狂乱の収束
◎視点 アルマ・ブルーム
テントに戻ってきたところ
疲れたので寝る。それだけ。
とりあえずテントに入ると、ズィーベンさんとノインさんが寝てた。
私も少し離れたところで寝転がる。
「ひゅぅー、ひゅぅー」
寝息がやたらうるさいノインさん。どこで何をしていたかの情報が全くなかったことに気づくが、…考えなくてもいいだろう。なんか、そんな気がする。
「眠ぃ…」
「(しずかに)」
フンフさんと校長が入って来た。そういえば干渉できる範囲にいたっけか。
「(ごめんね、何もできなくて)」
撫でられながらそう言われた。大丈夫です。と口にしようとしたがもう眠りにつき始めていたので反応できない。
「(大人しくしていてくださいね)」
「(むぅ、もう大丈夫だよ)」
そう二人が話しているところに、パインらしき足音が近づく。
「(おっみゃ)」
…ん?何だって?
「(一緒に寝ない?)」
「うん、ねるー」
どうやら寝るらしい。私がもう目をつむって寝ている以上記憶に残っているのは音ぐらいだ。
また足音が来たが、何人きたのかわからない。
「(男に任せるって構図なのがちょっと罪悪感あるかなぁ)」
…きっとクアーロちゃん達かな?
一人の声はもはや完全に聞き取れない。息づかいだけを感じる。
「(ごめん、さすがにそれはマータじゃないから聞きとれない)」
クアーロちゃんも内容がわからないレベルらしい。
「白」
「(ん?んー、あー、そうか?)」
何を言いたいかまるで分から
いや、多分…そっか、無罪の意味での白、か。
罪悪感を持たなくていいよ、と。
「(ありがと。…休んでおきな)」
後は、特に何かあったわけでもないようだ。
人がたくさん出入りし、いまはお父さんとあと二人いるだけのようだ。
「誰も死なないなんてどだい無理だなんて、人の上に立つ人なんだからわかっているのだろう」
お父さんの声だ。誰に話しているのだろうか?
「そうですね」
フォリックか。
「どう受け止めている?」
「どう…ですか?とりあえず、これ以上犠牲を出さないことが私たちのするべきことです」
確かにそうかもしれない。犠牲を出さない工夫なんて現状の私にはほとんど無理なんですが。ちょっと変わった魔法覚えてみようかな。
「ふむ…ありがとう」
「何の意図です?抽象的な質問でしたが」
「いや、特にない…強いていうなら、覚悟?」
何だろう?
「望まなければ何も出来ない。決してね。特に魔法はそう…」
すごくゆっくり、一文字一文字考えながら言葉にしている。
きれいな感じ。
「ふぁ…」
大きなあくびを一つ。これはもう目が覚めたな。
「あ、起きた」
「アルマ?いたのか」
「うん…」
目が覚めた。なんかあまり深く眠った気がしない。もしかしたら寝てるときの記憶を取り出せるかもしれない。
……あった。多いな。処理しきれない。
「もう帰れるぞ」
「そもそも何でここにいたの?」
「動物たちをなだめる時間かな」
「あー、そっか」
「火はよかったんだが音がな…」
ブルームにいれば嫌でも火と氷は見ることになるからね、慣れるか。
「せっかくテント張ったからみんなで残っても問題なかったし、避難もすぐには終わらん。そもそも、調査必要だったんだろう?だから問題ない」
「うん」
「あ、そうだ。ユキ!」
なんて言うべきだろうか。
とか考える間もな。
「あ、言う前につないでくれた。サンキュ」
『ぐっでぃぶにーぐ』
「はいはいばんわばんわー」
ドライさんとお父さん。
「シロの出番がねぇ…」
『まぁあれはまだ戦闘訓練してないからな。そっちで稽古つけてくれよ』
「それは無茶ってもんだ」
相変わらずよくわからない話をしている。
シロが戦うのか…。がうー。
想像するとどうしてもほのぼのした図にしかならない。
すぐにそんなことはなくなるんだろうけれど。百獣の王とかいう名にふさわしい光景になるのだろうけれど。
「まぁ…帰るわ」
『おう。待ってる』
「ココの方だろ…」
『ん~?』
「しらばっくれやがって…」
ココ、はここではこの場所などという意味で言ったわけではなさそうだ。
相変わらずよくわからん。
「ココって?」
『ノインさんのあだ名らしいよ』
「あ、マリル。ありがと…ってそこに入り浸ってるのね…」
『うん。ついでにバイト中』
「はい?」
とりあえず一旦は連れ出せるってことかな?
まぁ、あの件とは気が済むまで向き合ってくださいな。見守っているから。
とは口にせず。
「詳細は後で聞くとして…すぐ行くよ」
『うん!』
それだけ言葉を交わして、とりあえず車まで向かう。
『…ふっ』
「笑うな、やってみせる」
と話していたが…何のことだろうか?
「フォリック?ごめん、どういうことかわかる?」
「え、あー、何でしょうね?とりあえず僕も急ぎます」
さっさーと行ってしまった。
で、本当に何のことだったんですかね?




