要塞巡りの町 パインは美しいものへの興味が増えた
やってきましたは化粧店。
人が多いこと多いこと。
「さて…どうしたものか」
もう頼もうかな…。詳しくないんだよ私。
そういえば、パインは…?キョロキョロ。
「お~」
純粋な目で店員とおぼしき女の人の顔を見ていた。
「おけしょう!」
目がすっごいキラキラしているよ。
「一通り見て回るか。パイン!一緒に回ろう?」
「はーい!」
そのまま店を歩く。ってか広いなここ。
そして結論から言うと、一通り回って終わった。
「いっぱい買ったね?」
「貰ったとも言えるかなぁ」
はい。いっぱいおすすめされました。山盛り。
「しかも見定める余地はあったらしいからなぁ。あの中で…」
未来の私のアドバイスこそなかったが、未来から流れてきた編集だけで十分だった。
「なんか考えてたよね、全部買ってたけど」
「うん。全部子供向けだったし」
一応確認したけどよいものだったと思うよ?
「使い方はマリルならわかるだろうし」
「アルマおねえちゃんはジェーンさんに甘えすぎ」
「ああ、そうかもしれない」
言われてすごく納得した。
その時、パインは何かに反応したのか後ろを向く。
「きれいな人…」
確かに美しい人がいた。紺色のとても長い髪をツインテールにして、白いチャイナドレスを着こなした女性。
それは見ればわかる。だが、何だ?何かを感じる。引き込まれそうで、破滅的な何かを。
「ずっとみつめていたいくらい」
「そんなにか…?」
ちょっと、どうなのそれ…?
「にてるよね、ねこちゃんまじりの子に」
「ミリアに?うーん?」
あの子の髪は白いんだよね。遠目に見えるのはそれくらいなんだよなぁ。っと!こっち向いた?
「あー、そりゃそうか」
目の色はどう見てもあの宝石のようなあの色。ゼロスサンの皇族の類いだわ。
「さて、帰るよ、やな予感がギシギシする」
「ぜったいわたしかんけいないのに…!」
「こら」
やめなさい…!それは酷いよ!
「うー」
駄々をこねるほどなのか…。
じーっと見つめるパインを抱っこして、皆のところへ戻ることにした。
◎E.W屋敷前
「みんなここにいた…」
みんな屋敷の前に集まっていた。
ここを探す過程でまたあの冒険者さんに会ったりもしたし。
「どこに集まるべきなのか迷ってな。大体合流したり分かれたり自由にやり過ぎだろ…」
「てへ?」
ミリアは好き勝手やった自覚があった様子。
「私はこのざまです」
大量の化粧品を見せつける。
「うん、まぁ、うん。そうかぁ、としか言いようがねぇよ…実のところ、みんな自由だよな…」
まぁ、これでもみんな子供ですし?
「ほごしゃだね」
「…そうか?」
保護者扱いになるフェルマータの心情よ。想像できない。
なんやかんや話を続けて、夕食の催促にお父さんとシュレールちゃんが来たところで、私たちも入ることにした。
「………#%」
何かに呆れたような顔でシュレールちゃんはつぶやいた。
相変わらず聞こえないけど。
◎この後のことは記録し損ねた
夕食に食べたのも何か覚えてないのだが、とりあえずフェルマータの猫舌が全開で、クアーロちゃんはほとんどをシュレールちゃんや私にあげて逃げた。
シュレールちゃんはぱっぱと食べて追いかけていった。
それだけは覚えている。
まぁ、暑くて辛いものが出たのでしょうね。それは「予想がつく」よ。
◎E.W屋敷屋上 展望庭園
夜
一人で自分のために用意されたであろう席に座る。
「相変わらずよくわからないな」
ゆったり詠唱を紡ぐことなく魔方陣を展開した。
その時だ。
「あ、…!」
激痛。苦痛。悲鳴。慟哭。
とんでもない勢いで負の感情があふれ出す。
これは…。
「手遅れ…か…!」
その様で。
「いやまだいけるだろう!!?」
そう叫んでも無駄なのだが。どうしてもやるよね。
干渉されたのは向こうだけ。こちらは何もされてもいない。
手遅れ…か。
疲れたので寝ることにする。無気力は恐ろしいのだが。
「それがあの神の魔法なの?」
「神の魔法?」
ミリアがいつの間にか席に座っていたらしく、そんなことを聞かれた。
「そう、過去を変える、だったっけ?恐ろしい魔法だよね…?」
「万能ではないけどね」
「時間制限は厳しいか」
時間ねぇ。短い期間では改変できる範囲は狭いし、長い期間では改変に必要な思考が足りないことが多いし。思加魔法も限度があるからね。
「一度に三日分編集するのが限度かな。ってとこ。あれは何度もやりたいものではないし」
風邪引いたからとやらなくて後悔したこと数回。
「それはまた…あ、もう寝る?」
「そのつもりだったけど」
「じゃあ私も寝るわ…今日はありがとうね」
「こちらこそ」
ミリアとまた会う機会がいつあるかわからないけど、その時はよろしくしたい。
「「おやすみなさい」」
寝よう。明日は忙しい。って今は何もしなくてよかったの?
いや、戻った気力はためておくべきなのか。




