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笑う世界の冒険者

 ◎視点 アルマ・ブルーム

  花の月7日

  王立魔法学園前


 そこには休みの日だというのに、たくさんの人がいた。

 自由参加の、冒険者による旅語りがあるそうで、大分人気らしい。

 そんな日から来るってそれ目当てみたいだね。

「まぁ、実際楽しそう」

 知らなかったけど知ってたら絶対来た。

 来た!

「ああ、久しいかな学校…」

 あれでも真面目っ子みたいな性格してるエニカはもう勉強漬けを求めていた。

 まぁ、ごめんね?としか言い様はないし意味もない。実際、必要な仕事もあったようだし。午後はしばらく見かけなかったね。

「がっこーさんがっこーさん、おともだちがほしいよー、なかんじ」

 パインは友達づくりが大変ね。まぁ、人気はあるんだけどこの年だと2才の差がでかすぎる。

 私も結構きついものがある。マリルに至っては見た目から上の学年に間違って来たみたいになってたし。

「あ、あの人じゃない?れーのボーケンシャって」

 発音がおかしいが、エニカの指指す方には確かにそうとおぼしき人がいた。

 その発音はふざけてるわけではなさそうなので、ちょっと伝えておく。

「発音おかしくない…?」

「うん、うまくしゃべれない」

 何でそんな所で、と思いつつそれは口に出さない。知ったところで何があるでも。

 あと、そんなことより応対していた先生がこっちに来る。

「アルマ陛下、お願いがあるのですが…」

 またかよ。

「生徒代表として地下迷宮に降りていただけませんか?」

 生徒代表として、っている…?

「どこの地下迷宮よ…」

「この学園の地下にあるとされる魔物の出没地帯です」

 そんなものは聞いたこともない。そもそもそんな危険物、昔からあったら町ができるはずないのだ。

「とってつけたような話だね」

 と、正直な感想を述べる。なんかやらかして出来たって感じでしょうね。

「実際とってつけられたものですから…」

 しかし予想外の返しをもらってしまった。

「どういうこと?」

「学園長がその奥に用があるからと、空間をつなげて入り口をこじ開けてしまったのです」

 つまり、元々、どころか今も学園の地下にはそんなものはなくて、全く別の魔物だらけの場所に行けるようにした、と?

「ご理解いただけたようで。封印こそされていますが、解除は割と簡単ですね」

 そこ簡単なんだ…?

 っていうか、あっさり話したね、って、空間をつなげて、学園長が?

「最近なの?」

「いえ、10年以上は前です」

 思ったより前に遡る話らしい。

「というかこちらに来てすぐの話ですね」

「?」

 こちらに来て、という意味が理解できなかった。どこかから来たのだろうし、それにはさほど興味がないが、常識のごとくいったのが引っかかる。

「まぁ、今日ではありませんから」

「おっけー、了解です」

「軽っ」

 軽っ、て!その反応には思うところがあったが。

「まぁ重く考えなくていいのでしょう?」

「そうですけれども、さすがに軽すぎて驚いただけです」

 そう。

 魔法を使ういい機会だ。存分に楽しもう。最近よく使ってるけど。


 その後の集会で冒険者の剣舞や、冒険譚を聞いた。

「その森の泉は大体魔物たちの生命線みたいでな」

 壇上で冒険者が話をしている。

「それで俺はその巨大な魔物、Giga(ぎが)Wind(うぃんど)Element(えれめんと)に追っかけ回されてな、そのとき現れたんだ!あの英雄、“一幻魔界”が!」

 誰だそれ。

「あの東の聖女に俺も名をもらってはいるが、やはり彼は格が違ったね、風の力の塊を熱の物量だけで消し去った!」

 この声は後で拾ったものだ。これもこれで気にはなったが、それより私は周りのどよめきに耳を澄ませる。

「あの男?」

「アインスとか言っ――、――――人だろ?やっぱ違うんだな」

 遠くの話からするにアインス・サンルックか。なんか有名だとは思ってたけど、すごい有名?

「まぁ、あの方も大概だけどね」

「学園長はやばいよね」

 フィーア校長えげつないよね…。なんか、一瞬で人を殺すような勢いだものね…。あの資料から察するに。

「雷落とすだけじゃなくて熱までねぇ」

 あの人も大概やばいんだな。強い。何のためにそんな力つけなきゃいけないのか。世の中怖いね。

 そんな所に行きたいと思っていたりもするけれど。

「まぁ、その後すぐどっか行っちゃったけどな、お礼言うくらいしか出来なかった。どうも急いでいたようだった」

 しかし、さっきはForest(ふぉれすと)Dragon(ザー)の弱い個体とはいえドラゴンやっつけたって言ってたんだし、大概強いはずなんだけどこの人。

「その後森を進んだら、ついに集落を見つけた、東の森だが、何とエーデ語が通じたんだ」

 ?何かおかしいのかな。

「なのにブルームの名前を知らないんだ、おかしい話だ。ブルームができてしばらくするまで、エーデ語は広まってなかったんだから。何か面白い秘密があると思った」

 ………?えっと、経緯がよくわかんないなぁ。

「なんとか知ろうとしていたが、当然口が堅かった。」

「女王様、先ほどの話わかっておられましたか?」

 どうも前提に思うところがあったらしかった。

 後付けだけど具体的には習ってないから知らない可能性高いと思っていたよう。

「ごめんわかんない」

「とはいえ大半は知りもしないようだったし、知っている人にしてもこちらに友好的ではあったのが救いだ」

 そうか。知らないのか。と口だけ動かしてから、前の人は続けた。

「ならご説明します」

 そう言って説明を始めてくれた。

「エーデ語が広まったのは白銀からの来訪者が現れた時期と合致します。おそらく来訪者の母国語がエーデ語と同様の日本語であったことからと推測されます」

「まぁ、それについては結論から言うと、どうもよくわからなかったんだがな、すまんな」

 被っているが、後で拾い出せるので問題ない。

 とりあえずこの前の演劇の時代に、ってところか。

 確かにその時代ならブルームがあったね。

「ブルーム盟主国、だっけ」

「その通りです」

「それ以上に、ついに手に入れたのだ!銀霊遺跡(ぎんれいいせき )の情報を!」

 銀霊遺跡?

「それはその町の地下にあるらしいが、厳重に封印されていた。かの宝法神の封印であるそうだ」

 宝法神?

 やべぇ、情報多すぎる。

「俺はそれを開けられなかったが、ここの学園長はどうもその奥に行ったことがあるらしかった。それで頼みに来たというわけだ」

 え?もしかして銀霊遺跡って例の学園から転移していける先?

 私を取り巻く謎が増えていく。まぁすぐ消えそうだけど。

「それで今に至るというわけだ。さて、説明が下手だったかもしれないが、楽しんでいただけたならうれしい」

 そして、彼は一礼をして壇上を降りた。

 たくさんの拍手とともに感想を話し始めてざわつく。

 なんとなく私は、その中に彼の気配を感じていた。

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