帝国の警告!(爆)
◎視点 (千里眼使いの人)
観察先・エルダーアース
ダウナー市街区
急な爆発は前回のもの
急な爆発が起こった。
ここの上からでも視認できたそうなので、様子を見ようと思う。
「Melt in the world」
そこに見えるのは爆炎。その中で困惑する人々。……は?
「視界、ズレてる?」
そう思ったもんで調整を繰り返す。
「どうしたの?」
ツーくん来たー。
「爆発の中にヘーゼンと人がいる」
「あぁ、そうなの…か。幻覚の魔法ではなく?」
「熱は出ているようにこちらから見える。私に魔法をかけてる訳じゃないから、そうだとしたら相当精密なんだけど…術者がいない」
不思議。町のどこを見ても犯人がいない。地下で暗躍している獣人の少女も関係なさそうだし。
あの子…あ。
「いた、ヒューだ。獣人のふりしてる?え?」
「なっ!あの女が!?」
ツーくんと二人で驚いてみた。観察することもないし、体調が悪いのでとりあえず寝ることにする。
犯人は誰だろうね?
◎視点 アルマ・ブルーム
E.W屋敷屋上 展望庭園
くしゅん、とくしゃみを一つ。
……そんなに可愛いくしゃみできませんけどね。
「ん?花粉にでもやられた?」
「どうなんだろ…」
花粉でくしゃみ、なんか聞いたことあるような。
さて、うまくいくと良いけど。
「それじゃ、むさ苦しい話は終わりでいいよね?」
「ええ、それで十分です」
「それは何よりよ」
「……はぁ~~」
どうも仕方なくやっていたらしい。それはまた…。
「お疲れ様」
思いっきり息を吐き出したクアーロちゃんにそう言葉をかけた。
「そうねーアルマちゃんは前提把握してないもんねー」
「そうだね、何であんな物騒な話してたの?」
「あぁ、下でみんなが議論してるけど、建前のせいでうまくいかせるのは難しくてね」
「それで既成事実を作るのよ」
「はえー」
みんなで爆撃したからみんなで戦お?…とでもいう気か?
まぁ、それはそれで面白そうだけど。
「ほら、この国からすれば戦いたくないように見えるじゃん?」
そう言われ端の方へ向かうと、眼下に広がるのは活気のない町。
「実際は、戦えない人間は避難させただけ。みんな戦都と海都にいるよ、海都はあのポセイドン公国が守ってくれるし、戦都はゴーストタウン化したって噂流したし」
「……むしろ臨戦態勢?」
「そう」
それを踏まえて観察する。物理的な視覚より、魔法的な感覚を強めるように気を使いながらみると、確かに生命力の強い人間が多い。
「分かるかそんなん…でもフォリックはわかったんだろうなぁ」
「まぁリックだしね」
慣れなのか、際限が完璧でないから前提条件が違うのか、どっちもだとは思うけど。どうなんでしょう?
さて、似たようなこと考えるの飽きた。
「まぁ、人間そんなもんか」
「独り言に急に切り替わるのやめて?」
「あ、ごめん」
クアーロちゃんに指摘された。以後気をつけます。
「…まぁ、後は普通にお茶会しましょう?」
「そうする?」
「そうする」
質問しながら私は席に着く。
そうしていろいろ話す。
空の色の話、好きな花、歌の話、魔法の話、友達の話、古いアルバムの話、ペンダントの話、さっきの落とし物の話。
まぁ、あのドングリの詳細ははぐらかされた。恥ずかしいだけっぽいけど、追求をやめる理由には十分だぁね。今回は興味が勝たなかった。
「そういえば、初恋っていつ?」
かなりディープな話題に入ってきた。いや、これどんぐりの話の詳細に見え隠れする恋バナを聞きたいだけでは?
