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青葉育成計画

 「おっ!みんな来たな!コートの準備はできてるから、練習始めるぞ!」

 「もー!あんなに一人で突っ走って行ったのに、どうしてそんなに元気なのさ!」


 相変わらずエネルギッシュな松下先輩と、それに振り回される天野先輩。この半月ほどでお馴染みになりつつある光景だ。スペースが一コートから一コート半に広がっただけなのに、すごく広く感じてやっぱりうれしい。他の部活からの心意気をしっかり受け取ったんだから、より一層頑張っていかなくちゃ。


 「ひとまず、アップとフットワーク済ませた後に今後の青葉修行計画を立てるか!そんな感じでいいですか?」

 「そうだね。大会まであと一ヶ月しかないし、本番に向けて何をしていけばいいかは先にわかっていた方が青葉も練習しやすいはず。さっき部室でも話してたんだけど、とりあえず今日はサーブからでどうかな?」

 「いいと思います!それじゃ!準備体操からやるぞー!」


 松下先輩の掛け声で、体操からランニング、体幹トレーニングがらフットワークといういつものメニューをこなす。僕は中学生の時から体幹トレーニングが苦手だから、最近は特に意識して取り組みつつ加えて自主練でも重点的にやっている。塵も積もれなんとやら。時間がないのは重々承知だけど、それでも何もやらないよりは絶対に良いはずだ。

 一通り終えて普段なら基礎打ちが始まるはず。けど、今日は青葉君の試合デビューまでの計画会議だ。


 「それじゃ、今日はさっき言った通りまずサーブ練習をするとして、後はどうしようか?何か考えがある人ー?」

 「サーブの打ち方がある程度掴めてくるようであれば、オーバーヘッドストロークの練習を始められるといいと思います」


 松下先輩の言う事は理にかなっていると思う。サーブを打てなければそもそもラリーが始まらないし、オーバーヘッドストロークができなければ、スマッシュやクリア、ドロップなど、ラリーに必須ともいえるショットを打つことができない。確かにこの二つは、フットワークや素振りがある程度形になってきた今、次に優先すべきことだろう。

 頭の上の辺りに打点が来るフォームで、習得できれば出来ることの幅がグッと広がる。けれど、初心者の人が躓くことも多いポイントでもある。


 「あと……オーバーヘッドストロークでクリアとスマッシュとか最低限ショットが打てるようになったら、フットワークと素振りはしっかりできてるからラリーを続けることを想定してロブの練習もしたい……です」

 「確かに!ひなたの言う通り、始めたばかりだと、相手コートに返すことと、その次にとにかく上から打って攻撃することに集中しがちだから。もし守備もしっかり固められたら、他と差をつけられそうだもんね」


 始めたての小学生の頃は、先輩も後輩もなく皆でコーチに教えてもらうような感じで人に教える機会なんてなかったし、中学生の頃だってすったもんだしていたせいで後輩と話す機会なんてあるはずもなく……。とどのつまり、人に教えるという経験をしたことがほとんどない。だから、先輩方のように何をしたら良いのかスラスラ出てこない。はっきり言ってよくわからないのだ。でも今はもう一人ではないから、今後はもっと周りの事を見たり、サポートができたりする人になりたいな。

 でも、今僕が下手に口を挟んだところで役には立てなそうだから、ここはおとなしく皆の意見に耳を傾けることにする。


 「それじゃあ、ひとまずサーブとオーバーヘッドストロークでのショット練習、ある程度形になってきたらロブを始めとした打点が下のショットの練習をするというような形でしょうか?試合練習は並行して行いますか?それとも、ある程度ショットが形になってきてからにしますか?」

 「そうだね……。ひとまずサーブとオーバーヘッドストロークが形になった段階から少しずつ試合練習もしていこうか」


 ポンポンと話が進む中、青葉君は熱心にメモ・メモ・メモ。一生懸命なのが見ているだけでも伝わってくる。ここから一ヶ月、青葉君にとっては覚えていることが沢山で、かなりハードになるはずだ。それでもきっと、彼ならできる。


 「羽代は?何か考えとか気になる事とかある?」

 「えっ!?僕ですか……?そうですね……今の感じで進めていけばいい気がします。しいて言えば、ある程度打てるようになってまだ時間に余裕があるようなら、ノック練習をしていくつか攻撃のパターンを作ったり、ネット前のヘアピンとかプッシュもできたらいいかもと思ったんですが、短期間であまり詰め込み過ぎると逆に混乱してしまうかもしれないので、無理はしてほしくないです」


 松下先輩に突然話を振られ、一瞬焦った。でも不思議なことにスラスラ言葉が出てきて、自分で驚いてしまったのも仕方ないと思う。中学時代の諸々を経て、思っていたよりも自分の思いや考えを押し殺すことに慣れてしまっているのかもしれない。


 「確かにな。一ヶ月しかないと思うと、あまり詰め込み過ぎると負担になる。羽代の言う通り、最低限の事以外は様子を見ながら身に着けていく感じが良さげだな。よっし!それじゃ、青葉は南先輩とサーブ練習、それ以外は基礎打ち!」

 『はい!』


 体育館に響く声と共に、春風杯に向けた特訓が始まった。これから本番に向けて、「なんとなく」で過ごせる日なんて一日もない。バドミントン部への風向きが少しずつ変わってきている今こそ、大会で良い結果を残して最高の追い風を吹かせて見せる!あんなに強力な向かい風の中頑張ってきた頼もしい先輩方が居るんだもの。春風杯出場が決まってから心なしか元気がない気がする小夜川君や、ここ最近は全くバドミントン部に関わってこない校長先生の事が気がかりではあるものの、また一歩、全国優勝に向けて歩みを進めるぞ!

バドミントンをはじめたての頃、オーバーヘッドストロークの練習で何度も脳天にシャトルが直撃した思い出。

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