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きらきら×夢=現実は世知辛い  作者: 26モチモチ
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1話「採用基準はイケメンですか?」


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『市民馴染み課』とは・・・

  

 新設されたばかりの新規部署を指す。

 新設部署に伴い、職員も全員が新卒の者とする。

 

 配属者は以下に記す

 

 ・正野 ノノ(Syouno nono)

 ・東木 大翔(Tounoki Hiroto)

 ・西薗 春匡(Nishizono Harumasa)

 ・南方 海良(Minakata Kairi)

 ・田北 奏詩(Taboku Souji)


 なお、総合的な能力を考慮し、部署のリーダーは東木とする。

 部署内の最終責任者である指揮官には最優秀である正野を任命。


 ≪主な業務内容≫

 各個人の特技を用いた特定のパフォーマンスを披露し、一般市民との交流・親睦を深めて信用を回復。及び国家公務員の尊厳の向上を中心とする。


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先ほどの人事の方から渡された書類に目を通して、完全に????状態とはこのこと。書いてある意味がとりあえず、意味不明な内容だらけだ。

 

 そもそも市民馴染み課とはなんだろう。聞いた事が無い。いや新設されたばかりの新規部署とあったから最近できたのだろう。

 

 では次の疑問。リーダーは幸いにも東木という人(名前からして男性っぽい)なのでいい。しかし、部署内の最終責任者である指揮官とやらにどうも私の名前があったような????


 というか、各個人の特技を用いた特定のパフォーマンスを披露というのも意味が分からないし、とりあえず全体的に意味が分からなかった。


 「一体、どういうこと!?」

 「はっはっは、やっぱ最初はそうなるよなぁ」


 叫んでから一瞬の間。

 いま、なんか男の人の声がしたような……?


 今の独り事を聞かれてしまったのかと、じわじわと後ろを振り向くと


 「いやー、すまないね。急なことで驚かせてしまったよな」


 すらりとした長身。落ち着いた深い緑色の髪を品よくオールバックにしていて、微笑んだ拍子に微かに爽やかな整髪料の香りが漂う、このイケメン度が振り切れてしまった男性は一体どなた様でしょうか。 

 

 「あ。そういえば、自己紹介がまだだったか。俺は国家監査課の末光 聡一郎。よろしくね、正野ちゃん」

 「は、はい。よろしくお願いしま……国家監査課!?」


 慌てて下げた頭を衝撃の部署名を認識して、今度は一気に上げる。


 国家監査課。

 それは警察官ならば誰もが憧れるといっても過言ではない、かなりのエリート部署。実質、警察官の指揮系統を全て掌握しているのではと言われる程の有名過ぎる部署。しかし、それだけの権力を与えられているだけにかなり優秀な人材でないと、この部署には入れない最難関とも言われている部署だ。

 所属しているのは2名だけとも言われている部署……つまり、目の居るこのお方はそのうちの1人であって。


 「か、かかかかんしゃかのお方ですか! あ、あああの、わたくしめはしょ、しょ、しょうのののの、と申します!」

 「あははっ、動揺し過ぎだって。今はもう同じ公務員同士だし、気楽にいこ。ね?」


 白い歯を輝かせて笑う顔がイケメン過ぎて、何かのコマーシャルか何かと錯覚するがここにカメラなどの機材はない。監査課のエリートな上に爽やかイケメンとは相当、神に愛されてるらしい。どうやら天はお気に入りには二物以上を与えるようだ。


 「さて、雑談はここまで。もう書類には目を通してくれたようだし、何か質問があればどうぞ? 僕はその為にここに来たからね」


流れるような品のある動作で私の前にある椅子へ腰掛けて、またにこりと微笑む。

 色々と聞きたいことはたくさんあるというのに、こんなイケメン笑顔を前にしたら言葉が発しにくいから少しイケメン解像度を下げて頂きたい。

 こほん、と咳払いをして動揺を悟られないように真顔を作る。


 「色々とお聞きしたいことはありますが、まず各個人の特技を用いた特定のパフォーマンス、というのはどういう意味でしょうか?」

 「あ、そこから来たか。そうだね……正野ちゃんはパストソウル、って知ってるかい?」

 「パストソウル……?」

 「そう。最近、研究が進んできている新発見でね、僕も知る限りの内容を正野ちゃんに説明しておくよ」


 ’パストソウル’

