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目覚め

羽代颯太郎

 身長とパワーでごり押しされるこの感じに、すごく覚えがある。なんだったっけ?


 そう、中学時代の同級生(あいつら)だ。どんなに練習しても、新しいパターンを覚えても、全部簡単に、上から叩きのめされてしまった。あいつらにとって僕の必死な作戦なんて、風に飛ばされる紙切れくらい吹けば飛ぶような軽いものだったんだろう。


 じゃあ、どうして勝てるようになったんだ?ランキング戦で本来なら団体戦メンバーに選ばれるはずの順位になって、関東大会にまで出ることができた。あいつら(・・・・)に全く勝てなかった僕が。


 身長が伸びたから?パワーがついたから?違う。僕はフィジカル面では大きく変わっていなかった。それどころかむしろ伸び悩んでいたように思う。


 答えは、相手が次にどう動くのか、何を打ってくるのか、僅かな重心の移動や視線、ラケットの動き、あらゆる視点から「読み」、先手を取れるように意識してコートに立つようになったからだ。あの時は無我夢中でやっていたから明確に自分の変化を感じていたわけではない。でも間違いなく闇雲に体を鍛えることを辞めて自分にできることを探し始めたそのころから、少しずつ勝てるようになっていったと思う。まあ練習日記は途中から奴らへの恨みつらみを吐き出す場と化していたため、残念ながら記録には残っていない。


 コートに立てることで浮足立ったり、ラリーを続けることに精いっぱいになったりで、すっかり忘れていた。僕が得意としているのは、強いスマッシュでも、早いフットワークでも、いくらでもラリーを続けられる体力でもない。自分のペースに持ち込み、自分が有利な状況を作り出す「読み」だ。


 それじゃあ、今勝つためにはどうすればいい?この場合手段は二つある、と思う。


 一つは、自分のやりたいことを押し付ける!だ。自分が得意な展開に持ち込み、相手に反撃する隙を与えない。つまり、こちらが攻める。


 これを選ぶなら技術や力はもちろんだけど、最終的には勢いで相手を押し切る形になる。相手が焦ってくれるならこの作戦で行きたいところだけど、残念ながら白間川のペアは、意外とどっしり構えているから難しそうだ。というか相手のエンジンがかかり切らずにいた一ゲーム目で、自分たちの流れに持っていけなかった時点でもう不可能。機会は完全に逃してしまった。


 ここまで僕は、ミスなく返球する事に意識を向けすぎていたと思う。小夜川くんがいつも通りミス無く返球をしてくれていたんだから、僕は攻めに転じるためのアクションを何かしら起こすべきだった。とどのつまり、攻め手に欠け過ぎていたのだ。

 そんな中二ゲーム目の終盤まで終始リードを保つことができたのは、本当に運が良かったと思う。もちろん、試合の立ち上がりに比べて体もほぐれて動きやすくなってきたことや、今日は狙ったコースにうまく返球できていることも要因ではある。でも、相手にとっては初めて来る体育館。僕らにとっては天井の高さや照明にも随分慣れてきたホームコート。そして、先輩方が先に二勝をあげてくれたおかげで、相手にとってはもう後がない。そんな地の利や試合状況に助けられて、辛うじて今に至っているのだ。


 しかし、ここに来て明らかに押され始めている。僕らにパワーが無いことに気づいた相手が、強打主体の攻めを展開するようになってきた。現にたった今、スマッシュで押し込まれてサーブ権を取られてしまったのだ。スコアは18―12。相手に九点取られる前に、あと三点取ればいい。だけど、今目に見えているスコア以上に僕たちは苦しい戦いを強いられている気がする。三ゲーム目までもつれ込んだら、そのままズルズルと流れを持っていかれてしまいそうだから、このゲームでどうにか終わらせたい。


 そこで、「羽代流勝つための手段」その二!相手の得意なことをやらせない、だ!


 こちらはその一と違い、相手の出方に合わせて対策を立てていく、どちらかといえば守りの姿勢。早い展開が得意な相手には、なるべく高く球足の長い返球をしてネット前や短いショットの応酬に持ち込まれないようにしたり、コントロールが良く嫌なコースを狙ってくる相手には、精密なショットを打つ余裕を与えないよう早いショットを中心にコート内を動かせるような返球をしたりするのだ。


「相手の嫌がることをする」は、個人的にはバドミントンの鉄則だと思う。性格が悪いと言われようが、良い性格(・・・・)してると言われようが、知ったこっちゃない。勝つために全力を尽くすのだ。


 そうなれば、この二ゲーム目で試合を決めに行くために僕がやるべきことはただ1つ!


 相手の行動を読んで、絶対に綺麗な体勢でスマッシュを打たせない!


「小夜川君、ちょっと僕に考えがあるんだけど…」

「ん、どうした?」

「あのさ、―――」


 さあ、始めよう!



お久しぶりの颯太郎です。



いつも閲覧、ブックマークなど本当にありがとうございます。何より励みになっています。

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