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一日目:午前

もしかすると後から加筆・修正するかもしれません。その場合またこちらでお知らせします。

 どうにか寝ることができるくらいに整えて、体育館にたどり着いた男子バドミントン部一行。なんか朝から騒々しい感じになっちゃった。

 申し訳ないことに、女子が既に体育館の準備は済ませてくれている。女子の方は幸いにもすでに改装が済んだ第二棟を使ってるから、こんな目には遭っていないはず。


「あれ遅かったね。なんかあったん南?」

「んー……。合宿所の状態が、ちょっと……」

「あーなるほどね!なんか、お疲れ!」


 こちらに気づいた女子の部長が、先程までの出来事を聞いてからからと笑うと、顎のあたりで切りそろえられた髪がふわっと揺れる。


「準備全部そっち任せになっちゃってごめん!片付けはこっちでやるね。本当に助かった。ありがとう!」

「いーのいーの!気にしないで!」


 部長である芽谷(めや)さんを筆頭に、女子バドミントン部は学校でも微妙な立場の男子バドミントン部にずっと変わらず接してくれている。この前あった白間川との練習試合の時だって審判を買って出てくれたし、本気で全国を目指すボクらを笑わずに見守ってくれている。さらにはこの前の春風杯で校長先生が入賞者が多数出るという事態に驚きを隠せずお茶を吹いた話をしたら、お腹抱えて笑ってくれたっけ。白間川との試合以降、ちょっとずつ風向きが変わってきているのも一緒になって喜んでくれている、ある意味仲間みたいなものかもしれない。


「そんじゃ、せっかく広く使えるんだしちゃちゃっと練習始めちゃお」

「そう、だね。女子の方はコーチ来るの?」

「残念ながら都合付かなかったみたい。だからもし良ければ午前中は一緒に練習させてもらえたらなって思ってたんだけど……」


 芽谷さんの言葉通り、体育館にコートが一、二、三、四、五、六、七、八面?!第一体育館を午前も午後も全面使えるなんて未だに信じられない。合宿、最高!


「それは勿論!コーチ来たら伝えとくね」


 いかんせん人数が少ないから、普段の試合練習やノックなんかもワンパターンになりがちだ。だから人数増えるのは正直願ってもない。できる練習がグッと増える。


「おーし!それじゃ、男子集合!アップするぞ!」


 そうして始まった午前練は準備体操からのランニング、フットワークまではいつも通り。


 それからコーチや先生が登場し、怒濤の練習だった。この時期にしてはずいぶん気温も高かったからドリンクも減りが早いし、かと思えばコーチの補助のためにコートからお呼びがかかるしで、水道とコートを往復しているうちにどんどん時間がたっていく。よくボクを手伝ってくれていた青葉も最近ではすっかり皆と同じメニューをこなせるようになったから、一人でこんなに動き回るのはなんだかんだ数ヶ月ぶりだ。


 いやー、初日から見てるだけでかなりハードな練習の連続だ。シャトルおきのフットワーク全七種類二セットずつから始まったときには思わず「うひゃー」って声に出ちゃった。前後からの左右からの前二点、後ろ二点、斜め二点(フォア前からとバック前から全二種!)、前二点+横二点+後ろ二点の計六点フルコース、豊富なメニューに制限時間も着いてます!あんまりうれしくない欲張りセットだ。腰を落として全力移動の繰り返しはほんっとにキツイ。終わった後天野と羽代の顔色が真っ青だったし、小夜川の足はプルプルしてた。


 皆楽しみにしていた合宿。楽しいイベント盛りだくさん!かというと決してそうではなくて、家に帰る必要がないということはつまり余力を残す必要なんてない。つまり、気力体力の限界まで追い込む練習ができちゃうわけです。その昔晴風が全国大会表彰台の常連だった頃は、修学旅行や校外学習、果ては文化祭まで返上で練習漬けの日々だったらしいから、それに比べたらぬるいものなのかも。

