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心の月の休息

 ◎翌日の昼

  ブルーム王国東端 神門の町ヘイムダム


 あっさりついてしまった。どういうことだ?

「ここまで集団で動くことになったか。世も末だな」

「ふーちゃんも満足そうだね」

「リンゴパフェ…」

「あーはい、じゃ店いくか」

「俺も行く、けっこう気になる」

「おめーは自費だよな?」

「はぁ…、君たちは自由だな」

「諦めなさい、ズィーベン」

 大人たちも騒がしい。

 とはいえ、騒がしくない大人もいるが。

「本当、素晴らしい空気だ」

「ゆっくりしとけよ、親父」

「殿下…。本当に、ここが…?」

「私までここに来ることになるとはね」

 シャメルとそのお父さん、そしてアテスさん。それにクリスさん。

 後は無言のミェラさんと…えっと、誰だか知らないけど不穏な気配のするクアーロちゃんの従者。正直あんまりマリルやパインを近づけたくない。心配するほどのこともないだろうけど…。

「ふむ…黒幕が暴れてるな、これ」

「ふぇ?この中に誘拐の犯人いなかったの?」

「疲れたぁ…」

「おねーちゃん、げんきだして!」

「マリル、私の背中乗りな。あとトロワ、その詳細後で教えて」

 騒がしい方の人たちの子供はわちゃわちゃしすぎな気がします。

 あれ、なんかおかしい気が…。私も自分で含めていることではないよな?いや、うーん?

「ここが…」

「最近は驚ききれませんわ」

「………」

 こっちを見習うべきかもしれない。あと一人さっきからずっと隠れてない?

「シューについては触れないであげてほしいです。この先に住んでいる白銀人に見つかると危険すぎるので、本当は連れて行くべきではないんですけど…」

「それで隠れていらっしゃるのですね」

 あ、フォリックとトロワが話してる。仲良さそうね。

「ねぇ、お父さん、お姉ちゃん!あっちのお店行こう?」

 マリルが大分甘えている。いつぶりだろう?パインの前で私にまで甘えるのは相当久しぶりじゃなかろうか。

 まぁ、いつでもいいんだけど。今甘えてくれていることに比べれば。

「そうだな、悪いがふーちゃんちょっと待って」

「え、ろっくんまでふーちゃん言ってきた!?」

「その音楽みたいな呼び方は何が由来なんだ…って、あー、ノイン?何で後ろに」

 とりあえずいつもそれを聞いているようだが。

「ねぇ、一つ聞いていい?」

「………何だ?」

 やな予感がするなぁ…。

「何で、覚えてないんですかぁ?」

 こっわ!?怖い怖い怖い!

 お父さんは何を忘れたの?!何を忘れたらそんなに怒られるの!?

 ………って、忘れたから理由を聞いているわけではないと思うのだけれど。

「あー、後で話そう」

「ぜってぇ話せよ」

 シャメルもおこです。

「……お父さん大丈夫?」

「どうしても大丈夫じゃないから安心していい」

 どこをどうとっても安心出来ないから!!

 何をやったんだかいまいちわからない。

「で、何か目当てのものでもあるか?」

「ん~、特にないかなぁ」

 特に何も計画立ててはいない様子。マリルも事前にこっちへ行くの聞いていなかった?

「そっか。あ、俺が抱っこするから下ろしていいぞ」

「ん、わかったー」

 マリルがニヤニヤしたのがなんとなくわかる。相変わらずお父さん大好きだよね。

「あれが親をしてるのが意外なんだが」

「失礼ではあるが同意する。昔を思うとな」

「いや、元々あれでも小さい子供の世話をしてはいたぞ?」

 おい外野。しかし…こう聞くとなぁ。お父さん何をやらかしちゃっちゃってるんだ?

 聞く機会を無理してでも用意するか…。

「いこう!」

「そうだね。はい、じゃあ手をつないで行こうか?」

「うん!」

 さしだした手をためらいなく握ってくれた。以前よりは大分懐いてくれたなぁ。

 ただ単に今マリルが抱っこされてるからってだけかもしれないけど。

「……うーん、なんかかんちがいされてそう」

「相変わらず何を急に…」

 お父さんはなんとなくで理解できないようだった。まぁ、この勘がお母さん譲りなのだし、お父さんだけないのは何も不自然ではないよね。

 で、それ私?マリル?


