prologue.神 すべてを失った玉座
2022/11/21 レイアウト変更と追記
追記 最終話前に編集しています。(それまで本文は消されていました)
昔々の大昔、白銀世界を巻き込む戦争の果てにも世間に見つからなかった隠れ里があったのだとか。しかも、それは狭い国でかつ、大量破壊兵器をぶち込まれた国でなぁ。よく見つからなかったものだと感心する。
そこは代々姫継ぎ子と呼ばれた不思議な風習があった。
女の子を一人、姫継ぎ子と呼ばれる役職に就け、催事を執り行うという。
代々、みんなが何となく、で選んでいるものだから、特に何か神様がどうとか言う儀式があるわけではない。それでも少なくとも、一目置かれる職であったのは確かである。
『幸せだった。私は、あの日すべてを失うまで、充実していたんだ。すべてを失った日は、まだ暑い秋だった』
当時の…最後の姫継ぎ子の名は白銀 雪菜。
廻金世界へ来た、最初の白銀人の一人。
『私の友は黒くなった。私の父は溶けたみたい。私の母は…何だろう。みんなまるで悪い魔法でも使ったかのような感じで壊れた。奇跡は来なかった。私は白くなったけど、なぜか死ななかった。それで諦めたのか、私だけ生き延びた』
それの何たるかは知るよしもない。
ただ、それによって心が砕け散ったのは確かだろう。
『救済なんてなかった。犯人に連れられて、海の外へと行くことになった…はずだったんだ』
最初の転移は、飛行機事故のさなかで起こったと言われている。助けられたと恩義を感じた白銀人は、当時は叡智と信仰の国だったエルダーアースに、世界の狭間で得た圧倒的な力を振るったという。
『私はまた、友達を得た。仲間を得た。それは、救いだった。私にとっては命を救われたんじゃない。私に命をくれたの』
彼女の力は、使い魔の使役と管理をはじめとする生命の操作。命の使い魔などの禁忌を生み出した。
『優しい家族も……得た。とても、今が幸せ』
彼女は次に、故郷のみんなを連れて行きたいと思った。
『ここには魂を呼び出す手段がある。出来るかもしれないと思ったのだけれど…無理だった。加速度的?に時間がずれていっていたらしく、手遅れだとのこと』
しかし、過去のものを取り出し送ることはなんとか出来た。
『お手紙を書いた。これで、誰かが救われてくれるとうれしい』
……ところで諸君、パラドックスというものを知っているかね?
事実と、推察の結果、あり得ない事象が生まれるというものだ。
ここで、彼女が過去に手を下したために、パラドックスが発生した。本来はその世界内で起これば矛盾の内容に処理できることだが、異界の干渉によってそうもいかなくなってしまったのだとか。
『私は神様とかいう存在に殺された』
理不尽な神話として、一つ今のエルダーアースで説かれている実話である。




