王城の一日 夜
本日ふたつめ/ふたつ
◎視点 アルマ・ブルーム
ブルーム王城 3階外向きバルコニーより
午後7時
結局、ウィッチは飼うことになった。
はて、もう夜か。
「女王陛下」
声をかけられたので振り返ると、フォリックがいた。
相変わらず目立つ白っぽい髪と金色の目。こうしてみると、私より背は高いのかな?まぁ大差ないか。それより、前は意識してなかったが、狐の耳としっぽ、つまりは獣人であることだ。ミラージュス、つまりは獣人の国である妖連邦ミラージュの一地域の長の家系なのだろう。
「フォリック殿下、公の場ではないのですから、名前で呼んでいただけると」
なんとなーく、そうしてほしい。
「ならそうさせていただきます、アルマ様」
むー……。まだかたいなぁ。
「というか、めんどーだから素でいていいかな?」
今思うとこの発言ぶっ飛んでたと思う。
「そうか、その方が楽そうですね。アルマさんは、王城で一日すごして、どうでした?」
この対応だったけど、さっきの発言は大丈夫だったのかはやっぱ不安。でもこのときはそんな考えて無くて。
「たいへんねぇ、って感じ?みんなせわしなくて。それと、私を女王にした理由がなぞすぎ」
どうしてもここはわからなかった。
「どうしてもだれか置きたかったけど、一時的なものなので、先王の子のいない現状で継承権が二位でかつ、本来王位を継ぐはずのないあなたが指名されたのだと、僕は思っています」
えっ、と?この言い方から、王の座を一度引退したら、もう一度王になるのはよくないみたいだね?
「ちなみにラファエル伯爵家も王家の血を引いてますが、ほかの王家の血も引いてますし、今の血筋が耐えるまでは継がないでしょう」
へー?よくわかんないけどわかった。
「そういえば、ブルーム王家の証、花弁の火の傷はおありで?」
あー、なんかあったね?魔力を集中させると出てくるんだったかな?
「ちょっと試すね」
しゅーちゅーしゅーちゃーしゅーちゅー。
はい、ふざけたところでやりますか。
「My wisdom teach me how to use the mana.(私の知恵が私にマナの使い方を教える。)」
どう?どっか出てる?た、し、か、どっかみえるところにあるんだけどなー?
「右目ですか、ふぅむ」
うなづいておく。少し後、彼はあくびをして、
「はて、もうねますね。よい夜を」
ここもうなづいて。
「一人になったことだし、と」
魔法は、基本的には先ほどのように詠唱が必要。
しかし、それはあくまで、この世界になかった言語での注文のようなもの。
お得意様なら、一言で注文くらいできるってもの。
「thinking accelerate(思考は加速する)」
これが思加魔法ね。
「memory checker(記憶確認)」
ああ、一言と言っても、使う言語は変わらないし、幼い、それも3才くらいから一日一回つかっても一年かかるよ。
ってか、思加魔法の解説!忘れてるじゃん!
えっと、これは考え事するのに、情報の処理をサポートする、っていえばいいのかな?まるで、頭の外にも脳がくっついてる感じ、かな?
「memory editor(記憶の編集者)」
今日の記憶に、いつもの補足を書き加えていく。
私には全ては把握できないけれど、それは確かに過去に影響を与え、私を見てる者に、その光景と意味を理解するに足る情報を与える。
私を見ているそれは、神なのだろうか。
この世界には、法神と呼ばれる存在が居るらしいし、それかもしれない。
編集終了。
「今日も終わり。さて、このきれいな夜空にあの赤い星は…」
ない……か。
ユリウスのために祈ろうかと思ったんだけど。
さて、私の部屋どこだっけ?
◎ブルーム王城 女王の間
今日は侍女はいない。
一人で着替えたいと昨日いったからか。ごめんね、ありがと、と思いつつ着替えてベットにダーイブ。ぼふって音いいよね。
でも犬のこと思い出すとこわいので近くにひいてもらった布団で寝る。ほんとありがとう。
「ありがとう、おやすみなさい」
また明日。
◎アルマの夢の中
ネコ。本棚が並ぶ中、椅子に座るネコがいた。
それは、語り出す。
だれに、ともなく。
「魔法と聞いたら、君はどんなものを思い浮かべるのだろうか」
魔法―――?
「次の質問かな」
私、この質問知ってるような?確か私の答えは―――
「魔法とは、君の力となるものに、と作られた。その手で、頭で、足で…体でできないことを楽にする、力に。君が求める力は?」
これも知ってる。でもどこで…?
「さて、誰の答えが、何を見せてくれるのか」
私の答えは、何を見せられるのか?
「楽しみだよ、僕。この役―――魔法神の座につけたのは、僕、ウィッチを創ったゼクスと、ここまで連れてってくれた一番の立役者アルマのおかげだよ」
お父さんと、私?ってゆーか、ウィッチじゃない?
あの子、どういうこと?
◎今日もまた終わり、明日がまた始まる