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要塞巡りの町 クアーロは常に疲れ、常に走る

七月。暑くなってきます。

旧暦で七月は文月といいまして、歌や文、字を短冊に書くことからだとか。(一説によると、です)

なんとなくこの世界では詩の月としています、出番はあって回想シーンくらいでしょうけれどね。

 酒場の前で絡まれる。……子供だけなんだから目につくよね。酔っ払いだからこういう人もいるよね。ってだけですむ話。

 多分。

「マータはあしらうのうまいねぇ」

「そうだねぇ…」

 男の子二人で酔っぱらいたちをあしらっている。

 私?個人的に喧嘩上等な言動だから黙っとくよ。

「ふぁ…あ…ん?あんたぁ…セグ?」

「おお、クー!?何でこんなとこに?」

 そして人混みの中にクアーロちゃんの知り合いがいたらしい。ほおの傷跡が目立つ、少し背の低い金髪の男。

「何でって言われてもだナ…っとちげぇや、まぁ、リックといる時点で、ね?」

「理解した…まぁ、中で話すか?」

「そうしようそうしよう」

 絡んでた人たちはひとしきり困惑した後、セグと呼ばれた男に話しかける。理由もなくそう思ってたけど、知り合いのようですね。

 適当に折り合いをつけたらしく、セグさんの先導に従い中に入る。

「おし、余裕あるな。マスター、子供たっぷりだぜー!」

「あぁそうかい…って、っ、ぁ?」

 ものぐさそうな無精ひげを生やした中年の男が口をあんぐり開けていた。

「おま、え、…分かっててやってんのか!?」

 動揺しているらしく、カウンターの女の子の注文に反応をしない。

「んー?この子は俺の妹分だな」

「これが兄貴分……って思うとその発言に不満を感じるな」

 それは妹扱いされるのはいいよってことかな?

「それより注文を聞いてあげようよ?」

「む?あー、悪いな、対応しなくて。一応聞いてたから確認するぜ…」

 マータの発言に店主は対応を再開した。

「さて、ここでいいな。適当に席に着きな」

「はーい」

 そうして席に着く。お昼を食べるにはまだまだ早いので、フォリックとクアーロちゃん以外は飲み物で済ませる。二人はどれだけ食べるのだ。

「しかしまぁ…王族たちのパレードかなんかか?」

「そんなことより、いい相手まだ見つからないの?」

「…余計なお世話だ」

「私はあんたの嫁になりませんからね」

「そりゃそうだ」

 どうやら大きな事情があるらしい。

 それはいいんだけど、この無駄になついている印象が違和感を招く。

「ふぅむ…丁度いい依頼がないか」

「そりゃそうだ」

 しかもこの人速攻で意趣返し食らってる。口が達者ではなさそうかな?

 というかそのメニュー、食べ物のメニューじゃないのね。

「あぁ、お前、ベアナの…」

「そういうことだ」

 マータが納得したらしい。

「ベアナ…?」

「クーの姉だ。…そしてこの男の婚約者だったんだよ」

 不穏な過去形。

「クーの姉は病気にかかってな。長くは持たなかった」

「やれることはやったつもりだ」

「誰一人責める人はいないだろ」

 マータに詳しく教えてもらった。とにかく、どうしようもない話だった。悪化がそんなに早くなければ、そうはならなかった。ほかにも何か一つ足りていれば、間に合ったように感じられる。

「それで、なんか…な、いたたまれなくてな、冒険者としてまた出てきたのさ」

「なんか主人公感あるなぁ…」

「そんな(たま)じゃないっての」

 ミリアにそう軽く返して、依頼を受けに向かう。

「はははっ、まぁしょうがないだろうが。外にいやがるのはSky(すかい)Element(えれめんと)位だからな、剣では切れんよ」

「だな。しかし…子供か」

 剣で切れる依頼はもうないらしい。ちなみにそれはどんな依頼?

「なぁ、金髪の少女の捜索依頼が来てるんだが、何か知らないか?」

「ぱっと思いつかないことはないですが、詳細を求めます」

「どうやらこっそり連れ出したらいつの間にかいなくなっていたらしい」

 あー。うん。それは。

「パインかな…?」

「よし、今から聞いてくる」

 クアーロちゃんが窓から顔を出し、消えた。

「…またか」

「…まただね」

「…またなの?」

「…またなんだ?」

「…またなんですか」

 マータは苦笑し、フォリックは同意し、ミリアは疑問を呈し、私は質問を繰り返し、ジェーンはマータの反応から察し、とそれぞれ反応を示す。

 何の前触れもなく飛んでいっては帰ってくる。それができるのは大きいね。

 それにしても…何をしていたんだ?記憶を探るにも…いや、やるか。

thinking (しんきんぐ)accelerate(いくせられー)memory (めもりー)checker(ちぇっかー)

 思案してみる。金髪の少女。遠くに見える人影を中心に探す。

 屋台、お土産屋、広場…。

 いない、かな?

 目の前で会話が続いている。どうやらセグと呼ばれていた男ははセグメント・リアカイガーンという名前らしい。

「どうやら衣服に興味を示していたらしいよ、いるならそこかな」

 そしていつの間にか帰ってきたらしいクアーロちゃんが窓からのぞいている。

「あ!よし、バニースーツ買おう!」

「真っ先にそれ!?」

 フェルマータは色々ひどかった。

 そしてフォリックは突っ込みが早かった。

「いいか?あれタキシードより高いんだぜ?」

「はぁ…はぁ。そうですか。いや、金を気にしてはないでしょ」

「そもそも男なら、わかるよな?このロマン」

 ひどいわぁ。まじでひっどーい。

「興味はありますけど!ありますけどね!?」

 あ、負けた。

 うーむ、また着させられるのかな?

「クアーロちゃん、ぐったりしてるね?大丈夫?」

「……たまに酔うのよね、あれ」

「えぇ…?」

 グロッキーになったクアーロちゃんをふたりで介抱しながら、目的地へ向かうことにした。

 しかし私たちも探すでもいのかな?依頼になってるんだけど。

 それより、私はどうしてもあの子を心配できない……。何か、大丈夫な気しかしない。未来がどうとかすら関係なく、そう感じてしまうのだ。

 マリルは不安になるだろうね、優しいし、姉として(過剰に?)可愛がってるから。

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