映像記録
それ以上でもそれ以下でもない。
◎ゼクス撮影の映像記録1
「はーい、今から回します」
ゼクスの顔が映る。
「アルマ、こっちこっち」
「はーい!」
アルマの横顔が映る。
「アルマの望みを聞こう。――魔法と聞いたら、君はどんなものを思い浮かべるのだろうか」
「えっ?」
小首をかしげる。
「魔法とは、君の力となるものに、と作られた。その手で、頭で、足で…体でできないことを楽にする、力に。君が求める力は?」
「うーん……きらきらしたほのお!」
「なるほど」
二回跳ねる。
「わたし、おひめさまなんだって」
「確かにそうだな」
「おうじさまにたすけられるのはなんかいやなのよね」
「そうなのか?」
「うん!わたしがたすける。そのほうが、わたしはすき。だからそうする!」
にっこり笑う。
「おうじさまにあえるかわからないけどね、でもだれかをたすければわたしはえらいひと!」
「お、おう?」
「がんばりたいの、わたし!」
「そうか、がんばれよ!」
去って行く。
「……いいのか、これで?」
◎ゼクス撮影の映像記録2
ゼクスの顔どアップ。
「よし。マリル、始めるぜ。――魔法と聞いたら、君はどんなものを思い浮かべるのだろうか?魔法とは、君の力となるものに、と作られた。その手で、頭で、足で…体でできないことを楽にする、力に。君が求める力は?」
引いて、椅子に座りマリルを膝の上にのせる。
「お姉ちゃんを守る!」
「お、おう」
ゼクスの顔が引きつる。
「おとうさんも……守、りたいなぁ?」
「あ、ありがと……」
さらに引きつる。
「私は守れればいいよ、全部全部守るの、それでも贅沢な話なんでしょ?」
「それも、そうだな。がんばれよ」
「うん!」
マリルの目は決意に満ちていた。
◎ノイン撮影の映像記憶
「ねぇ、聞くって約束だったような気がするんだー」
明らかに怒ったノインの声。
「すまん、聞かれたから教えていた」
「もう!」
「お母さん!僕、もっと頑張るよ!」
幼いトロワが映る。
「うん、そっか」
「お父さんよりすごいこと、頑張ればできる気がする!」
「自信家だねぇ」
画面の端っこを突っつく蜘蛛。
「頑張る!」
「うん、頑張れ少年!」
◎ツヴァイ撮影の映像記録
「――魔法と聞いたら、君はどんなものを思い浮かべるのだろうか?」
「キラキラ!カチコチ!ヒヤヒヤ!」
車椅子に座ったツヴェルフが問いかける。
「魔法とは、君の力となるものに、と作られた。その手で、頭で、足で…体でできないことを楽にする、力に。君が求める力は?」
エニカは車椅子を押している。
「ん~?何だろうね?いろいろ出来るといいなー、お父さんの魔法はできること少ないし」
カメラが揺れる。震える。
「つーくん?落ち込まないの」
「うん」
震えが止まる。
「ところで何で撮影してるの?」
「記念だよ、君がこの世界を君の力で生きる、ね」
「ふぅん…」
カメラが下ろされる。
「さ、他の記録が来てもいいようにまとめないとね」
これ以上はいらないなんて、誰も考えてはいない。未来ある子供がそんな卑屈ではいけないのだ。多分。
ところでなろうに保存してた枠にジェーンの短編が書きかけで存在していることに気がついたのですが今更これどうしましょう………。