 それは何百、何千、何万年前かも分からない過去に存在した複数の人物達の記憶が残った現象のことを指す。ただし、記憶が残るといってもそれは人によって特徴が異なる。

 一生分の記憶だけが残る者、深く関わった人物との想い出だけが残る者、記憶はなくとも技術だけが体で覚えている者、そして情熱だけを無意識に覚え続ける者。


 「な、なんか非科学的な話ですね……?」

 「そうかな。僕は夢があって素敵な話だと思うけどね?」


 そして、と末長さんは話を続ける。

 そのパストソウルを所持した人は’パストラー’と名付けられた。その人物達には遠い過去に生きた記憶があり、話せば夢物語として人気が出たり、技術革命に多くの恩恵を与えたと言われる。

 しかし、パストラーは数百年に数人居るかどうかと言われるほど、希有な存在。多くの企業や裏の組織などに目を付けられる。

 だから、パストラーだと発覚次第、すぐに国家組織である警察が匿うのだという。


 そこまで聞いて、ふと違和感に気付く。

 昔から両親や友人から、ずっと不思議がられていたのだ。

 どうしてそんなにも昔のワンパターンな古いドラマをそんなにも飽きるほど観るのか、と。その理由を私はあまり考えてはこなかった。ただ、きらポリの主人公みたいなカッコイイ警察官になりたいと、そう思っていた。

 でも、本当にそうだったのだろうか?

 私は……きらポリという作品が好きだった。それは間違いない。でも、本当に主人公が好きだったのか?

 すこし違う気がした。

 そうだ。私は……あの作品の流れが好きだった……?


 「君の質問の答え、解決したかな?」

 「……私は、きらポリの……あのドラマの監督の記憶が残ってる……?」

 「さすが入庁の筆記試験で主席を取っただけあるね。僕が結論を話す前に、自分で答えに辿りついてしまうのだから」


 説明する手間が省けて助かったよ、などと爽やかに笑っているが今はもう目の前のイケメンエリート様より、自分の秘められた能力に驚くばかりだった。

 しかし、ふと冷静になる。記憶が残ってたといっても、いち監督の記憶は何の役に立つのだろうか。監督は主役と言われる役者があってこそ輝くものだという印象がある。

 先ほどの末長さんの話では、パストラーとは貴重な人材だということだったが、自分の記憶ではあまり役に立たないのでは?


 「まぁ、ご察しの通り、正野ちゃんの能力は単体ではそこまで優秀ではないかな」


 ……この人はエスパーまで使えるのだろうか。しかも、容赦のないご指摘まであっさりとされて地味に心に突き刺さる。 


 「じゃ、じゃあ、私の記憶は特には役に立たないってことですよね。それなら私は何をすれば、」

 「正野ちゃん一人だけだと、ね。でも、君がこれから所属する課は多くは無いけど数人は居る。つまり?」


 つまり……?

 顔にはありありと、君ならば答えられるだろう、とでも書いてあるかのような期待の込められた眼差しが向けられる。あとは単純に説明する手間を省けさせてくれないかな、という期待もあるような気がしたがそれは気付かないフリをしよう。


 「……つまり、私はきらポリの監督の記憶を頼りに演劇をやれ、と?」

 「まぁ、そんなような感じかな。といっても監督は記憶あっても役者側が素人しか居ないし、公務員って立場だから演劇よりヒーローショーって感じのが良いかもなぁ」

 「は、はぁ……」


 (私は監督側で良かった……)


 などと一安心してる時、外から慌ただしい足音が聞こえてくる。


*


ここまでお読み頂き、ありがとうございます!

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