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狂乱の七棺

 ◎視点 アルマ・ブルーム

  場所特記なし

  昼頃の様子


 目が覚めた瞬間。

「まひゅしっ…!?」(眩し…!)

 太陽が視界のほぼ正面にあったらしくまぶしかった。

「あっと、目が覚めましたか」

「う…?」

 どうやら横抱きでテントの方に運んでくれていたらしい。

「すみませんね、今完成したところだったので」

「はいしぉふー」(だいじょぶー)

 呂律が回らない。

 日が当たっている感じがなくなる。テントの中に入る。入り口も中もやたら広いな。

「20人とかいうドアホみたいなサイズで作っといてよかったな」

「全くだ、こんな形で役に立つとは、な」

 アハトさんとズィーベンさんが話していた。ズィーベンさんは横たわっているようだ。

 私もそばの毛布の上に横たえられる。

「辛くないですか?」

「あこくぁひはひひゃけ」(あごが痛いだけ)

「ああ、だからその喋り方ですか」

「ん。あんひぇする」(うん。安静にする)

 通じるのは本当に助かる。頑張ってこれだったし。

「私もそろそろ立ちたいのだがな」

「無理だ、今は足どころか下半身全部…腹までもつながって(・・・・・)ねぇ。もう感覚もねぇだろこれ…血は通しているからいいけど、下手したら戻らん」

 どうやらズィーベンさんはお腹より下が不調らしい。

「このままでは傷物にされてもわからんな」

「誰がやるんだ誰が」

「知らん。興味もない」

「いやさすがに持てよ。つーか誰がこのままにするっつったよ。今すぐつなぐ」

 おっと、話が…。

「そうか、助かる」

「しっかしお嬢様のくせに紳士風の言動するとか言って…まだやってるしよ」

「もうこの口調は癖になっただけのことさ。行動は…まぁずっとでもなかろう?」

「……俺を誰だと思っている?」

「察しが良かったり悪かったりする、ある種主人公のようなお医者様だな」

 この二人はどれだけの期間をともに過ごしたのだろう?そう思えるくらい慣れてる話し方で冗談になるのかわからない軽口を叩き合っている。

「ほざけ。主人公はねぇだろ、この女好きのデリカシー皆無の変態がなぁ?」

「そういう物も無くはないだろう?大体どんな不出来な人間でも主人公たり得るさ」

「おっと、俺の発言の方は擁護しないのな」

「実績自体は一応あるから…な」

「一件だけマジで反省してる」

「ほかも少しは反省しろ」

 どうやら洒落にならない何かがあったようだ。

「さて、もう俺は出るよ、一人の方がいいだろ?」

「そうだな、頼む」

「おうよ…少年、ゼクスに頼まれてたし、魂魔法を一つフィーアと教えておく。ついてきてくれ」

「分かりましたが…大丈夫ですか?」

「…って痛!?感覚戻るの早いな?さすがといえべきかな?痛いぃ」

 …語らせたい、だったか。アハトさんはまだ語りたくないようで、かなり逃げ腰な感じ。

 フォリックは不安そう。それもそうか。まただけど、急に倒れちゃったものね。

 そしてもう一人は触れないでおこう。

「わらひはひはいはいよ?」(私は心配ないよ?)

「俺の目からしても問題は見えないし、そもそもそんなに時間もかからねぇって」

 ゆっくり立ち去っていく。

「ではごゆっくり」

「んー」

「そうさせてもらう」

 そうして二人になった訳だが。

「あー、アインスが月の話を語ったと聞いた」

「ん?んー、あぁ!ぅん!」

「あいつが話すくらいだしな。おしゃべりな人間は嬉々として話すとしよう」


 そうして話し始めた。

「私の悪魔たちには、私の魂のかけらを宿してある。エーデに来たときに魂が砕けてしまってな。ドライの協力の下、ツヴェルフと私の欠片、5つをそれぞれ宿した使い魔を生み出したのだ」

 魂がなければ生物は生きられない。じゃあ、砕けてたらどうなるのか?

「私は体が時々動かなくなる程度だが、ツヴェルフは体が生きたまま腐敗しかけた。応急処置もして、腐敗したところも直ったが、聖域から出たらまた腐るだろう。その状態で子も産めたらしいから、どうやら内にいる限り体に支障はないようだな」

 あ、ゾンビってもしかして…。

 それより聖域って結局何なの?後で聞いておくか、気が向いたら。なぜか聞かないんだよね、私。

「まぁ、ともかく私はこのざまでな。肉体の治療に秀でたアハトはこういったことへの対策も得意としているものだから、ともにまったり旅をしていたのさ」

「…ひょれ、ひゃおるの?」(それ、治るの?)

「治るとも。それも、そろそろなのだ」

 この話からするに、先ほどのつながって(・・・・・)とは魂が肉体とつながってないということとみて良さそうだ。

 それで体が動かなくなるって怖いなぁ…。ずいぶん気楽にラーヴァとかの禁術を使っていたけど、そんなに怖いことだったんだね…。

 まぁ、禁術は殺傷力が段違いたからそれでも多分まだ使うんですけどね。

 でも意味なく便利だからと使っていたのは反省しないと。だからって編集しないわけにもいかないけどさ。あれも禁術組み込んでるし。

「伝わらんだろうが、私は38°大戦の後にできた財閥の娘。いわゆるお嬢様なわけなんだが…爺が跡継ぎに困っていてな。子供心のままに見て学んでたらこうなったのだよ」

 あら、執事さんに憧れた結果のこの口調?

「昔を語ると哀愁に浸りたくなってかなわん。悪いが眠らせてもらう」

「おやみぃ」(おやすみ~)

 鼻声にも聞こえた。気のせいだろうかとこのとき思ったが、確かめた限りでは間違いなさそう。

 口ぶりからしてもその「爺」はもうこの世にいないということだろう。思い出に浸るのは悪いことではないと思う。


 ◎なんとなく察してると思いますが38°戦争などというものは現実にはありません。はず。これからも実際にはありません。…と思う。少なくともこの物語はそれが前提です。(が、世界地図と世界情勢を見ればどことどこの戦争かは想像できそうですね)


 ◎視点 アルマ・ブルーム


 …未だに、ユリウスのことを思い出してなかったな。

 そろそろ向き合おうか。

「難しいなぁ…」

 あの後もたくさん人が死んだり、私の手で人を殺したりまでもしたけど、それで恐怖がなくなったわけじゃなかったんだよね。

 起き上がる。今の独り言の滑舌が良好だったから察していたが、ちゃんと立てた。

「向き合うことは大事だが、辛いことだけを見る必要はない。ゆっくりするといい」

「…ありがとう」

 それもそうだね。楽しい思い出いっぱいあるもの。

 あ、でもそろそろお墓参り行こう。

「さて…と。まずは目を起動するか」

 そうしてまた、魔法を使う。

「…ヴィア。あなたは…」

 爺と言っていた人の名前かな?

 どんな人だったんでしょうね?

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