エスケーパー画策
遅れました。申し訳ありません。
◎視点 シャメル・ラファエル
ブルーム王国首都メンタル マル地区刑務所
特別牢獄フロア
歌の月28日 10:67とシャメルの時計は言っている
「久方ぶりの女だぁ!」
「はっはは、ガキじゃあねぇか?」
「ああ?ガキのツラしてねぇだろ?その目ぇ機能してんのか?」
ちっこいからってぐちぐちうぜぇ。そしてお前らの相手なんぞしねぇし。
「看守長、あの女の方は」
「ええ、脱走のそぶりを見せていますが、どうします?(できればどうにかしてくれないかな?)」
「いいえ、どうにもならないわ、この件は、王族誘拐の実行犯が絡んでくるの」
「(じゃあ一体どうしてここに来たのよ)」
「それは、対処できる存在が各一人、この町にいるからよ」
各一人。実行犯とここの女。
「それは?」
「実行犯はフォリック・ミラージュ殿下。そしてあの女は…」
ほかでもない。
「アルマ・ブルーム陛下が対処できるでしょう」
◎視点 アルマ・ブルーム
ブルーム王城 女王の間
しばらく前の時刻
今日の記憶はちょっと欠落させたけど、皆気にしない程度で済んだかな?
朝だー、また寝癖がひどいぞー。
あー、めんどい。と、ここで、こんこん、とトビラをたたく音。
「失礼いたします、起きていらっしゃいますでしょうか」
あら?だれか来た。あまり人を入れないよう気を遣ってもらってる現状、特別理由があるようだ。
ちなみにかなりおてんばなことしてるけど、ブルームにおいて王族の自由さはいつものことらしい。
それで威厳がなくなりかねないから、王城には貴族や王族、もしくはそれらに相当する者しか入れないらしい。
「いいわよ」
返答忘れてた。後付けの文多過ぎて忘れかけた。
「失礼いたします……あらまぁ、御髪が」
「ああ、起きたばかりでね」
さすがに直さないとね。
「私がやりますわ。さ、こちらへ」
「自分でやるわよ」
「そう遠慮なさらず。手持ち無沙汰のままお話するのも何なので」
そっか、しょうがないかなぁ。しつこそうだし。あんま同じぐらいの子に頼みたくないんだけど。
「じゃあお願い。ところで、あなたのお名前は?」
椅子に座りながらたずねる。
「あっ、やば……申し遅れました。私、ジェーン・フィロソフィアと申します」
フィロソフィアは公爵家か。これはまた。
と、髪を手際よくとかしてくれる。
ん。手つきが気持ちいいわ。
「まぁ、いいですわね。この桃色の美しい御髪は、手触りもとてもお上品ですわ」
「ありがとう、ところで、お話って?」
そういえば、フィロソフィア家って、伝説にも出てるのよね。
この子はそんな家系にいる。そんな子にかみをとかしてもらっている。なんだか、なんか。
「前提として、王族殺害、誘拐の犯人グループを暫定として、反王国組織と呼ばれていることをお伝えします」
つまり、そのグループの話、と?
「本題ですが、その組織は、とある女の脱獄を試みています。その女は“破唱”。詠唱している魔法の破壊が可能だそうで」
へぇ。すごいねそれ。
「対処できるのは事前の罠や、詠唱の省略くらい」
ふむ。
「この町の者で省略ができるのは、陛下と暫定議長ゼクス殿、またアインス・サンルックという男ですが、アインスは所在がしれず、また、ゼクス殿は力の性質上町では少々後処理に追われるため、被害が大きめ。また、兄上やフンフ・ウィスティリアは別の理由から対処可能ですが、兄上は今生命力が枯渇しかけてますし、フンフは今回戦力外です。多分町が全壊です。“音速疾風”の名の通り音の衝撃破で町がボロボロに壊れてしまいますわ」
あーあれかぁ。雪山一個平らげたってやつ。
衝撃破散らしながら突っ込んで噴火起こしかけて全力で雪玉つくって投げたってやつ。むしろ爆発したらしいけど。
フンフって男なのか女なのかも知らないけど。
というか、ジェーンのお兄さん、禁術使えるんだ?あれブルームで使える人1000も居ないのに。
「彼女の処刑を、直々にお願いしたく」
人を せっていうの?
………まぁ、この人に言う文句じゃないかな。
「長々説明お疲れ様」
「いえいえとんでもございません」
はいはい。謙遜するんだから。
ところで久しぶりに通り名を聞いたけど、あれの文字数、多いほど高評価なそうで。それって、その女、私と同じぐらいってことかな?そもそもだれの評価なのかもなぞだけど?
あ、そうだ。一応聞いとこう。
「お父さんどこ?」
居場所知ってるといいなぁ。
「下にいらっしゃるかと」
「そっか。鍵もらってかないとね」
後で思ったけど、ここは口に出さない方がよかった気がする。
「お帰りになるのですか?」
あらまぁ、あっさりばれた。
「そうよ」
◎ブルーム王国首都メンタル ペンタゴン地区
7丁目の路地の大きめの家(アローラ宅)
シャメル視点と同時刻
久しぶりのおうち。ちょっと物を取りに行きたかったので来たのだ。
「あったー」
私のはちょっとしたお金と魔法言語の本、そして金属製のお守り。
今探してたのはお父さんの研究書。パラパラとめくってみる
…なんか死者蘇生とか物騒な事書いてあるんですけど。
お守りがないと、精神的に落ち着かなくなるときがある。
トラウマとでも言うのかしら。
前に人を した。また、人を す。
でも、いいや。
とっくに、命を殺して生きてるのだもの。生きるため生かし、殺し。そして次へつなぐ。その中で得た理性で揺らぎ、命に過保護になるのもよくはない。皆にとっての意味がある限り、戦い すことに遠慮も容赦も許されてはいない。
それが、白銀との大きな倫理観の違いなのかな。私たちは大のため小を捨てる。死はそばにある。しかし自由で、美しい。そして果てが無い。
果て。そう。白銀には果てがある。魔法がないから、エネルギー生産の面で圧倒的に弱く、資材もつきる。それでも、彼らは生きることに忠実で、ついには、母星の終わりが迫ったとき、母星から離れてでも生きることを選んだ。
そんな彼らは、いつか滅びてしまうのだろうか?
話がずれたね。
たくさんの、戦うつもりのない人の命をうばうこと。
それは、私にとって許せないの。
あいつらは戦う気だ。なら私たちのルールにのっとって―――
そいつ、 ってもいいよね?
◎視点 ウィッチ?
??? 書斎
究極超絶ハイパーウルトラアルティメットめちゃくちゃすっっっっっっっっっっごく未来
「いやだめに決まってるニャあーーー」
にゃぁに、アルマにゃんサイコなの?
ねぇ!?マリルにゃんそんなこと考えてなかったよにゃぁ!!!
あの子変だと思ったけど!!
そうやって叫ぶ僕の前にある本。
その本の題名は「廻金世界日記」
一応フォローすると、過激な思考になってたから恥ずかしくて記憶を落としたんだと思うから、ひどくはないんだよね、多分。
無駄にフォローしときたい辺り、チキンなキャットだにゃぁ。