「初恋…そもそも恋したことないなぁ」
男の子をかっこいいな、と思ったことはあるけど。ユリウスとかフォリックとか。
「うそつけー」
「うそだねー」
ミレニアムとクアーロちゃんの同時攻撃。痛くないんだけどね。
「そうはいってもさぁ…自分で言うのもあれだけど、つい最近まで男勝りにやってたからさ?」
だから素の口調も男っぽさあるし。多分だけど。
「ふぅん?何で変わったん?」
「んー、何だろ?競争相手いなくなったから?」
ユリウスは死んじゃったしね。
「ん?なんかおいしそうな話でもあるかな?これは?」
「どうゆうこっちゃい」
なんかミレニアムが追求したそうにしている。ああもう矛先こっちに来ちゃった…。
「いや、その競争相手の話を聞きたいかな?って」
あー………。うーん。
「あいつが死んでからね、みょーにやる気が出ないの。私が頑張る理由って、単に負けるの悔しいってだけだったんだなって。見ている存在がいる以上、そんな軽く考えちゃいけなかったのにね」
っと、なんか具体性なく語りすぎた。
「お、おうふ…なんか軽い気持ちで踏み込んじゃ行けない領域入ってしまったか…」
おかげでこの引かれよう。顔が引きっている。クアーロちゃんは食べているエクレアを落としかけた。危ないよ、それクリームがぁ。
「どっから質問するべきか」
それでも踏み込むんだ!?まぁ、私はいいけど。正直人に語ること自体はためらいないから。
質問を考えてる間、クアーロちゃんを見ていることにしてみた。
クアーロちゃんはパクパクとお菓子を食べる。時々はっ、として手を止める。でもすぐ食べる。
なんか可愛いんですけど。
「食べないの?」
「んー?あー、貰おうかな。ちょい失礼」
「あ、どうぞどうぞー」
こっちを見ていることに気づいたのか気づいてないのか、食べないのかと聞かれたから食べることにする。私、クッキーはココアクッキーが一番いいと思うの。
「その相手ってどんな人だった?」
「んー?あー、そうだなぁ…」
追いかけっこしまくったり、魔法でどっちが高く打ち上げられるかやってみたり、コルルとミリャのところ行って遊びまくったり…。
ああでも野球拳は止められたっけ。基本やんちゃでも悪ガキっぽいことは止めてくれたなぁ。
後はどでかい犬からも庇ってくれたりした。思いっきり押し潰されてたけど。
「お兄ちゃんぶったやんちゃな奴だったよ」
ま、上でも下でもなかったけどね、年も、関係も。
「そうかぁ。というか、普通に話してくれるのね」
「まぁ、元々が語りたがりだしね。でもさすがに、殺されたときの話までは…あまりしたくないかな」
思い出す度、破壊や破滅への衝動を感じるからだるい。
それに、あの時のことは記録したけど、記録して以来一度も確認してないからうまく語れる自信がない。
見ておくべきだったかも。
「……っあ、そうだ。アルマちゃんはさ、何でリックを呼び捨てにしてるの?」
「え、そこでそれ聞く?」
「ぇ?あ、ま、まだ質問あったの?」
「いやなかったけど…まぁ問題ないけど、さ?」
あら、話題が変わった。
「そうだなぁ、何かさ、直感的にそう感じたのよ」
「ふぅん…直感、ねぇ…」
「なんかあったの?」
呼び捨てといえば、ミレニアムもそうだね。
「リックにも色々あってね」
「あ、私の呼び方はミリアでよろしく」
それを聞いて真っ先に、ミリャと紛らわしくなりそうだ、と思ってしまった私。
「わかった」
「さて、そろそろお開きにしましょう?」
と、ミリアは言った。
「晩餐会に備えて胃腸を休めておかないとね」
「そうだ、ね…」
クアーロちゃんの歯切れが悪いのは、たくさん食べていたからだろうか。
「はぁ……あのガキもいるの?」
違うっぽい。何かやっかいなやつがいる様子。
「いないと思うよ?流石に今回は引き離すと思う、あの子のためにも」
あの子のために引き離す。悪ガキ。うーん、処刑でもされるの?
真っ先にその発想に至れる私何なの…?
「よく考えると、私、独り言とか一人会話とかしすぎじゃないかな…」
つい口に出してしまった。
「おぉう?なんか悩んでる」
「ほっといた方がいいと思う。マータもあまり深入りするなと言っていた。まぁ踏み込むんですけど」
「じゃあ便乗する」
「……」
そのせいでこんなことを言われる羽目に。
何でそうなるのよ。
ただそろそろ中身のない話を少なくしないといけない。
観察者が減るのは私にとってよくないことだから。
そっち側を知りたい私にとっては、ね。
だから待ってなよ?いつかそっちを知り尽くしてあげるから!!まぁそれをしたところで何もしないのですが。




