塩水晶の極光(aurora)
◎深夜帯
夕食のチーズフォンデュまだおなかに残ってる感。
…さて、眠いのに眠らせてくれないこの感じ。とりあえずいったん無視して無理矢理少し寝て、今に至る。
「多分寝るなってことだろうけども」
さすがにこの年では少しきつい。
「あれ、起きちゃった?」
「まだ寝るなと言われてるみたいで」
ツヴァイさん。
「ああ、未来が見えるんだっけ」
「そんなところでふぅあ…」
あくびが…。
「さて、禄斗……君のお父さんなら外だよ」
行ってこいって暗に言ってる気がする。何かあるのだろうか?
にしても気の弱そうな人だねぇ。図体ばかりがでかい感じの。
「ん、行ってくる」
「はい、上着」
「ありがとうございます」
モッコモコのコートを渡された。
いいね。羽織る。
「いってくる」
「うん」
さて、外のどこにいるのやら。
◎塩水晶の隠れ里 天からの噴水
にしてもこの噴水すごいなぁ。
天井の水晶…塩だっけ?から多分雪解け水だろうものが出てる。
「あ、いた」
反射する人影があるので多分上だな。
階段を登るの大変なんだけどなぁ。
「そろそろだなぁ…」
「ん?アルマか、どうした?」
階段に座って空を眺めていた。
「お父さんからは聞いてないよ」
お父さんが手元の瓶を袋に入れる。
「俺個人の話としては、特に……必要なもの自体は、何もないんだぜ」
あらそう。
「ただ話したがりなんだよなぁ俺。アルマ、哀愁に浸るの飽きたし、ついでに聞いてくれよ」
空を見上げながら、お父さんが話し始める。ってゆうか何のついでだ。
「白銀世界の話だ。そこには発展しすぎて、小さな世界がたくさんあったような感じなんだ。その偽物…というと悪いが、そこのほとんどは元の自分と違う姿をとれた」
いわゆるブイアール、ってやつだね。聞いたことはある。
「子供が、大人のふりをして歩けた。俺は子供の頃は無駄に賢くてな、ほかの生意気のようにバレはしなかった」
これはまたひどい表現を…。理解も納得もできるが、そもそもの話がめちゃくちゃぶっ飛んでる。どういう状態なんだ。
「まぁ、中身は大分アレだが。それこそほかの生意気よりやべぇ気もする」
これまでの話をまとめて考える限り、全く否定できない。お父さん自身も自嘲するように小さな笑みを浮かべる。
「…今思えば、あのままならいつか痛い目を見て、……反省しなかっただろうなって」
つまり、荒れてた、って…。ふぇ?
「それが荒れてた理由?」
「いやいや、理由にならないだろそれ」
苦笑される。まぁそうなんだけどなんか言えと言われたもので。
「少し話は変わるが、ある一大プロジェクトがあった。それは、地球を捨て、金属やらなんやらで星を作って逃げるというものだ」
何それ?意味がまるでわからない。確か地球って、白銀の大地と海と森と空と…って、それらそのものでしょう?
「超技術過ぎるが…まぁ3000年ほど前ならまだ手作業だが、100年もありゃ都市の大半が跡形もなく生まれ変わるからなぁ、規模はとにかくとすりゃあ余裕だわな」
ここの技術は1500年前の技術って聞いたことが…ってこれ古いデーダか?
「その過程で月を壊した」
……あ。
「俺と一は利害が一致したから組んで、反対活動をしたんだよ」
「二人で?」
「そう。途中で参太とココが混ざってきたり、紫苑ちゃんが所々口出ししてきたりな」
参太…ドライさんと、紫苑ちゃんってのはフィーアさんだよね。
「ココって?」
「む?心結…ああ、ノインだよ」
心結だからか。
「はぇ…」
「そんなこんなで集まったのが十二人、そして参太がこちらに都合よく学習させてしまったAI、桃がいた」
多いなぁ。
「荒れてたってのは、…あれだ。その間で犯罪まがいのこともしてた。大半…他の面子の本来の目的の関係以外は俺が実行してたからな。まぁ……その目的が犯罪である奴らが半数だった気もするが」
ふむ?
