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はじめての、ラブオール。

 

「青葉、長山先生は?」

「到着された白間川の顧問の先生を迎えに行ってます!駐車場からなのですぐ戻られると思います」

「了解。それじゃ松下、一応先生来てからオーダーを発表するとして、女バドの子たちにももうスタンバイしてもらってるし青葉と僕で各コートにシャトルとか一通り用意してくるね」

「お願いします!じゃあとりあえず、白間川さん含めて全員ホワイトボード前に集めておきます」


 南先輩に指示されて、シャトルとスコアシートを抱え僕が向かうは第三コート。大人っぽい見た目とは裏腹に、意外とおっとりしていることがここ一か月ほどでわかった隣の席の雪渡(ゆきわたり)さん(僕より身長が高い)だ。かなり見上げる形になることにすごく複雑な気分を抱えながらも、ボードの上にシャトルを乗せて渡す。


「おはよう!今日はよろしくお願いします!」

「おお!青葉君。試合の審判なんて中学ぶりだからなんだか緊張するけど、精一杯頑張るね。あ!それから……」


 僕の声掛けに、笑顔で答えてくれる雪渡さん。途中で少し周りを見回した後声を潜めて、「もちろん審判は公平にするけど、勝てるように祈ってるよ」なんて伝えてくれた。男子バドミントン部は校内で浮いた存在のように扱われることが多い。だからこそ、こうして真っ直ぐな言葉で応援してもらえるのが凄く嬉しいのだ。

 よーし!僕もバスケ部で培った応援の技術をフルで発揮するぞ!腹式呼吸から繰り出す発声で松下先輩にも負けない音量を体育館に響かせて見せます!え?バスケの技術はって?それに関してはノーコメントでお願いしたい。自分としてはできる限り頑張ったとだけ言っておく。


 そんなことより目の前の試合!羽代・小夜川ペアは、即席とは思えないくらい良い感じみたい。天野先輩と花光先輩のペアは、素人目から見ても何だが凄かった。お互いの動きをずっと見ているわけでもないのに、まるでテレパシーでも使っているかのようにぶつからずに動くのだ。それから、なんといっても松下先輩!すごい迫力のスマッシュに、ダイナミックな動き。基礎打ちをしていてもノックをしていても、自然と目が行ってしまって、ついつい手元がお留守になってしまったりしたっけ。


「青葉、そろそろ上に上がって大丈夫だよ。ドリンクの準備もありがとね!」

「……はい!僕、まだ何もできないから、今唯一できる応援だけは精一杯かんばります!」

「そんなに硬くならなくて大丈夫。普段は大分癖が強い奴らだけど、意外と頼りになるんだよ。それに、頼もしい後輩が三人も入ってくれたしね。試合が始まったら見ていることしかできないのは僕も同じだから、もどかしい気持ちになるのもすごくよくわかるよ。その気持ちを忘れないでいれば、きっと青葉もいい選手になれるから」


 僕の肩を叩いて、南先輩はホワイトボードの方へ進んでいった。しれッと僕を「頼もしい後輩」にカウントしてくれている。そういうところだぞ南先輩!


 なんだか嬉しくなっちゃって、ちょっとスキップで二階へと続く階段を上る。


「……」

「あっ、おはようございます」

「……こっち」


 最後は三段飛ばしで華麗に二階へと降り立った僕を、冷たい視線が出迎える。クールな表情のまま、一階が見下ろせる手すりの方へと僕を呼ぶのは小鈴さん。僕と羽代君と同じ中学出身で、バドミントン経験者。今は晴風高校の女子バドミントン部所属である。そう、何を隠そう特別講師とは彼女、小鈴さんのこと。同じ中学同士なら話しやすいだろうと、僕にルールを教える係に任命されたらしい。


「僕、まだ何もわからないから……今日は迷惑かけちゃうかもしれないけど、よろしくお願いします!」

「とりあえず、試合が始まる前にサーブについては説明終わらせる。一通り言うから、わからないことは終わってから聞いて」


 ところがどっこい!同じ中学とはいっても一度も同じクラスになったことは無いし、実を言うと話したのも今日がほとんど初めてです。小鈴さんの同級生とは思えないクールでビジネスライクな対応に、なんだか変に緊張してきた。


