帝国の郵便(風?)
どう考えても風ではない。時とか紫とかです。
ねむ……かったのだが。
目が覚めてしまった。まだ夜中だ。12時も回っていないだろう。
◎視点 アルマ・ブルーム
11:53(23:53)
E.W屋敷屋上 展望庭園
ここに花時計があったので時間を見ると、やはり12時にもなっていなかった。
こういうときは必ず私にとって必要な何かがどこかにある。
探しに行くべきだろう。
幻影のカーテンをごまかし、そのままエントランスまで降りてみる。
そこまでは何もなく、誰ともすれ違うこともない。しかし、なんか幽霊でも出そうな暗さだ。……手がさみしいな。
そして玄関の前に届け物があった。
その届け物をシャメルと校長が確認している。届け物はどうやら本のようだ。
その本は驚くべきものだった。西暦4691年の……本だ。紙の。恐らく学校で発行したものらしい。というか、手作り感が比較的強いし、中身はポエムだし…。
「でも、これがあるのは…」
今、あちらは4691年。今も白銀には「日本」があるらしいね。
前にあちらから来たのはいつだったか。
「確か最初は1955年だったはずです」
「そして4656年ね」
それを観察している二人はどうも困惑している様子。
「学園長と…シャメル?」
「あら、眠れなかった?」
「なんか急に目が覚めたもので」
話しかけると、真っ先に私に気を遣ってくれた。嬉しいのだけれど、割とよくあることなのよね…。
「それより、これは?」
謎の本としか思えない。
「一月前に白銀より召喚したものだそうです」
ふむ?一月前?
「奴らは準備として多くのものを探し求め、見つけ出せなかったそうです」
ああ…、エルダーアースが召喚してたのか。
「やはり並大抵では不可能のようですね、時間を巻き戻すのは」
できるのか…。
「そうすると、やはりあなたの存在が気になります。良かったですよ、貴女のことがそれほど知られていなくて」
それは、そうかもしれない。
けど、私がそれをできるからといって。
「それを、うまく使えるかは別なんだけどなぁ…」
「それでも得でしょう?奴らにとっては、味方にならなくとも敵にならないだけで違います」
そうかも知れないけど…。このときに助言が必要ならしたのだが、必要なく、自力で一つのことに気がつけた。
「そ…それって、こっち側も同じ…?」
「ええ、味方でなければ敵にならない処置をとったかもしれません…少なくとも、冷酷なアインスなどは今でも一つの手と見ていると思います」
今でも、か。
その判断は間違ってはいないが、だからといって、そうそうやられてはあげるつもりはないけど、ね。多分無理。相当前から干渉をしないと。
二回以上干渉すると、下手をすれば世界自体が壊れるから、生死まで変えるのは難しすぎる。
「そのために何度か展開してまで大規模にやったんだけどね」
しくじるときもあるらしい。
「100%にする魔法といえど、といったところか」
シャメルが少し眠たげに、そういった。
「まぁ、完璧にうまくいくわけではないけど、そうそうしくじらないかな」
「そう信じてる」
切り札に当たるほど強い唯一無二の魔法が使えるのは間違いない。
「私が狙われないのなんでだろうね?」
「気づいてないだけ」
なんとなくそんな感じはしていたが、何のためらいもなくそれを口にした校長の反応にはすこし顔をしかめてしまう。
「さすがにそれはどうなんだろ…」
「情報網がゼロスサンにくらいしかない。しかもここはいろいろ諜報の果てに破壊し尽くされている、今は安全」
「は?」
破壊とか不穏な言葉が出てきたんですけど。
「あ、それが5番目くらいの目的です」
「何がしたいの?」
「狂国は許さん」
「何の恨み?」
「友人をゾンビにされた恨み」
はい?ゾンビ?……あー、殺されたあげく無理矢理アンデット化された?
「生きてはいるぞ、その人」
え?生きたままゾンビ?シャメルはその詳細を知っている…?
「娘がブルームのどこかにいたはずですね」
「それはもしかして…」
「はい、ゾンビ化してからの話です」
ゾンビって、すごいね。
でもゾンビって、何だっけ。
とこんな感じで思考が止まりだしていた。経験則的には思考停止を一回するともうそれしかできなくなるようなのでかなりまずい。まぁ、何も編集しなくても止まらないでくれるようですけど。良かった。
「そういえばこの話をアインスにしたら笑われたんですよね。何で笑ったのか尋ねておいていただけません?」
「わかったー」
「それでは…もう寝ましょうか」
「はーい」
それ以上言葉を交わさず寝ることにした。
後はいつも通り編集しておこう。
ただその前に。
「……あっ、え…嘘だぁ…あの子が娘?まじで?」
って聞こえた。後で詳しい話を聞こう。
6/15 追記 白銀はいわゆる地球のあるこの世界を模した世界ですが、パラレルワールドのようなものですので、私たちのいるこの世界にはほとんど関係がありません。この物語で私たちがいる世界などを指すときは「観察者」の世界とします。
作中で説明しきれる気がしないほどメタな内容ですのでこちらに。




