要塞巡りの町 フォリックは食べ歩きがしたい
ある意味自信作な一日です。
◎視点 アルマ・ブルーム
さて、屋敷の前で荷物を確認。
「よし、大丈夫だ」
大分ラフな格好をしたフェルマータが荷物をクアーロちゃんに預ける。
「ほいっと」
クアーロちゃんはコートを脱いで、完全な和装。私和服は浴衣と袴以外知らんけどな。とりま浴衣ではないですね。
「はぁ…それ、どうなの?」
フェルマータの女装にあきれているミリアはチャイナ服を着ている。うわぁ…これ横からパンツ見えるんじゃないの?
こう露出が多い服でこの子を見ると、顔以外にも毛皮で覆われた部分がちらほら。
「……というか、ドレスとか着てるのは私だけなのですか?」
どうにも、フォーマルというか、まぁそんな感じで浮いているジェーン。
「いいと思うけどね」
そう答えながら、なんとなくフォリックの服装をよく見ると、和服っぽく見えるけど洋服なんだなぁ、という感想を抱く。あ、いつもの服っぽいですよ?
「もう行こうか?」
フォリックの言葉に、皆がうなずいた。
「どこ行くつもりなの?」
とりあえず刀を少し出して確認?しているフォリックに質問。
「とりあえず商店街巡るつもりです」
「了解」
買い物をするなら問題が二つ。
「ここのお金持ってきてたの?」
「ええ…一応は。でもブルームで使われてる円の方は使えますから、気にしなくていいんですけどね」
「ああ…そういえばそうだった」
円も使えたんだっけ。たしかここも白銀の通貨が使われていたような。
「ここでは、白銀における清の、元、が使える…だったカ?」
「いや、清って…昔の国名だろそれ?」
「え、マジ?うそでしょ?」
そうそれ。それとここの旧硬貨は忘れた。まぁ、それじゃないとダメって所はそうそうないでしょうけど。
「あ、いなりずし。懐かしいな?」
フォリックが反応した。あらー。
「一箱ください」
「はいはい、かしこまりました~」
というか、いなりずし食べ歩くの?
「自由だな」
「よいではないかー」
「それは違うのでは…」
フェルマータとクアーロちゃんとジェーンのやりとりを聞いて、ミリアに聞きたいことが出来た。
「そういえばミリアさん?」
「呼び捨てでいいって」
「呼ぶのなれない…」
そういう理由かよと自分で疑問に思ったが後で考えるかもしれない程度にとどめておく。
「ここは賑やかね?」
「まぁ、ほら、戦闘員が集まってるから、いつでも出るために英気を養っているのよ…多分」
商売人だらけの気がするんだよなぁ。
「きっとそうよ、避難指示無視した商売人たちではないはずなのよ…」
ああ、商魂たくましいってやつか。流石だね。
「どう見ても兎族いるんだけど…」
「あれは付け耳!」
クアーロちゃんの発言にミリアが全力で突っ込む。
なんか露出激しいというか、あれ、どうやって形を維持しているのか。
「いわゆるバニースーツとかいう代物かな?なかなかいいよね、クーとシューと着たいな」
「誰が着るか…ん?ちょっと待て、自分でも着たいの!?」
「うん」
男だと多分ポロリしますよ?需要…いや、美男子の上裸、あり、だな。
うん、良いね。ぐへへへ。
「なんか震えるな?やな気配がする」
「僕もです」
おっとっと、自重しないとね。
「あ、フルーツパイか」
色々な種類のパイが売られているのをめざとく見つけるフォリック。
「ほんっとに人が多いな?…並んでるからお土産みたいやつは向かいで見ていくといい。僕は並ぼうかな」
「メロンよろしく」
「っ、くっ、お、おう…」
フォリックが滅茶苦茶速かった。
「じゃ、オレンジが気になるかな」
クアーロもお土産を見るらしい。
「えっと、シンプルにアップルパイかな」
「ふむふむ、そちらのお嬢さん方は?」
私もお土産は見ようと思う。
「私は並ぶよ、とりあえず悩み中」
「そうですね、私も待ちながら考えさせていただきます」
「あいよー……リック、この着せ替え人形買ってきてくれ」
「相変わらずですね…」
どうやら、フェルマータとミリアとジェーンが並ぶらしい。
「アルマ様、その…」
「何?ってか今くらい何も気にせず呼び捨てでいいんじゃない?」
「もうそう言うべきものだと思ってるもので」
そんなに長い付き合いではないけどね。いや、それでも十分…か?
