要塞巡りの町 ジェーンは思い出を拾う
すごく美味しそうにたこ焼きを食べるフォリック。
この子はあのお土産の後、クッキー的な何かと、饅頭的なのを三種類ほど、さらにはパンケーキにクレープまで食べて、このたこ焼きに至っている。
凄い食べるよね…。
「一個もらっていい?」
「どうぞどうぞ」
フォリックから貰って一つ食べるクアーロちゃんも、少しもらっては食べている。
「あ、噴水だ」
休憩するのにちょうど良さそうな噴水広場があった。
「休もう?」
「そうしようか」
ミリアの提案にフェルマータが応じる。
「マータ、私はそこら見てるよ?」
「……リックはいるのか?」
「あー、そうします、今歩く理由特にないですし」
「ならいいぜ」
そうしてミリアとフェルマータはベンチに座る。
「三人とも座らないのか?」
「この服でベンチはどうかな、と…」
「全然疲れてないから何となく一緒に立ってみる」
「立って寝てます」
「そうか」
意味分かんないって思われてないかな…?
フォリックは眠れるのかは触れない方がいいかな?
それと、ジェーンもジェーンで気になる。
そもそも私とクアーロちゃんの服装が服装なんだから、着込む必要があったのか。
「わざわざ、あのときの服を着てきてよかったです」
聞く前にそれを語り始めてくれた。
「何度か、ここには来たことがあります」
ポータルって、小規模なら起動の手間はさほどでもないのかな。
あのときの様子から、かなり手間のかかるもののような印象を持っているが。
「前に私は、懐かしい思い出を求めて、日記を開いたんです」
ほぼ無表情で言葉を紡ぐことだけに意識を向けているジェーンに合わせ、私も聞くことに集中しよう。
「あのとき、お兄様は、全力で楽しんでおりました」
「そして、私は、その後ろをただついて行くだけ」
「きっと私が歩み寄れば、お兄様は受け止めてくださったでしょう」
「……私は、お兄様に愛されていたと自負することはできます」
「そう書かれていましたし、今でもそう思えます」
「ですが…」
涙を流しそうなほど潤んだ瞳で一つの質問を紡ぐ。
「私は、お兄様をどれだけ愛せていたでしょうか?」
いつもだったら、知らん、そう悩めるくらいには愛していたんでしょ、と言うのだが。どうしたものか。
悩んでるくらい、で足りないとか普通に思われそう。
「愛しているかって、言われてもね…困るわ、返答に」
そういえば、そもそも異性のきょうだいって、どんな感じなんだろうね?
「それは、きっと愛していたんだと思うよ?誰かのために身を捧げることも、誰かの遺した物を大事に持ち歩くことも、愛だと思う。捧げられた命のために歩む覚悟はあるのでしょう?だから、彼が望んだことを成そうとしている。違うかな?」
「そう、ですわね…」
「あってるならよかったよ」
違ったら恥ずかしいわぁ。見当違いのことをいうとか。悲しいわぁ。……何回やらかしたかわからんもん。
えーっと、88回ですね。ぞろ目ですね。
はぁ?そんなにやらかしたの?ってなんだこの一人会話。
よく考えると試行(思考?)回数は三桁くらい普通にいくな。
少ない方かも知れない。
「その覚悟は、一つの愛の形なんじゃない?」
愛って何だろうね。男女の愛だけではなく、兄妹愛や家族愛なんかもある。
これもまた、一つの愛なんだろうね。
私には難しい話だ。
でもそうだなぁ。私も、少しはそういうのがあったらいいなと思わなくはない。
「ところでさ」
ふと、この子の兄がどういう人間か気になった。
「その思い出、聞かせてもらってもいいかな?」
「ええ、もちろんですわ」
そうして、様々な話ではあったが、延々とという表現がふさわしい話を聞いたのであった。
その後、帰ってきたクアーロちゃんは、小さなぬいぐるみを抱えていた。
なぜか誰もそれについては聞かず、そのまま次の通りへと移動する。
とりあえず、裏手の通りにある冒険者の酒場へ行くそう。今は朝?だから、遅起きな人たちがいるそうな。