 とりあえず冷やかしてるだけだけど、とても楽しい。

「昼飯どうするかなぁ…」

 あ、まともな話が出た。

「あっちのおみせがおいしそう」

「じゃあお父さんお願い」

「ああ」

 ……何の店か、わからない。

「ふふっ」

 何でもいいか。マリルは楽しそうだし、問題なさそうだし。

 強いていうなら、私はいつここに来たのかを覚えていないことか。

 んー、どう考えても小さな話ではないんだよね。

 でも日付にずれがないことはきっちり確認してる。やっぱり今朝から記憶が薄れているみたい。

 多分倒れて記憶飛ばしたんだろう。

「ほぉ、カフェか」

「コーヒー?」

「そう来るか…」

 いつも通りのどこかおかしいやりとりを交わしながら入る。

 落ち着いた内装を見ながら席に着く。

「さて…悪いが少し出る。少し三人でいてくれ」

 お父さん以外ね。

 さっきから聞いているリンゴパフェの件でしょう。

「いってらー」

「うん、先食べてる」

「はやくしてねー」

 三者三様の答え。気にすることは特になし。

「何食べようかなー?」

「ふむむむ、これよめない」

「えーっと、コーヒー、だっけ?マリル?」

「ん?あー、あってるあってる」

 なんやかんや話しながらメニューを決める。

 とりあえず私はペペロンチーノと紅茶。紅茶の種類にこだわりがあるわけではなし。

「カレーたべる。あとリンゴジュースで!」

「オッケー。マリルはもう決めた?」

「まだ。もーちよっと待って欲しい」

「はいはーい」

 普段通りのんきに話す。ずーっとこんな調子で雑談してたのはいつからだろうね?

「ハニートーストセットとココアで」

「了解。すみません、注文しますー」

「かしこまりました。ご注文をお伺いします」

 さっきのメニューをすらすらと述べる。

 そもそも口ごもるはずがないが。

「かしこまりました」

 さささーっと音もなく去って行く感じ。

 すごいなぁあれ。

「お姉ちゃん今は普通にしてていいんじゃない?」

「そうな、じゃあそうする」

 別に作ってるってほどでもないが、正直しっくりこないので助かる。

「マリルはこっちに来なくてもよかったんじゃないのか?」

「うん、3日後とはいわれてた」

 うん、それは聞いてる。こちらに行くとは思ってなかったが。

「でもこれ一日ですまないし、世界樹の森は危ないから不安だし」

「ふむ、じゃあなぜここに行こうとしたのかな?」

「多分ね、お父さんの希望じゃないんだよ」

 ほう?つまりなんか予定が変わったから、一日早く出たと。

「多分…フンフさんとドライさん」

「ほう、具体的には?」

「フンフさんは知っての通り」

 リンゴパフェおごって。って話か。

「ドライさん、不安要素を確認したいっていってたんだ」

「トロワのお父さんがねぇ…」

 まぁあの子が子だから親も相当な調査能力してるはずだけど。

「直で東の聖女に確認をとるって」

「東の聖女って結局なんなんだろうなぁ…名前つけて何になるのかねぇ?」

「確かに…ちょっと怖いかも」

 怯えることでもないと思うの。不穏なことを言っておいてなのだけども。

「さて、考えるのはやめかね」

「ご注文の品をお持ちしました」

「わーい、ありがとー!」

「ありがとうございます!」

「ありがとう。えっと…」

 まぁ、食べましょう。ココアはマリルが飲むんだっけ?


 ◎視点 ゼクス・アローラ

  三人娘が食べてる途中のこと


 こいつ…いくつ食べる気だ?

