short&long~鎧の蔦豚vs犬の巫女、狐の獅子、蝶の女王
◎視点 アルマ・ブルーム
……人間なのかなぁ、これ。
目の前のおぞましい景色。
それは、紫の液体。
それは、足のイカ足から出てきた。なにそれキモっ。
「くくくくくくくくかく」
なぜ「か」が混じったのかわからないけど変に笑ってるの怖い!
「最悪…気持ち悪…もうやだほんと男嫌いになりそう…リントみたいに…」
独り言感満載。いつものことだったんだろうけどさ。前までなら聞こえなかったんだろうな。
この分だと前までの聞こえなかった言葉、たいしたものはなさそう。
「やるよ、シューたん!」
「ん!」
「いけぇ!」
まるで羽ばたくように腕を大きく振り回し、強引に鎧にたたき込む。
ものすごい轟音と火花をあげる瞬間に加速させたラーヴァを花に当てる。
「ぷぎぃいいいいいいいい!?」
「いよっし!まだまだぁ!」
爆発をたたき込む。何を思って何を考えたかはまーったく検討つかないし何も考えてないけどとりあえず小さい爆発を大量に引き起こした。
あれ、シューたんどこ?
「下がって!」
はーい!
「斬ります………dimensionthe darkness san(黒太陽の次元)」
危ない!?
「どわっ!?」
リックに向かったいか足を体を割り込ませてそらす。
あー、もう飛べないや。これ以上戦うのはつらい。
決めてよ、リック!!
刀が音を立てて折れる。しかし何かがそこに残ってる。
何かは、見えない。
物理的な視界には何もないように見えて、魔法的には…見えない。光がないような、そんな感じ。
目が痛くなる。耳鳴りがする。
「行け!」
それを振り抜いた。
「貴様が無駄に吐き出した欲望故に、生命力も残り少なかっただろう?」
ゆったり私に向かってきていたたこ足もいか足も消えた。
おそらく鎧の中にあるツタも消えた。
「eaten eater(食べられた食べる者)…終われ、人食い草」
おそらく全力発揮変身を使ってか、髪がたてがみのようにとげとげしくなったからか、斬り続けている見えない刀から響く音がまるでライオンが吠えている声に聞こえた。
フォリックの全力。
「ほら、終わった」
最後に振り抜いた後の敵の姿を見てようやく気づいた。
これ見えないというより存在しない刀だったわ。
何も斬られてない。代わりに普通の禁術とも思えないほどに生命力を…それどころか魔力や妖気さえ根こそぎ持っていった。
「まさか、あの男の見えない刀か…!?」
なんか群衆の一人がそうつぶやいた。
「違います、これは妖術の産物。見えないのではなく、刀身がなくなったのです。これを使うには、弱すぎた」
フォリックがいつの間にか元に戻って説明している。
「生まれた頃からの相棒だったのだけれど」
えっ。
「……それ、すごい大事なものだったんじゃ」
「まぁ、無理してましたし。もう、あと一年くらいかな、って」
なるほどね。
「で、シューたんどこ?」
「鎧の中です。ひっへがしましょうか…よいしょ!!」
鎧が音を立てて割れる。金属ではなく石だからか、ゆがむことはないみたいで。
「………」
「気絶してる。はぁ……アルマ、急いで屋敷にもど……あれ、いた」
ん?あ、異様すぎる虫が飛んできた。
コレ絶対…
「おるで。みんなお疲れ様」
「あ、お疲れ様ですー」
やっぱり犬の族長さんか。
「ソルナ様、シューは…」
「わかっとる。自分の娘がこうなる運命だったとは思っている」
……?
「あ、っと……先戻ります」
「……せやね、そうしとき」
「アルマ、戻ろう。これ以上はいけない」
見てはいけないものがある。未来からの言葉自体はそれを示してはいないけど、見ないようにという気配りは非常に罪悪感を持つが優しいものだった。
「うん」
少し顔が熱いです。珍しいな!
「だめ、これ、使い物にならんな。傷物という次元超えて、あぁ……シュレール…」
私は何も聞いてない。そう、今だけ思っておこう。
◎連邦議事屋敷前
ここまで来て、一つ気がついた。
「部外者の気配が3つ」
「ありますねぇ………ですが、さすがに寝させてください。こちらの護衛はクーに任せるから、あー、眠い」
眠そうだね、さすがにね…。
「では、あとはミーを頼っていてください」
「む、まぁいいや。ゆっくり休んでね」
「はい」
自分で何が嫌なんだかわからん。
「それでミーって子は…」
「ここにいるんだなぁ」
うわっ!?
「ちっと反応薄いなぁ。まぁいいや、初めまして、アルマちゃん」
「初めまして、ミシェルちゃん」
ここ最近で一番軽いはじめましてのあいさつかも。
「じゃ、寝る?」
「うん」




