エクスタシー予見
◎視点 アルマ・ブルーム
今―――お父さんが死んで、記憶を振り返った今でも思う。この日は、やはり最悪の日だと。お母さんは無事帰って来れた。ウィッチの件はなんだかんだ無事だった、のかな。ほかにもいろいろあった。そこには苦しいこともあった。この件だってほかみたいに、不幸中の幸いと言えることだってあった。でもね、でも。私は。私にとっては。
この日こそが、最悪の日だ。
◎ブルーム王城 女王の間
花の月5日 朝
ふぁーあ。
「あー、朝ね。支度したくない、なんちゃって」
支度だけに。
「う、うぅ……」
まだ泣いてるらしい。こんなんでは、登校できるかどうか。というか無理か。無理しないで居られるように手を回すか。
「ジェーン、今日は休みなさいな」
とりあえず、それとは折り合いをつけておいて。
「アルマ様、感謝いたします」
「はーいはい」
存分に感謝しなさい。それで気を紛らわせられるならそれもいいわ。後がやだけど。
久しぶりに髪をとかすなぁ。まぁ、慣れないなんてことは無いからいいけど。
「おーい、アルマ?」
この声はお父さん?
「なぁにー?」
まぁた何かあったの?
「その前に、この気配はそこに他に人居るだろ」
「どういう感覚してるの?動いてもないのに」
「ジェーンの気配は独特だからなー……はぁ」
「いや、分かってんじゃん」
ここに居る人。
「いや、アルマの反応で察した」
あ、そう。
よし。適当にポニテにしようか。
「いいけど、どうしたの?」
「下で話す」
えー、どうしてもったいぶるのさ。
「お兄様ぁ」
兄、か。
妹しか居ないんだよな、私。
兄が居る、ってどんな感じなんだろ?
◎視点 ジェーン・フィロソフィア
私の三人の兄。
サンル、ブル、ゲータ。
長男は人殺し。
次男は致命的なロリコン。というかただの幼女大好きな変態。あの変態は。
そして、三男は野性的すぎた。同時に、知能もあわせて持つせいで、察してしまったのだ。
この家系は、女に継がせないといけないと。
それが呪いを解く最善の手段。
それだけの、こと。
なのに、なんで。
それだけで、そんな大罪を!?
「お兄様ぁ!!」
彼の決意を、止められはしない。
◎視点戻って朝食中
「で、つまりはけんかを買えと」
お父さんの言葉を要約するとそういうことで、ついでにジェーンが落ち込んでる理由にも関係あるのではないか、と。
「そ。そいつの名はゲータ・フィロソフィア。ついでだから話に乗ってやるってことで受けた。けど、悪ぃがマリルとパインはたのんだ」
「え?」
わざわざそれを言うほどのことがあるの?
「危険すぎるまま乗っちまった。リスクの確認し損ねちまった。本当にすまん!!」
あっちゃあ。これはまずい。どうにかがんばるかー。
後からすれば、軽く見過ぎていたと思う。これは本当にまずいのに。
む、……未来が危険と残している。少しは本気で警戒するか。
「まずいかもしんない」
ふと口に出てしまった。
「はぇ?」
「未来が、危険と残しているから」
未来は私にとって過去と変わりないのかもしれないなぁ。
「…そうか、かさねがさねすまんな、任せたぜ、アルマ」
やるせない気持ちと、自分たちへの信頼ゆえの葛藤。
「うん」
それは、気分の悪いものじゃあない。
悪夢は刻々と迫ってくる。
そして、悪夢は来る。
この先は、私が手を加えたのは大分後のこと。
それまではただ、引き出せるようにしているだけ。
だから、いつもより慎重にやった分は主観的かもね。気をつけてね?
◎登校中
さっきの件、なーんか情報そろってるはずなのによく分からないって感じ。
なぁんかなぁ。
「どしたー?気に病んでもしょうが無いぞー?」
「危険な未来が見える、といっても?」
1年前以来だよ?こんなの?
「………」
…でも、なんか言って欲しかった。
「あれ、パイン?」
なぜか上を見上げていた。
「おほしさま」
え、星?
上には、雲すら無かった。え、ちょ、な、何を見たの?
パインがこういう変なこと言うときって、大体何かあるんだよなぁ。
その青空を見上げて、星がないか探したが、やはりなかった。
◎王立魔法学園 校門前
「さぁ、勝負だ!!」
「いきなりどうしたの?」
唐突に来たけんか売り。
「というか、断ったらすぐ殴りあいするでしよ」
後ろにいろいろ居るし。
「まぁすでに駆け引きは始まってるようなもんだからな、はっはっは」
最初から糸を引いていた。私が関わる前からはめていた。
「あなたの意図を超えるためやることは一つ。あんたらの予想外を起こすこと」
だからこう「言う」。
「勝てばいい。たったそれだけのシンプルなお話。やりましょうか?」
「okだ」
私と彼の間で、同意がなった。
「お姉ちゃんの味方するぞー!」
「みたかするぞー!」
マリルとパインがのる。
「いたいのやだなぁ」
「気合いですよ」
緑髪の女と赤髪の女も同意?なんか負ける前提だけど。
ちなみに聞き取れなかったので、夜になって初めて理解した。どうしても気になってたままだったし調べたついでに書いた。
そして勝負とは?その答えはとっても単純だった。
決闘である。3on3で。
そろそろバトル物と化してるかもなぁ。そういうのは的確に断ち切らないと。……いや、多分焼くかな?




