一日目:昼休憩(遭遇)
「食べながらでいいんだけど、午後の話ちょっとするね」
残ったご飯を夢中でかき込む面々の視線がこちらを向いたことを確認して、続ける。
「午後は合同練習って伝えてあったと思うんだけど、相手ってみんなに言ってなかったよね?実はその相手…………白間川学園です!」
「えー!?」と一年生(+天野)の声が見事に揃った。花光が目をまん丸にしているその横で、松下はうんうんと頷いている。部長としてスケジュールを把握してるからね。
「じゃあここからは松下にお願いしようかな?」
「はい!この前練習試合した時宮郷さんとは連絡先交換してたんだけど、あれから白間川気合い入ってるらしくてさ。コーチとかいないから全部練習も宮郷さん中心にやってたけどそれだけじゃ限界があるから他校の練習方法を取り入れたいんだって。でも白間川って名前だけで怖がられて中々他の学校から合同練習受けてもらえないらしくてさ。だから、うちなら一度試合もしてるし、受けてくれるんじゃないかって連絡くれて。それで先生とも相談した上でじゃあ一緒にやろうかってことになって今に至る!」
そう。松下の言う通り宮郷くんと松下の繋がりからなんだかんだで今に至る。晴風も晴風で環境も体制も整ってるかっていうとそうでもないから白間川が求めている練習ができるのかはなんともいえない。
でもきっと、普段と違うことをするってことが白間川にとっては大事なんだと思う。こっちとしても、普段と違う人とやれば練習内容が同じでも全く違った感覚や気づきもあると思うから、しっかりメリットがある。
「しかもあっちは新メンバーもいるらしい!どんな奴か楽しみだな」
「え!そーなんだ。あんまり怖そうな人じゃないといいけど」
あの練習試合から早二ヶ月ほど。一体あの白間川がどうなっているのか全く想像がつかないし、白間川の新メンバーがどんな人なのかも全くわからない。天野の言う通り怖い人じゃないといいな、とはボクも思うけど。
「新メンバー……一体どんな奴なんですかね。四月の練習試合以降すげえ気合入ってるって俺も噂で聞いてるし、こっちも気合入れないと」
「あれ、情報収集まだやってたん小夜川?」
「あっいやっこれは、その、せっかく身に着けたスキルなので、今後も何かしら役に立つかもしれないと思ってつい……」
小夜川、最近毎日スマッシュの練習漬けだったから体力的にも相当きついんじゃないかと思ってたんだけど、知らないところでさらに頑張ってたんだ。松下が驚いたのも当然だよ。
「偉いけど無理しすぎないようにな。っと全員食べ終わったみたいだから、片付けしたらちょっと休憩―!午後もみっちり練習だからしっかり休めよ」
張りのある号令を合図にちゃちゃっと片付けを済ませた後は一時解散。部屋に戻ったり外に出て行ったり、皆思い思いの時間を過ごすみたい。
ボクもちょっとタオルだけ干したら休憩しよっと。
そう思って洗濯機から取り出したタオルをかごに突っ込んで外に出た。
いい感じに日差しもあるし、この分じゃあっという間に乾きそう。ちょっと嬉しくなって鼻歌交じりに干していく。あと数枚でおしまいというところで、突然強い風が吹いた。
「あっ!」
ちょうど持っていた一枚が空に舞う。
慌てて追いかけて、道路に出てしまう直前でなんとかキャッチした。少し上がった息を整えて視線をあげると、そこにはサラサラな金髪の……見慣れない人が立っていた。
え……、どなた?
自分通ってるところに言うのはちょっと複雑だけど、晴風高校の周囲は田んぼ田んぼ隣に田んぼ、畑を挟んで田んぼ産直、最寄り駅まで徒歩三十分コンビニまで徒歩四五分!みたいな感じだから、周囲にいる若者といえば九割九分晴風高生!のはずなのに、見慣れない白いジャージに身を包んだその人は全く見たことがない。
まあ、今日白間川が来るみたいにどこかの部活と練習に来てる他校の人かもしれない。そっとしておこう。そうUターンするつもり、だったんだけど……。
「ねぇ、セイフウコウコウってここであってる?」
「え……、そう、ですけど」
「そっか。じゃあダイたち来てる?」
「えっと……?」
ダイ、誰?突然質問を投げかけてきた謎の人物は、近くで見てわかったけれど金色に近い茶色の髪は地毛。それにこの瞳や顔立ち、もしかすると留学生だったりするのかな?
「ダイ、今日レンシュー試合だからここに来いって言ってたんだけど、いない?」
そう困ったような言葉を発するものの、表情はあまり変わらない。よく見れば彼の傍らにあるのはラケット。と、いうことは……。
「あの、もしかして白間川高校のバドミントン部?」
「……そう!ダイ、いない?」
わーお!噂の新人さんと先に出会ってしまった。でも、まだ集合予定の時間まで三十分以上はあるし、もうしばらくは他の白間川の人たち来ないんじゃないかな?
「あれ?ダイ、何度何度もジカンゲンシュってうるさいたから来たのに。絶対わざと早い時間言った。いいや、来ちゃったしテキトウに待ってる」
集合の時間を伝えてみれば、一人で勝手に納得してこちらに背を向ける。
「ありがと。試合、久しぶりだからちょっと楽しみにしてる」
最後に振り返ったかと思えば、口の端だけで笑って手をひらひら。フワっと登場してスルっと去って行く。結局彼が何者なのか全くわからないし、ダイは結局誰なんだろう?
すらっとして背も高いのに猫背な背中を見送りながら、なんともいえない気分になった。
本当に、一体何だったんだろう?というか、何か忘れているような……?
「あっ!タオル干してる途中だった!」
休憩時間は慌ただしく過ぎていく。
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