町中の散歩とこだわり
注意 虫の話があります
2019 7/2 句読点漏れの修正
また歩く。しばらくは人の往来を眺めていた。
人は右へ左へ流れていくように見える。
川の流れは決して絶えることはない。しかし元と同じではない。ってなんかあった気がする
人の流れも同じ。歩く全ての者は、生まれ、生きて、考え、学んできた命。
生まれ生きた命はそれだけではない。
足下にだって命はある。……足下?
うわっ、クモだぁ!!
びっくりしたぁ。
あ、足六本だ。イトハキアリかな。
こいつは正確にはクモじゃなくてありんこの一種だね。廻金のなぞその一。なんか名前が雑なのは大体白銀の種族に由来する。
後そこらに見える植物たちも生きてるし。
この甘さも命が生んでいると思うとステキ。そして悲しい。
命の意味にこだわり?っていうと違うな。まぁ大事にしないとね。
「ジュース飲み終えちゃった」
ゴミ箱へシュー、ト!
「よっしゃ!」
「よっしゃ、って……」
まぁいいじゃないの。
いまだ中央へ歩いている。
「しっかし、さっきっからうるさいなぁ」
「あ、あれでは?」
指さした方を見ると、大きな馬車があった。
上には、黒に黄色と赤青ボーダーのでクロスが入り、中央にドクロのマークの旗がある、つまりはあれか。
「演劇団ね、そりゃあうるさくもなるわ」
さっきの三公爵うんぬんは、たぶんこれに関係してたんだな。
そっか。
「おー嬢ちゃん!昨日ぶりだな」
あ、たい焼き屋のおっちゃん!
「うん!またたい焼きちょーだい!」
「おう!そっちのにーちゃんも食べるか?」
「じゃあカスタードで」
!
「あいよー!」
………。
「カスタードは邪道」
「えっ」
「やっぱりあんこじゃないとーーーーー!!!」
だめだろーーーーーー!!!!
「強いこだわり………!」
「あったりめぇだぁ!」
「何やってんだおめぇら」
「てへっ」
「あははっ」
なぞのやりとりをツッコまれてごまかして。
「あいよー」
もらって、食べる。
「いや、お代」
あ。
「はいよ、250円」
「250え……あ、合ってる」
昨日来たから一応ね。
「昨日以前のことはきっちり思い出せるの。ここのメニューの値段まで、ね」
「その日に使えりゃあ便利なのにな」
「まぁね」
そうはいっても、あの魔法、大事なことは教えてくれるから大丈夫なのだけど。
「はむ」
かといって、これが大事ではないというわけでもないし。
「おいしいです」
…ま、いっか。
なーんか、イケメンがたい焼き食べてるシュールさ。笑える。笑わないけど。
「しっかし、よそ者からしたらあやしい旗ですねぇ」
「まぁそうだね、あの演劇団、元々山賊らしいし」
「はっ?」
きょとん、としているフォリック。
いいね。
「この国でちょっと事件があって、裏社会の人間の大半は必要悪にとどまってるの。あれは、悪い奴らからいろいろ奪うための潜入工作から始まってなんかああなった。今では、立派な演劇団」
すっごく平和ボケと自衛戦力重視な国民性の結果。
守るための戦力は大事だと思っているけど、なんか中途半端にしてほかに全力を尽くす人たちの一例。
未だ戦力を持っていることは知れ渡っているけれど、王城の方ですらどうでもよさげ。
「すごい国ですね、敵に回してる国からしたら、面倒なこと……」
全くよ。どこがどんな戦力を持ってるかブルーム王でも把握できてないもの。すごいよ?
「バカの相手しづらいのと同じ。予測できないことほど面倒なこともない」
そんな集団すらお母さんは守る対象としてみていた。そのなかであの事件。つまりそれは、相手は大きな組織による権力やコネに頼った犯行ではない可能性の高さ。単純な実力でお母さんをさらっていった相手の力はこの世界で最強級。
ま、こういうことだね。
あ、食べ終わった。
「む、58番かー」
「なんです?」
あ、フォリック知らないのか。
「今日は29番が当たり。もう一個ゲット」
なんか雑だなおいこら私。
「38番ですね」
「そっちも外れかぁ」
やっぱ簡単には当たらないなぁ。当たりが本当にあることを知っているからなおさらそう感じる。
「ま、残念だったな」
ざんねんだわよ。
あ、演技が一週終わったかな?人の往来が加速した。
「見に行きませんか?」
「うん、行こう!」
「あー、またこいよ!」
「うん!」
さて、どんな劇かな?
と思ったら。
「これってもしかして」
ええええーー。
「うん。さっき話してたやつだ。劇としてもまぁ悪くないわね」
題名は、『フィロソフィア自衛団防衛戦』。
ポイ捨て厳禁!ゴミ箱シュートもだめ!!




