに笑ってしまった。次は本気でやっちゃうから。なんて恐ろしい言葉が聞こえた気がするけれど、空耳ということにしておこう。
今年は今までで一番更新できました。
まだまだ手探りですが楽しみながら進めていきますので、来年ももしよろしければお付き合いください!
ありがとうございました!!明日も更新目指します。