「もぐもぐですわ、おいしいですわ」

「変に取り繕うなよくまタン」

 アハトも1つ食べているが、食べきれるのかやら。

 そんなパフェをフンフは…15,6食べている。ってか単位はどう言えばいいんだろうか。

「金引き出しといて正解だったわ…」

「苦労するなぁ」

「現状金に困る気配ないけどさぁ…」

 そりゃあもう、一生分の金あるよ、もう。

「何でそんなに稼いだ?」

「押収したもん、受取手が俺とフンフしかいなくてな?」

 例の事件では大量の組織を破壊したからな。俺はされたと言っても許されるかもしれないが。

「そうか、フィーアなら拒否するだろうな」

「そ、それで1:9でもらったわけ。もち俺が1」

 そりゃ組織に対しちゃ何もしてねぇし天文学的な金額いらねぇし。

「まぁ、三分の一使ったらしいがな」

「食費か?」

「家も買ってるが」

「その口ぶりだと、食費の方が高いのか?」

「ドライのバー、土地の所有権はフンフにあるぞ」

「………ははっ」

 乾いた笑いしか出ないだろうよ、そりゃあ。

「そのドライだが、よくここに来る気になったな?」

「自分の耳で聞きたいんだろうよ、この異常事態の詳細を」

「ふむ、まぁ死んだとは思えまいな」

「あの奴隷姫はな」

「その物言いもどうかと思うが。姫といえば君の伴侶(はんりょ)は姫様なのだったか」

「ああ」

 よく話を変えるが、まぁどれにしろそんなに話し込む必要もないだろう。

「アハトに見てもらったな。確かにリズの方は正常だった。娘たちも見てもらって…結果はあの通りだ」

「まぁ約半分とみていいだろう。私と、あの子を除き」

「半分同士なら…か。まぁ、だから何だといえばそれまでかもな」

「………冷たい口をしているな、お前は。内心誰よりも醜く荒れているだろうに。本当に綺麗だよ、君は」

「そんなにあれてねーよ」

「………」

「アハト、少しいいか?」

 こっちに振ろう。

「おまえが知ってるの以外にはいねぇ」

「そうじゃなくて、おまえはどう思っている?」

「別に?似たようなもんは普通にあるだろ?それと同じで、全部お前らの責任…ってゆうか、覚悟した結果だ」

 真実。

「話すべきかな」

「理由の方は軽くとはいえ口止めされてんだろ、その範囲外については、話せ。親の…原因の義務だ。その原因がお前のせいであろうとなかろうと、それを承知で始めたのはお前だ。……あれ、相手から仕掛けられたんだっけ?」

「……そうなんだよなぁ」

「君が仕掛けられるほどの強さをしているとは思えないからな」

「うぉい!?それどーゆー意味だよ!」

「やーいチキーン!」

「みんなしてひでぇや、ははは…戻るわ」

「おう、わかったー」

 話すのは、あっちでいいか。それよりこの話、アルマにも話そうかなぁ。どうしようかなぁ。


 ◎視点 アルマ・ブルーム

  三姉妹の二人がデザート選択しています


 何にしようかなー。

「ミルフィーユにする」

「私は…リンゴのタルトにしよう」

 マリルは食べないそうです。

 注文の後、マリルに一つ聞く。

「ふと思ったんだけどもう包帯はいいの?」

「うん、もう日焼け止め塗れば大丈夫だよ。たまに調子悪いところに巻いてるけど」

 マリルは皮膚が弱いので黒色の包帯をよく巻いていたのを思い出したのだ。思い出したと言うより思い出させられたというべきか。何のためだかは知らないけど。

 でも少なくとも、思い出すことが必要らしい。私のためではなさそうだが、これは私を観察している人間を探すヒントになるか?

「ごちそうさま」

 パインも食べ終えたらしい。

「おお、ちょうどか?」

「うん、お帰り」

 答えてから、残ってる紅茶を飲む。

「もう行く?」

「準備は終わってると思うが…まぁあいつら次第」

「おっけー」

 フンフさんは食べに行くっていってたし。昨日見た感じだと食べ終わるまで時間かかりそう。

「大丈夫か?まぁいいや、お会計お願いしまーす」

 頑張ろ。なんか、やばそうだもんね。

きっと勝ち目があると信じることはできても、それは千夜の夢の代償の前に泡沫となって消え、残るむなしさは、現実に餌として献上する。私は代償を前に勝てるのか?

どこか矛盾しているのに修正の効かない多分このシリーズ中一番謎なポエムでした。

次回は多分非常に遅いです。その分その後はこのシリーズの後半までは突っ切れるはずです。

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