地獄、極楽、あとはただ倒すだけ
◎視点 アルマ・アローラ?
灰vsノインとツェーン
空を跳ね回るツェーンさん(元の名前とはいえ、もう柊也さんと呼ぶ理由はない)ともう一人。
強いていうなら、影だろうか。黒いシルエットのような存在。灰としよう。なんか散ってるし。
あ、本体に似ているかも。多分戦闘開始前の元々の姿の影写し。
「あー……そろそろかぁ………」
ぼそぼそと唱え始めたのは詠唱。多分|全力発揮形態《(フルパワー・モード)》。
「……」
そしてその姿はかぎ爪のついた足の熊。おまえも熊か。
八つのそんな足と先っぽが枷になった尻尾、口からは明らかにしびれそうな黄色い吐息。
「……チッ」
ただ舌打ちしてる。だが、灰は捕まえた。背中から出た手錠が灰の影の上に落ちている。
「後はタイミング見て仕留めるだけね」
他より早いな。じゃ、私も急ごうか?
「にしても、しゃべれないとはこれはまた…」
「……フン」
どうでもよさげ。
「その姿なら悲しそうな顔してるだけじゃわかんないけどね?涙目じゃさすがに皆わかるよ…」
「………」
だん、と地面をたたく。
にしても、パワー結構あるなぁ。
「というか、そろそろ落ちる…」
む?下……そんなにやばいか?
「……ア?」
「にしてもよく噛んでる。あぁ、そろそろトドメ刺してね」
「……ア」
――あとは。
◎視点 アルマ・アローラ?
茶vsマリルとアハトとズィーベン
天使みたいになったズィーベンさんと、なんか洗脳してきてる耳から光線を出す茶色の毛玉。正確には毛玉みたいな獣。
『それにしても天使というかドラゴンというか』
天使っぽさすごいけど鳥の羽が生えたドラゴンである。
「使い勝手良さそうだな」
医療用のメスを投げながら言うアハトさん。そんな使い方でいいのか。いや絶対よくない。
『それにしてもトドメ刺すのは私のタイミングでやってもいいのか?』
「ここが一番時間かかるしな」
「それにしても強いでしょ……!guardian neptune(海王星の守護者)!!」
青々とした氷のような守りが光から守る。
『なぜか熱を発しないのが余計悲惨だな…』
「私としてはむしろ助かるかも…」
「急げ、時間ないぞ…!」
あ~……?そう来るかぁ。
「お姉ちゃん!」
いや、使わなくていいよ。言わないと!
「無理するな!」
「うん!」
無理しなくても、合わせられる。というより!
考えを頭に出す前に外から飛来したそれが吹き飛ばした。
――あとは。
◎視点 アルマ・アローラ?
白vs……?
「なんで私が化かされてるの?」
ぼーっとしながら彼女は言う。しかしここを誰が担当しているのかがわからない。多分消去法でわかるから、あとで全部の意識をつなげてから改めて考えよう。
ほかにいうこともなく、淡々と見えない何かによって切り裂かれた。
――あとは。
◎視点 アルマ・アローラ
統合完了
なるほど。
増援がやられるたびに吸収して成長してる。そして、見えなかったのはフィーアさんか。
全員の戦域外でフンフさんが準備していて、そこで残りのメンバーがツヴァイさんの守りの中にいた。そして今、|全力発揮形態《(フルパワー・モード)》中の全員が彼女の前に集まった。
そして何がマリルの前にいた敵に飛んできたのかというと、それは目の前。
雪菜自身。
なぜ?
「あ…………う………あ~!!!!!!!」
感情があふれ、壊れ、妖気そのものが嵐として吹き荒れ傷つけ、荒らす。
私がまだ蝶のまま、変身中なことを考えると、多分、とくに攻撃のつもりはなさそう。
というか直撃しなきゃって条件、思ったより緩い縛り…。
「さて、またか」
もう一段、落ちる。地上階へ。




