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一日目:集合

「おはようございます!!」


 元気な声が集合場所の合宿場入り口に響く。眩しい日差しに鳥の声。朝はあまり得意じゃないから、こんなに早くから元気な青葉がちょっと羨ましい。


「あれ?まだ羽代くんと春ちゃん先輩だけですか?」

「そう。南先輩が一番乗りで、僕も本当に青葉のちょっと前に来たところ」


 現在朝の六時半。普段の朝練よりも全然早い。


「もう楽しみでさー!明日は県外行くんでしょ?めっちゃワクワクする!」

「ね!しかも練習相手って埼玉でも有名なところなんでしょ?……きっとすごい人ばっかなんだろうな。なんか少し緊張するかも」

「え〜!僕、羽代くんのダブルスまた見られるの楽しみだけどな〜!」


 ポンポン会話のキャッチポールが続く。青葉だけじゃなく羽代も普段から朝に強い。ボクは珍しく早く目覚めたから一番乗りだったけれど、普段はギリギリか時間ぴったりだ。やっぱりちょっとワクワクしてるから、今日はあんなに早く起きられたんだと思う。


「おっ!もう三人もいる!おはようございます!」


 四番目は松下か。松下も朝から元気なタイプ。


「遅くなりましたっ!」


 松下に挨拶を返すか返さないかのうちに、続いて現れたのは小夜川。

 頭の後ろの方にはぴょんぴょん寝癖がついている。


「全然!まだ五分前だし大丈夫だよ」

「ほんとすみません。楽しみで中々眠れなくて、気づいたら寝過ごしてました……」

「ハハッ!楽しみなのはめっちゃわかる!俺も昨日はご飯お代わりせずに早く寝たもん」


 なるほど、小夜川は遠足前の小学生タイプか。松下に背中をバシバシ叩かれながら励まされている様子が、なんだかいつもよりちっちゃく見えた。


 そういえばもう五分前か。さっきは目に入った時計を見て口に出したものの、改めて確認するとまだ普段なら布団から出た頃。あと来てないのは……えっと、二人?かな?やっぱりまだ頭があまり働いていない。


 天野……は基本オンタイムだからまだ来てなくても不思議はない。いつも通り。でも花光は?いつも十分前くらいには来てるイメージだけど、何かあったのかな?


「よしセーフ!おはようございます!」


 あれ?天野が先か。靡く黒髪が朝日に照らされてなんだかキラキラしている。本人がたまに言ってるけど、確かにやっぱり晴風には中々いないタイプだなって思う。うちってメガネ率高め、真面目な子や穏やかな子多めって評判だし。でもそれに対してなんていうか天野は都会っぽいっていうか、今ドキっていうか、なんかそんな感じがする。


「ってあれ?俺最後だと思ってたんですけど、もしかしてまだひなた来てないんですか?」

「そうなんだ。特に体調不良とかの連絡も来てないから、こっちに向かってるんだとは思うんだけど……。松下の方には何か連絡来てる?」

「えーっと……いや、来てないっすね」


 本当に大丈夫かな?事故とかに巻き込まれたりしていなければいいけれど。

 時計はすでに集合時刻を一分過ぎている。


「…………遅く、なりました!遅れてすみません……」


 あっ、よかったぁ。噂をすればなんとやら、現れたのは息を切らした花光。


「珍しいじゃん。何かあったん?」

「……お姉ちゃ……、姉が寝坊して、母も流石に車で二往復は嫌だっていうので準備待ってたら……ギリギリになっちゃって……」

「あ〜、ほたる先輩が!しっかりしてそうだと思ってたからなんか意外かも」


 二年生の会話を聞きつつ納得。花光の、花光ひなたの姉ほたるさんもボクと同じで朝が苦手。たまに朝練駆け込みで飛び込む仲間。どうにかシャキシャキ動けるようになりたいんだけど、なかなか難しいっていつかの朝練終わりに口をとがらせていたっけ。遠くから、ほんっと間に合わなくて申し訳ない!とちょっと悲しげな声が聞こえた。

 そう、実は今回の合宿は女子も同じ日程。実は明日から埼玉に行けるのも、元々女子にお声がかかっていたから。その相手先に長山先生が頼み込んでくれてなんとか男子も参加させてもらえることになったって経緯がある。


「おっし!じゃあ全員揃ったし、部屋に荷物置いたらすぐ体育館行くぞ!」


 一日目は学校で練習。普段よりも時間があるからこそ、より密度の高い練習ができると良いな。合宿所に飛び込む松下の背中を見ながら、今日の計画をもう一度頭の中でおさらいした。


 ちょっと歴史を感じる合宿所に入るのは久しぶりで、このちょっとほこりっぽいにおいすらなんだか懐かしい。あれ?でもなんていうかその……。なんか黒いものが走り抜けていったし、床や壁は所々変色しているし、なんか記憶の中より状態がひどい気がする。ていうか絶対ひどい。初めて足を踏み入れたであろう一年生の顔がちょっと引きつってるように見えるのも、多分気のせいじゃないと思う。


「……昨日軽く換気とかは先生してくれたって言ってたけど、ちょっと棚とかほこりっぽいとこだけ軽く水拭きしてから練習に入ろっか。」


 視界の端に見える蜘蛛の巣から目をそらしついでに現実からも目を背けたいところだけれど、流石にこのままの状態はいただけないから最低限寝られる環境にしよう。うん。そうしよう。昨日松下設備の説明受けたって言ってたけどここまで荒れてるなんて全然言ってなかった気がするんだけど……。あれか、松下も長山先生も、割と横になれればそれで良し!細かいところは気にせず進め!なタイプだから多分何も思わなかったのかも。


 そんなこんなで合宿の始まりは、絶対にコーチが来る前に終わらせねばならない全力掃除in合宿所からスタートすることになった。


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