私が私である理由 修行時
◎視点 アルマ・アローラ
ブルーム王城 1階 王城兵士訓練場
花の月6日
ここより暫く、記憶に欠落が存在する。
「ふっ、はっ!」
ただひたすらに杖を振るう少女。
「ふっ、らーっ、laevateinn!」
その隣では、炎の剣を作りそれを振るう少女。
「杖を通し魔法を使う、非効率的では?」
「知ったことではなかろう、魔法は心持ち一つと知っておろう」
そしてそれを眺める中年と老人。
「はいやっ、たぁーー!」
そんな構図。さて、状況を一旦、整理しよう。なんかさっきから記憶の様子がおかしい。十分前と今が、大きく違うかのように。
それはそれ。どうせ私にはどうでもいいし、見ている人なら理由もわかるでしょう。ボートに書いてあるでしょうし。
ちなみに上の四人はそれぞれエニカ、私、どっかのえらいおっさん、ジェーンのお父さん。
「アルマゲドン、ちょっといい」
「いきなり何を言い出した」
ほんっとに急に変なこと言い出すよな。
「なぜここに私がいる。授業受けたい勉強したいマジでででででで」
「バグるな」
どうしたよ急に。気持ちはめっちゃわかるけど。いや、前半の方ね?私からしてもバグるのはおかしいと思うよ?
「じゃあその前に質問するね」
とりあえず休憩する。
「ツヴァイ・エンロープだったっけ?あなたのお父さん」
「そー。ゾンビと一緒にヒッキーしてるの」
ゾンビって何よ。まんまの意味じゃないよね?
「なんかよく分かんないけど、あなたのお父さんを巻き込むつもりらしいからね」
その人のところに行くつもりだって、パインが言ってた。
でもそれ以外が全く理解できないわ。
「本当に意味わかんない」
私もそうだけどね。なんか口止めされてるみたいだし。
「あ、そうだ」
ふと思い出した。
「何?」
「アドレナリンがどうとかいってたけどあれ、どういうこと?」
昨日、マリルのところに駆けつけたときに呟いていた言葉。昨夜拾ったのだが。
「普通なら実行できなかったのかな、って思ってみただけ、ってところかな?多分。あまり覚えてないよ」
「…ふぅん」
そっか。結局アドレナリンって何だろね?
「さ、続きやろーかな」
マリルに後で聞こう。
「しかしまぁ、昨日のことよく思い出せるよね。それに未来から教えてくれる…その力なら、余人(他の人って意味だそうです)には届かない領域まで手が届くんだろうね」
なんか引っかかる言い方をしたね。
そんなことより、でいいのか知らないけど、再開しますか。
「laevateinn!」
いつも通りに振るい出す。
しばらく先ほどのように振り続ける。
「いってー」
すっころんだ。
まだ頑張ろう。さっきエニカにはああ言われたけど、実際はそんなにたちのいいものじゃない。
「よいしょっと」
素振りを再開する。こう考える雑念も放っておくことにする。私は失敗することはほとんどない。「理論上可能なら」だが、未来から導かれて、という形の偶然でできてしまう。私の力は言ってしまえば0が見えないほどに並ぶような低い可能性を引き出すことはできても、ただの0はどうにもならない。
「……だからか」
だから、だ。一年前、ユリウスを死なせてしまったのは私の力で変えられないことだったからだ。だから鍛えれば力を得られる。仮に一矢報いる力さえあれば、きっと勝てるんだと言えるから。
もしそれでも無理でも、やってみたら後悔しないのかな。分からない。
「さて、続き続き」
なんだかんだいって、努力する自分に酔ってるのが一番なんだろうけどね。
スペル訂正中(leavateinn→laevateinn)
正確にはどちらも違うようなのですが。