「くまんじゅう、二箱ほどお願いします」
「うん、わかったよ。探しとく」
くまんじゅう、熊の饅頭ですな。
「ありがとうございます」
さて、探しに行くか。
お土産を探しながら思ったことを聞こう。
あ、お茶あった。思い立った瞬間のこれである。
気を取り直して質問する。
「メロン好きなの?」
「ええ、よく食べます」
へぇー。メロン…そろそろ季節も近いよね。
「リック、見つけたよ?シェラへのやつ」
「あ、あったの?ありがと」
クアーロちゃんが先ほどの着せ替え人形を見つける。
「シェラって?」
「マータの妹、シェラメトン。なんか引きこもりがちで、人形が大好きなんだ」
へぇー。私、ぬいぐるみは好きだけど人形は別にそうでもないなぁ。
「……あまりに多いからさ、マータも、夜はあの子の部屋に行かないんだ」
「あぁ…」
闇が深そうだ。
あった物を買って外に出る。普通にお土産とか色々あったよ。びっくりだ。
くまんじゅうも無事見つけたし。
「ほら、二人とも」
「ありがとね!」
「マータ、これでいいよね?」
「ん、感謝するよ」
彼らは真っ先に交換していた。ところでクアーロちゃんは何を買ったのかしら。
「ほえ、ほいひいへふほ(これ、おいしいですよ)」
「た、確かにおいしそうね」
食べてるよ…!ってか、それは何のパイだろう?見た目ではわからないが、少し固め?
「んぐ。あ、これは洋梨のパイだそうです」
ああ…。
「はえー、そんなのもあったのか。もぐっと」
ふむ。甘い、美味しい。酸味もしっかりあるけど、甘さが強い。
「ふむ、おいしいね」
他のパイにも合うように生地に工夫がしてあるようで、ぶっちゃけアップルパイにはあまり良くない変化であるように私には感じられる。でも気になるのはそこだけかな。
って、なんで料理評論してんだ?
「私のひとりぼっち感」
「そういえば友達とかは?」
「……いないねぇ、こんなだから表向きでも引きこもらないとちょーっと面倒なのよ」
どうも深刻なのか深刻でないのかパッとしない。
おっと、渡すのを忘れていた。
「あ、そうだ、これでいい?」
「はい、ありがとうございます…よく考えると、皮肉ですね」
「ん?」
何のことやら?と思っていると、その意図を教えてくれた。
「これ、お兄様へのお供え物にしようかと思っていたので。これがお気に召していたようで、ここへ来るたびに買っておりましたもの」
「ああ…それをよりにもよって私が買ったと。確かに皮肉かもね」
この子の兄を殺したのだった。
いや、私は殺せなかったか。
「あ~、もう行こうか?」
「あ、今度はあれ食べたいです」
「お昼の分はおなか開けといてよ?」
とりあえず食べ過ぎな気がするフォリックは注意しておいた。
言わなくてもわかるだろうけど、あんまりにも子供っぽく駆けていくのでつい不安になったのだ。
まぁ、実際それなりに子供ですけどね、私達。
「気をつけます」
気をつけてくれ。…何だこの上から目線。私ひどくね?
この、自重?自嘲?の方がウザいかもしれない。
ところで字はどっち?




