狙撃手
狙いを定めて、素知らぬ顔で。
劣化したコンクリートの壁を信じろ。
反抗の情報が筒抜けなのを。
そのほうが、隠れ潜む者が生かされる。
劣勢の群れは集まれ。
そのほうが、弱肉強食の掟の衰退が加速する。
瓦礫と同等の望みの中に、生き残りの真意を見つけ出す。
その手とその足で掻き分けろ!
すでに見捨てられた手と足が、飢餓の失せる道を教えてくれる。
まだ間に合うさ。
狙いを定めて、然り気無い仕種で。
一瞬さ、目と目が合い劣情の交歓は完了する。
想像できないほどの一瞬さ。
狙いを定めて。
狙いを定めて。
もう昨日のことなど覚えちゃいない。
まだ決起の報せは届いてない。
今は、狙いを定めて、想像を越えた一瞬を。
明日のことなど考えちゃいない。
流れ星の輝きより一瞬だ。
狙いを定めて、もうそれしか残っていない。
美化した廃墟が押し寄せる!
いつか数奇な運命とやらに呑み込まれることを信じて。
劣化した記憶とともに、弓を射る石像を思い出せ。