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一年生に関する考察、と懸念

 青葉、普段の様子から落ち着きなさげに見えていたけど、意外としっかり試合をこなしていてちょっとびっくりした。

 なんというかどんな球でも全力で追いかける様子はすごく応援したくなるし、だからといっていっぱいいっぱいかというとそうでもなく、ちゃんと考えて返球していることが窺える。小さいころからいろんなスポーツやってたとは言ってたけど、やっぱり場慣れしてるのかもな。

 この分だと思っていた以上にいい線行くんじゃないか?正直うちで唯一初めての大会だから、青葉のことを心配してた。それがまさか、今日一番の心配事がノーマークだった小夜川になるんだもん、驚き。何が起こるかわからないもんだね。


 「やっぱり、青葉はなかなかいい感じじゃない?」

 「……やってきたこと、ちゃんと身についてる」


 合間合間に俺とひなたはちょっとおしゃべりしているけど、幹人は試合を見つつも時々何か考え込んでいるみたい。いつもに比べたらだいぶ静かだ。考えているのは間違いなく小夜川のことだろうけど、今後はコーチもまた定期的に来てくれるみたいだし考えるのは大会終わった後でもいい気がしちゃうけどな。


 そう、コーチ!三月末から訳あってお休み中だったコーチが、約二ヶ月の時を経てめでたく復帰してくださったのである!

 この二ヶ月はバドミントン部OBの方々にお願いして来てもらってどうにか練習していたけど、それでもやっぱり自分たちだけでの練習がどうしたって多くなっていた。七人いるとは言っても、全員高校生。まだまだ経験不足なのもあって練習内容だってどうしても偏るし、それぞれの直したほうがいい癖なんかも意外と見慣れちゃうと気づかなくて指摘し合うこともできない。やっぱり、全然違った立場の人から見てもらって教えてもらうことが凄く大事だってことをこの二ヶ月で実感した。

 四十手前だっていつだか言っていたコーチは、声のボリュームが常に控えめでたまに幹人によって指示やアドバイスがかき消されている。だけど絶対怒鳴ったり声を荒げることはせず、どんな時でも変わらず穏やかに理由を聞かせてくれた上で指示やアドバイスをくれるところが、いいなーって思う。所々ツンツンはねている髪をまた毎週見ることができるようになるのがこんなに早いとは思っていなかったから、本当にラッキーかも。今から新しいコーチを探そうにも、今じゃすっかり落ちぶれたことに(不本意だけど)なっている晴風高校バドミントン部を指導したいなんてもの好きな人はそうそう現れなかったはずだ。

本当に、このタイミングで戻ってきてくれてよかった。おかげで春風杯に向けても、元々シングルスが得意な幹人以外がいかにして戦うか、短い期間ながらすごく身になる練習ができた。

 

 俺は、手数の多さをうまいこと使って相手を動かす短期決戦。元々あんまり長距離走とか得意じゃないし、三ゲーム目までもつれ込むとグッと勝率が下がるからピッタリだと思う。今までは、相手からの返球に合わせてどんなショットを使うか考えていた。例えるなら割と受け身の姿勢。それに対してコーチは、自分が狙いたいコース、打ちたいショットに応じて自分でラリーを組み立てるように意識してみたらって提案してくれた。まだ完全には形になっていないし、かなり考えることが増えたけど、すごく面白いししっくりくる。これ、もうちょっと慣れてきたらダブルスにも活かせるかも。


 まあ、そんなこんなで他の面子も今までよりも間違いなく成長してこの大会に臨むことができている。

 そんな中での小夜川。そう、小夜川。


 彼のデータを収集は、チームにとっても強力な武器になるかもしれないね。でも、どうも本人がそれを活かすことで一〇〇%の実力を発揮しているかといったらそうではないような気がするんです。なんか、こう、もっと彼が活きる方法が他にあるんじゃないかって。


 これが復帰したてのコーチが初めて一年生′sを見た時の小夜川評だ。今思えばズバリ、あの時の小夜川が本来の姿ではないことを見破ってるじゃん!ほんとビックリ。その後に、


 勿論、彼がこのスタイルを自分のものとして確立させたいという思いが強いのであればできる限りそのお手伝いをさせてもらいたいと思います。ただ、今とは別の戦い方を探す方に、自分が可能性を感じているのは事実ですね。


 とも言ってたっけ。小夜川、コントロールできないのが怖くなって違う戦い方をするようになったって話だったし、ちゃんとコントロールできるようになって伸び伸び試合ができるようになれるならそれに越したことはないんじゃない?以前はどうにかコントロールできるようにずっと頑張ってたみたいだし、自分の個性が嫌いで隠しているわけじゃきっとないはず。

 おっ!考えごとしてるうちに青葉一ゲームとってる!


 「ね、青葉どー?さっきのままいい感じに進んでる?」

 「うん。この流れに乗れれば、危なくなることはない……と思う」


 やっぱ、見た目の割に肝が据わってる。同じ一年生で言えば羽代も、練習でも練習試合でも、そして朝の練習を見る限りは今日みたいな大会でも、しっかり実力を発揮している。それどころか、普段が一〇〇%、実践では一二〇%って感じ。最近はコーチから、「読み」を生かしていくためにとあれこれ提案されて、それを試してを繰り返していた。自分のやりたいことがよりはっきりと形になっていくのがうれしいみたいで、コーチが来たことでチームの中で一番生き生きして楽しそうなのは羽代ろうなって思う。

 今日の大会、正直二人ともかなりいい線行きそうだからこそ、小夜川がそれを気にしてしまわないかがちょっと心配なんだよね。

 打算的な話、入りたてピチピチフレッシュな青葉はどんなに練習したとしても今年全国へ行くための戦力になってもらうのは厳しい。だったらそれ以外のメンバーが試合の面では戦力にならないといけない。そうなるとつまり、頭数ギリギリな晴風高校ではここで小夜川に折れてもらうわけにはいかないんだよなー。だからって精神的なサポートは俺戦力外だし、そこらへんは他のみんなにお任せして、俺には俺のできることを頑張りますか。


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