笑う世界の神獣乃子
帰ってきました。残りの話は明日する予定だそうです。
ってことで帰ってきたはずなんだよなぁ。
慌ただしく準備をする光景が広がってますねぇ。これ、大体の場合って、あ。危ない!
花瓶を持ったまま転びそうになったメイドさんを支えてあげ、起こすと見覚えが。
「クアーロちゃん?」
「お、おう、久しぶりだナ」
そんなクアーロちゃんはなんか知らないけどメイドの服装。
「この服なれねぇヨ…足ガ…」
「ああ、まぁそうね」
あのときのコートの下の服装を思い出すと、着物と袴だった。
和服着てると足出しているのは慣れないかもね。
とりあえず起こして運んでもらう。
「頑張ってねー」
いい加減かもしれないけど応援をしておく。
それよりね、この状況について説明を聞こう。尋ねなくても話してくるだろうし。
「あ、あ、あ、アルマぁ!」
シャメルさんが馬鹿全開でやってきた。
「ばっ……いやそれどころじゃねえ!やべぇのが来る!」
はい?
「マリルの部屋にとりあえず入れ!」
マリルの部屋にポーンと入れられた。投げるな。とびら誰が開けた誰が閉めた。何だこのギャグシーンみたいなの。
「にゃー。でごまかすつもりだにゃ」
「ウィッチか、閉めたのは」
どうやったかはなんとなくわかる。ティータイムの時みたいに念力で動かしたんだろうね。
閉めたのはっていったけど開けたのもそれでやったんだろうね。
『アルマっ!』
っづ!?耳痛い!追い打ちだと!?
『っと、失礼!あいつが聞こえる前に伝える!危険なのが来るから気をつけてね!猫姫王子に注意して』
ぶつっ―――ときれた。
相変わらず念話はどこから聞こえているのかわからなくて困る。
「基本無言でいるにゃーよ」
ウィッチにそう言われてしまったので、部屋の掃除をすることにした。
マリルはどこに片付けるかメモをとるから、他の人が片付けてしまってもあまり問題はない。
んー、そういえば今、フォリックが完璧に素でしゃべってたね。
それと、危険なのってどういう事だろう?猫姫王子とやらが危険人物なのはわかったけれど、何が危険なのか。
後はよくわからないから昨日の記憶を考察でもしているか。
そうやって過ごしていると、扉が開いた。
「人の気配がすると思ったら」
猫姫王子と思われる人が入ってきた。確かに黒い髪を伸ばして、童顔の男の娘だ。背は私くらい。
「あー、ヘルプミー、テステス」
やばそうなのでなんか適当言ったらなんか反応した気がした。
間もなく風切り音とかがして。
「マータ!お前また勝手に動いて迷惑かける!」
フォリックが来ました。最初にあったときのように刀の鞘を手に持っていて、抜けるように構えている。。
「リックか、押っ取り刀で駆けつけてまぁ、よくここにいるとわかったね」
リック、か。クアーロちゃんはクーと呼んでたり、愛称呼びが多いね。
「ああ、申し遅れました、私はフェルマータ・ミラージュスと申します。以後お見知りおきを」
「え、あ、うん」
「何だ平常運転だナ」
あ、クアーロちゃんだ。
「クー!久しぶりだな、いつ以来だ?」
「アー?シューに会いに行ったとき以来だし2ヵ月くらいだろ」
シューって、うーん。シュレール?
「シュレールは犬族の族長が溺愛している愛娘で、マータ程ではないけど護衛をよく連れてる」
いや、フォリックもクアーロちゃんも連れてないの?
「ちなみに僕もクーも護衛側」
そっちかい!
「同じ王子とか姫とかって立場なのにどうしてそう違うの?」
「さぁ?クーは護衛向きの能力受け継いでるからだろうけど、僕は能力だけ見ればむしろマータみたいなのだからなぁ」
能力は神獣の力として、フェルマータ、だっけか、とそのシュレールの能力は何だろう?
すっかり口調が緩くなってるねって言ったら口調戻るかな?やってみたい。やらないけど。さっきも素でしやべってたし、テンパってる?
「ああ、シューはあのリス、ラタトスクの力を持っている。もともとシュー狙いじゃなければ護衛がいなくても大抵どうにかなるね、薙刀の扱いもうまいし」
ふぅん。
「……ちょっと語りすぎた?まぁいいか、クー!そろそろ追い出せ!」
しっかり首に手を回されていた彼はなぜか、上半身が裸であった。筋肉なさそうな細めの白い肌です。力こぶも見えてすらないし、全く鍛えてはなさそうですね。
クアーロちゃんは…っ!
「ちょ、クアーロちゃん」
「ん?何ダ?」
「ぱんつ丸出し…」
「えっ、…………きゃあぁぁぁぁぁぁ!??」
悲鳴の大きさは隣の意識を奪い去るほどであった。
いやいや、スカート落ちてるのには気づいてよ。
悲鳴のせいで被害は思ったより甚大でした。
さて、はぱっと着直す。人が来る前に済ませましょ。
「ありがとう」
口調が普通だね?
「クー、口調戻しときなよ?」
「あ、うん。ふー―――これで良しだロ」
あ、戻った。演技なのね、それ。
「なぜそんな口調?」
「わたしが姫だと思われると都合が悪いからナ」
そういう理由。護衛しているのと関係あるのかな。
「大丈夫ですか!って、フェルマータ様ぁ!?どうしてこうなったんです!!?」
なんか着物着た人がすすすすすすってすり足でダッシュして(超矛盾)やってきてこれ。
「あー、うん、誰かの悲鳴にやられたらしい」
とりあえず視線でクアーロちゃんに助けを求める。
「悲鳴を上げたのはクーです、もう逃げました」
「あ、そうですか…ってフォリック様!?」
いや気づこうよ。隠す気配なかったでしょ?
「はぁ…ミェラ、相変わらずだね」
「はい、申し訳ないばかりです」
ミェラって名前なのね。
「(じゃあもうみんな揃ったって報告しないと)」
ぼそっとそう呟いた。
そうね、行ってらっしゃい。
「じゃ、また後でかな?」
「あ、はい、そうですね。それでは」
ぱっぱと去って行く。
「さて、やるカ、っほい!」
ぴゅん、とフェルマータを連れて去って行く。
「あれ、魔法唱えてなかったような」
「ちょっとクーのは複雑でね、まぁそこを買われて雇われているのだけど」
そうなのか。っていうか雇うってお金が関わってるのね。
「ちなみにイリシミニという昔ながらの単位ですけど持ってます?」
「個人ではないけど…国としてはあるでしょ、普通に」
そういえば円が普及したのもここ数年の話だわ。
「そもそも昔ながらの単位って、ブルームにもあるんだよ?アラサマナってやつ、コルルのところで払ったと思うけど」
「あれツケ払いになってます…」
…………。
ほんとだ。払ってない。
「今のうち行ってくる」
「別に今日出ないんだからいいと思いますが」
「利子は十日一割です」
「あっ、あれから9日か」
はい、明日までに返さないと1.21倍です。
初めから1.1倍です。
「じゃあ一緒に行きましょうか?彼が来ても未だ何か不穏ですし、一応護衛任されてますし」
あ、そうなの?
「ごめんそれ初耳」
「そうだったんですか、まぁ、あってないようなものですし」
あってないようなもの、か。
「そっかー、まぁ、よろしくね。じゃ、行こう!」
「はい、行きましょう」
早く戻らないと怒られそうだね。
あってないようなもの、か。
そんなに強いかね、私?相性ってものだと思うけど。現にゲータにはボコボコだったし。
新技補正とかあってもいいと思うのよ。