「まず点数を取った方がサーブを打つのはわかると思うけど、バドミントンでは自分の点が0か偶数の時はコートの右側に立って相手のコートの右側へ、奇数の時は左に立って相手のコートの左へ打つの。真ん中にある線が境界線。最初のうちはサーブは斜めに向かって打つくらいのイメージで良い。あと、ダブルスの場合サーブを打つ人も状況によって変わってくるんだけど、これは追々試合の中で説明するから頭の隅に入れておいて」


 サーブを打つ方向や立つ場所まで決まっているなんて、なんだか新鮮だ。と、同時にこの時点で大分ややこしくって理解が間に合っているかちょっぴり不安だ。残念ながら僕は、習うより慣れよ!考えるな感じろ!タイプなのである。バドミントンって親しみやすい一方で、奥が深いんだな。


「それで、ノックのシャトル出しとかしてたって聞いたから知ってるかもしれないけど、横のラインはシングルスが内側、ダブルスが外側。後ろはどっちも外側の線なんだけど、ダブルスのサーブの時だけは、一つ内側にある線を越えてもダメ。縦も横も、線を超えたらアウトで相手の点数になる」


 なにっ!?サーブだけでそんなにややこしかったなんて。これまでノックの手伝いはすれど、試合練習の時は南先輩のお手伝いやフットワークや素振りを教えてもらう事に費やしていて、細かいところは見ていなかった。覚えることはまだまだたくさんだ。


「大体こんな感じ。何かわからないこととかあった?」

「あ!試合が始まるお互い0点の時って、どうやってサーブ打つ人を決めるのかな?」

「じゃんけんで決めることが多いかも。少なくとも県大会みたいな学生同士で審判するような大会はほぼそうだと思う。資格を持った人が審判をするような大会とか、国際大会とかだとコイントスだったりするみたい。私もそういう大きな大会は経験がないから聞いたことあるだけなんだけど……」

「なるほど!」

「ここではじゃんけんで話を進めるけど、勝った方が試合を始める時に➀サーブをするかレシーブをするか、➁どちらのコートで試合をスタートするか、の2つの選択肢から選べる。まあ、知らない人も多くて、じゃんけんしてサーブかレシーブかだけ決める事も多い気がするけどね」


 心なしか小鈴さんの表情が柔らかくなってきた気がする。頭が混乱しそうだけど、これだけ頼もしい先生がいれば安心して観戦できそうだ。最初の小鈴さんに質問したら睨まれそうな気がしていたが、今の小鈴さんにならもう少し気楽に質問できそう。


「ラブオール、プレイ!」

「ほら!始まる」

「小鈴さん!ラブって?!」

「0って意味。点数数える時も、0はラブって言うよ」


  ラブオール、お互い0から始まる。どの競技でも基本当然の事だけど、なんだか僕はこの響きが凄く気にいった。早く僕も、あのコートで。


 そんな僕の心中はさておいて、こうしてついにギリギリの頭数をそろえた晴風高校バドミントン部は、全国を目指すための第一歩を踏み出したのだ。


審判のコールやスコアは→1ー3(ワン、スリー)

その他場合によっては→一対三

など作中では数字の表記を分けています。


作者がバドミントンに触れていたのは少し前なので、ルールなども古い点がある可能性があります。

また、本作品はフィクションであることをご承知おきいただければと思います。


バドミントンを触れたことのない方にも楽しんでいただけるよう書いていきたいと考えていますが、もし興味を持ってくださった方がいれば是非調べたり、観戦したり、実際にプレイしたりと楽しんでいただけたら嬉しいです。


文章でバドミントンを表現するという、何とも楽しくも難しい世界に足を踏み入れてしまったかもしれないと思うここ数か月です。

今後ともマイペースにですが進めていきますので、よろしくお願いいたします!

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