私が私である理由 そんなのないです
◎ 視点 アルマ・ブルーム
勉強に飽きたらしい
よく考えると致命的な問題を放置していたらしい。
「おねーちゃんどこ……?」
パインはいじけていた。無表情のかわいい子マジ怖い。何か涙目なのに抱きしめてなぐさめたい愛おしさではなく、とでも恐ろしい般若か何かを感じてしまう。
………って言うか、パインの方は自分から行くほど懐いてる印象なかったんだけど。
私自身訳が分からなくなってきてるからか、記憶の引き出しを求められる。
そりゃあそうでしょう?
とりあえずここはどこか。もちろんブルーム王城。
具体的に。パイン用の部屋。どこにある?城で働く人々の部屋が並ぶ所の一角。なぜそんなことろに?所だ馬鹿。えっ……と、お?
「なんで?」
「………なんとなく。でもここでよかった。ウィッチのおせわのまがかからない。もともとないけど」
ああ、そうか。そもそも感が利く子だったね。
「ところでおやつ時だしお菓子でも食べない?」
「うん、たべる…おねーちゃんはどうするのかな」
「適当に食べるでしょ」
味噌焼きおにぎりとか。せんべいとか。この前はお母さんに大学いも作ってもらってたし。
あの子はそもそも大体のお菓子が苦手だからねぇ。野菜も果物も本当に小さかった頃はあまり食べなかったし。
なんだかおかしな好みしてるのよね。まぁそれはいいや。
「メイドさーん!適当にお菓子ちょーだい!」
「かしこまりましたわ」
そこら辺を通った人にテキトーにお願いする。何となく慣れた。まぁ、自分でもらってくときと半々くらいなんだけどね。
「こちらです」
「早っ」
「いや……だってすぐそこですもの」
そうでした。予備の厨房というか、調理室がそこにあったっけ。厨房は反対だからそっちから持ってくるのだと思っていたよ。
今度そこから持ってこよー。
「ではごゆっくり。あ、紅茶はいつものでよろしかったでしょうか?」
「あ、紅茶忘れてた。うん、おっけー、ありがとうね」
「はい、それでは失礼いたします」
さて、二人になったところですし。
「おしゃべりしましょ?」
「うん!」
あんまりパインと二人でしゃべることがないのよね。せっかくなんだから、たくさん話でもしてみよう。
「ところでさ、パパどうおもう?」
ん?パパ?……あ、お父さん?マリルは最初からお父さんって呼んでたからしっくりこないな。さて、紅茶を注いで。
「おとうさんってよんでもいいけどさ、パパのほうがらく」
そっか。あ、魔法使って何かしようか。後私はカップケーキ取るよ。
「それはあぶない。うーんしょ」
「ああーあー、私取るよ」
「ありがと」
パインが取ろうとしたシュークリームを取って、パインの皿に乗せる。危ないからナイフも取り上げとく。二人きりだしフォークとスプーンだけでいいでしょ……。作法にこだわらないならそれすら要らないし。
「それと、しつもんにこたえて」
えーと……。
「そもそも、もっと具体的に説明できない?」
「えー…むり」
無理なのかい!ええ…?
「おさきにじぶんでこたえる。わたしパパがかなりばかだとおもう」
「ひっど!?」
さすがに直球はないよ!
「よなかに一人でくらやみあるけなくて、たすけてほしいお子さまみたい」
お子様って、お子様って!目の前の五歳児からお子様って言葉が!
マリルよりパインの方が怖いところあるんだよね…。マリルは賢いからあまり変なこと言わないし。
「お名まえおしえてって、そんなおはなし」
ごめん意味分かんない。
と、ふと何かの音が聞こえたような気がした。
「雨の音ってさ、こんな音だよね?」
「…?ごめん、私には何か分かるほどはっきり聞こえない」
雨の音?でも今は雨降ってないし。
「ふってるようには見えないよ?」
「えーっと、なら、上?」
言いながら上を見てみると、大体見当がついた。
「あー、そっかぁー」
「そうねー、誰だこんなことしたド阿呆」
上には魔方陣の一部が。
随分と派手な魔法に手を出したやつが今何かをやらかしているな?
「ま、ほっといて食べよ」
「だからこたえてよ」
え、やだ。次はミルフィーユ。あ、エクレアね、どうぞ。
「まぁ、特に何も」
「そう。あと、ありがと」
「やっぱりこれ食べたかったのか」
「うん」
さて、そろそろ魔法を研究――という名の妄想をしよう。ミルフィーユ食べにくいなぁ。
「たぶん」
いきなり何かを話し出そうとした。
「?」
「………あ、っと」
感じたことを思い出せないやつだ。勘なんてそんなもんだしねぇ、いつものこといつものこと。
「いや、わかるの、たぶん、そろそろ、そと?中?うま?ってかんじ?」
「えーと?外っぽくて中っぽくて馬がいる?」
何よそれ。屋外か屋内かって言った方がいいのか?。
「えっとあれ!あれだよ!あれなんだよ!シンデラのカボチャ!」
「違うよ、シンデレラだよ!馬車のことね。つまりそろそろ何かがあると」
馬車に乗るような行事ってあったっけ?
「えっと、おもい?たぶん、とおくに出るんじゃない?」
重い?荷物かなんかかな?ふむふむ。
「で、何で予言風?」
「ちょっかんだもの、わたしもしらない」
そっか、私も知らない。あと、直感って言えばいいってものじゃないよね……。
「あ、アルマおねえちゃんのキラポーンやりかたおしえて?」
キラポーンってまた独特な。全力発揮形態ってのもなかなかのものだけど比較にならない。
「えっー、と、適当!何となくでやった!ちなみに魔法を使いやすくするのと、魔術と禁術を合わせた魔法だよ」
「えー、わかったー」
ああ、パインは一応禁術は使わせないようにしてるんだった。
「まぁ、使いたいなら許可とりな」
「うん」
使わないでほしいとは思うけどね。じゃ、頑張るか。




