狂乱の編集
◎視点 アルマ・ブルーム
外に出て日に当たると、少しくらっとする。
無理はしない方が良さそうだ。
無事だった木の陰にあるベンチで涼んでいると、パインがとてとてとやってきた。
「おきてるー!」
「起きたよー」
ぼーっ、としていると、いつの間にかにどこから持ってきたのか、麦わら帽子をかぶせてくれた。
「これならいい?」
「うーん、どうだろう?まぁいいか、お父さんのところ行こう」
「うん!」
そうして歩くと分かるが、被害がひどい。それに目を逸らさずちゃんと見て、情報を入手すればするほど、次善の過去を作れるから。
それが出来たからといって、あのとき何が変わったなんてこともないだろうけれど。
「パインの方は雷だな。天の竜のイメージが強いのかもしれない」
「やっぱり何でもできる魔法というより異能って印象が強いな…」
「アルマは魔法してるぜ?いろいろ使うんだわ」
「器用なんだな」
あ、いた。
「なんのおはなし?」
「わかんない、ここで聞いてようか」
聞いてみることにする。お父さんと…アハトさんかな?
「もう一人いるんだろ?その子は?」
「マリルは俺もわからん。防御の魔法…多分結界の類いを使うんだが…魂を直で砕いたことがあってな」
魔法の話のようである。得意分野の話?
「え、そいつ死んでね?」
「死んだ。そのショックで引きこもってる…いや、過去形か?」
「最近の話かよ…」
そういえば元気してそうな凹んでそうなどっちか検討つかない報告だったわ。
まぁトロワもエニカもよく分からないんでしょうけれど。
その先を見ると、そこには校長を目で追い続けるフォリックががいた。
トレーニングをしているようだ。何のトレーニングだかは知らないが。
「アルマおねーちゃんには見えてるんだ」
「パイン?」
「私は見えない何かを追っているようにしか見えない」
見えないのか。私には魔法で隠蔽された様子のないその姿が見えるのだが。
「何をしているのやら」
私にも何が何だかわからなくなった。
「ん?アルマ?」
「お父さん?ちょっといい?」
記憶整理魔法についてもだけど、いくらか確認しなくてはいけないことがある。
「今編集したいから、現状わかったことを報告してほしくて」
「オーケー、いくぜ…」
報告を20分ほど聞いた。なっが。
「ふむふむ…分かった。じゃあやるよ、thinking accelerate、
memory checker、
memory editor」
記憶から可能性を探る。頑張って頑張って。そこに見えたのはもう一人減らせる運命。…でもそれは代償が大きい。ほかの何人もが生きられるか怪しい傷を負う。
って、干渉できる範囲にフンフさんがいる?あー、でも何してもらっても被害が増えるな。…これぞ破壊力。
「当たり前のごとく略してるのかよ…」
「アルマは器用だから、でいいとしてもパインがわからん。マリルはあまりできないんだがな…」
これが最善か?
……いや、答えはわかってるつもりだけどさ。何回も変えるのを繰り返しているはずだから、信じられないよね。
そういえば、私を見ている誰かは、変える前の世界を見られているのだろうか?
いや、無理か。私が編集した世界を見ているはずだし。
それでも…私は変える前のその世界を見せたくなる。この状況を正当化したいし。
「無駄なこと考えすぎた」
「支障がなければいいだろう?」
「まぁ…間違ってないのだろうけれども」
どんな人かも知らないのに弁明しようなんて馬鹿らしいのかもしれないけどね。
「パイン、ちょっとお父さんといてて」
「うん」
私はどこか適当なところに移動することにした。
◎アルマ・ブルームに命ず。再編集せよ。
そんな話を聞くわけもない。大体こんなことする犯人に当たりはついたんだよ。
だからおまえは命令される側だ。身の程を知れ。
◎これは認められん。お前は神に逆らうのか?
カミサマ?あなたはわかってる?そんな言葉に価値がないことを。
◎警告する。またも大事な人を失うぞ。
うるさい!Image zero(想像無し)
目の前の光景を砕いて意識を元に戻す。そうか…犯人はやつか。
なんとなくでどうすればいけるかが分かった。ならば実行あるのみだ。が…なぜか無意識に変なところに歩いて行ってしまっていた。
「ふっ…」
苦笑を一つ。それではこれより、復讐を。
自分で描写していて、いつまで経ってもアルマの見ている景色が欠片も想像できないもので。どういう時間軸に生きているのでしょうね?
狂乱は大体完成した(調整が難しい)ので九月中にすべて投稿できるかもしれません。