というか何したか…触れない方がいいな?
「さて、それが俺たち、クライシス・リーフと呼ばれていた集団だよ」
「すっごい壮大な話だね…」
「まぁ大体は過去の話でしかないけどな?」
そうだね、たしかにそうだ。
「……そうだな、罪の意識で狂うなんて、多少はあるさ。意味なんてないのにな」
意味なんてない?
「意味ないって…」
「そうだろ?俺はわかっててやってるさ、ちゃんと断言できてしまった」
……なるほど。
倫理観かなぐり捨ててること以外は何もおかしくないか。
「正義、って言葉は罪を定義する。犯罪は社会の正義によって決められたものだ」
うわぁ。
「間違ってはいないだろ、と思ってても普通の倫理観がないわけじゃなくてな?」
うん、あってよかったんじゃない?今の本気だったらドン引きしていろいろ考えたよ。うん。
私はそんな引いた顔をしているのだろう。お父さんが苦い顔で付け加える。
「その法がこっち来た時点でなくなった訳なんだが。さっきの罪悪感の理由はそれだよ」
あ。で……どうしたんだろう?
「あとは……法で律するか、徳で律するか、て感じかなって」
「え」
法律と…徳って?
「法が変わって、頼れなくなったから…俺が自分を見失う前に探したんだ、俺の正義を」
正義。
「三年。三年もかけたが、見つけたんだ。この世界の成り立ちを。事態を」
……?
「それは、みんながまた協力してくれるだけのものがあった」
「それで…今?」
それって、私たちは…。
「だから改めてお前たちに聞く」
彼は、私に向き直った。
「俺は、お前たちの正義を俺が定義しないように気をつけていた」
……。
「アルマ、お前は俺の計画に乗るか?それを、自分の正義で決めてくれ」
ああ、そういうこと。
「やることはあと一つ。エルダーアースの中枢を破壊すること。後はブルームがやってくれるんだ。それの前にリズの救出をする。ってかそのために今ここに来たのだし、ついでにリズに協力してもらわないときつい」
ふむふむ。難しく言われたけれど、つまりは私にとってこの計画が正しいと思うか、やろうと思えるか判断してくれと。嫌ならやめていいからと。
「聞けば話す、一応な」
その真実からするに、協力して問題ないだろう。
その未来からの言葉の意味を理解するまでもなく、私は私の意思を伝える。
「私は行くよ。行って、見つけなきゃいけない、私がここにいる理由を」
「ありがとう、アルマ」
「ってか、お母さん助けるためを考えたら選択肢なくない?」
「それは、うん、ほんと狂国がってことで………」
だめだこりゃ。
「おい」
「ごめんて」
一応ね?圧かけておかないとね?
「……あのときの、俺が決めたときの言葉」
お父さんは、階段に腰掛け、私に空を見せるようにどいた。
「太陽は、夜には見えないが、確かに存在する」
そこには星どころか月すら見えず、美しいオーロラだけがあった。
「アローラ――aurora、オーロラと言われてるが発音はこっちなんだろうなと」
幻想的に揺らめく光。
「月だけじゃない。この極光だって陽の光が存在することを証明してくれる」
それは…太陽によるものらしい。
「俺たちの道を照らす太陽を探そう。絶対あるんだ。俺たちは、アローラだ」
つまりは、太陽によって生まれた存在にとって、太陽が存在することは当然だということらしい。
「俺の太陽を…リズを。今から、助ける…!」
あー……いや、何も無粋なことは言わないでおこう。
私もよく言うし。さすが親子だよねぇ。あはは。
恥ずいわ。後でいじってやろうか。
◎その真実について
今は、どうでもいい話だ。そこは、私の世界にない。
本当に自分たちの正義のために活動していましたけどその正義って所詮みんなで抵抗せず世界の終末を迎えようという思想に近いんですよね。それはだめだ。世間は許しちゃくれません。
だから禄斗は悪で、ゼクスはそうでもない…?という解釈と結論です。こいつを主人公より主人公させられるだけの、主人公たり得ない理由です。