 でも、時代が変われば練習も変わる。ボクらは短期集中型で。なんて、最近勝手に考えたりしている。


 一年生を加えたチームとして走り出してからは、全国優勝をめざし練習を続けている。新入生に向けた部活説明の時だって(むしろ赤T事件で松下がフライングしたけど)全国優勝目指してるってバッチリ宣言した。


 でも、現実がそう甘くないのはボクも松下も、多分他の二年生二人だってわかってると思う。いくら中学時代に全国の表彰台に上がった松下がいるとはいえチームで勝とうとしたらすごく厳しい。団体戦で戦う経験が晴風には不足している。去年だってもちろん選手三人じゃ出場のしようがなかったし。


 だから未だに、春体に出ない選択をしたことが正解だったのかもたまに不安になる。ちょっとでも経験を積むべきだったんじゃないかって。でも、県内で勝ち抜くのなら、余分な情報与えず一発勝負の方が可能性高いと思うんだ。これは全員でちゃんと決めたことだから、不安になることはあっても迷ってちゃだめだよね。


 勝つことが難しいのは、晴風チームの経験不足以外にも要因がある。去年から飛び抜けて上手い松下とそれを追いかける二人とではどうしたって差があって、普段部活での練習レベルは二人に合わせて松下がこっそり色々な練習会に出たり、自主練したりしていたのをボクは知っている。


 もちろん練習の甲斐あって二人だって上手くはなっているけれど、それでも関東大会をこの前経験したばかり。全国の舞台に立ったことはない。一年生も羽代が去年関東に出たみたいだけど、全員全国大会の経験はない。


 全国クラスが一人と、関東大会経験者が三人。それだけ見るとなんか強豪っぽいけど全員個人戦での出場で、純粋に団体戦で全国に出た経験のある人が一人もいない。つまりチーム内で実力や個性、経験がデコボコしている。更に言うとさっきのチーム経験不足にもつながってくるけれど、個人個人で見ても団体戦という面では経験不足なのだ。


 そうなるとシングルスはともかくとして天野・花光以外がどうダブルスでも勝っていけるかが課題。一人がいくら強くたって団体戦では勝てない。そのため小夜川はスマッシュ練習があったから別として、松下や羽代は最近ダブルスの修行中だ。


 つまり晴風の課題は大きく分けて二つ。

 まずは「チームとしての経験不足」これは、明日からの埼玉遠征で強豪と戦って何か得られるものがあるんじゃないかと思う。今後もできることなら県外の学校中心に団体戦自体はこなしていきたい。


 次に「個々の実力差」全員が残りわずかな時間で松下みたいになるなんて無理だけど、それでも誰がうちの最高戦力である松下と組んでもダブルスが成立するように、最低限持って行きたい。松下も、今までやってこなかったダブルスもこなせるようになってほしい。


 課題は山積みだし、現実的に見たら県内を勝ち抜いてインターハイに出場できれば万々歳だと思う。

 でも目標はでっかい方がいいし、言霊ってあるしね。より高いところを目指したってバチは当たらないはず。


「南先輩!レタスとトマト取り分け終わりました!」

「オッケー!じゃあ小夜川悪いんだけどスプーンとかも準備してもらっていい?」

「っす!任せてください!」


 っと、考えてないで手を動かさなくちゃ。ただ今本当にスーパーハードだった午前練習が終わり、昼食を準備中。メニューは何かというと、学校のイベントでお泊まりといえば!のあれです。

 スパイシーな匂いの……


 そう!カレー!


 本当は時間おいた方が美味しいのかもしれないけれど、食べ盛り運動部の胃袋はそんなの待てない。現に動いてないボクでも匂いがするのに夜までお預けなんて無理だし。


「うわ〜めっちゃいい匂いする!」


 あの練習の後でも元気な松下を筆頭にやってきた腹ペコ軍団によって、結局大鍋いっぱいに作ったカレーはひと匙分すら残らなかった。その他の設備ボロボロなのに、なぜかキッチン周りはちゃんとしていてよかった。「食事」という生命線を守るべく戦った人が過去にいるのかもしれない。


 残ったら夜チーズ山盛りカレーにしようと思ったんだけど、その計画は中止。夜は予定通り肉祭りが決行だ。


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