失われた夜の混欲
5/17訂正というか追記というか。しばらく環境がガタガタだったのもあって今日から再開です。ということでとてつもなく遅れます…。
バイトもそろそろ本格的にしたいんですけど(今言うことではない)
◎視点 アルマ・ブルーム
隠れ里ケイブ
お香と何かの匂いの混ざった奇妙な雰囲気の中。
「むー」
お父さんが泊まっている建物に戻る途中でパイン達に会った。
「みられなかったー」
いや、悪いけど見られなくてよかったわ。
戦いはいろいろひどい光景ばかりだったし、その後は、うん。
すごいいかれたことしたなぁ。
「けっかよし?あ、だっこー」
「あいあいさー」
ちょっと疲れてるけど。
「あ、クー!大丈夫だったー?」
うお、クアーロちゃん…クーでいいかな。クーが木の上にもたれかかってた。
「あー、一応ねー。おろしてー」
「はいはーい」
ぱっと飛び移りぱっと降りる。すごい早さ…。
「ありがとね。ところで、今日は宴なんだって」
「ほう?」
宴会…?じゃあお酒の匂いか、これ?
「リックは苦手だったね」
「たくさん寄られるとしっぽがぞわーっとします」
どういう感覚なのかしっぽのない私にはわからないが、とりあえず想像するだけでぞわーっとする。
「もう寝ちゃいましょうかねぇ」
「私も疲れたから早く寝ようかなぁ…」
戦うって、メンタル疲れるからね。
「わたしもたべてねるー」
「すぐはだめじゃないかなぁ?」
ナイスだクー。……いっそ。
「クーちゃん、今日は私すぐ寝…」
「お前も食べてから寝ロ」
「久しぶりのお忍び口調!?」
「何よそれ」
いやまぁ忍んではないけども。そうじゃなくて。
「まぁ…それなら、まず食べる?」
「そうね」
「たべるー!」
「そうしましょうか」
行ってきまーす。
「少し考え事するねー」
少し考える。
内容は陰から聞こえたやりとり。
「お願いできますか?」
「いやだ、なんて無責任には言えないけどよ、それこそ無責任には聞き入れられねぇぞ」
「わかっています。覚悟はしています」
「……おいおい、最悪の場合は」
「大丈夫ですよ、よほどのことがなければなんとか生かすと、世界樹様も仰せなので」
「…………ははっ、そうかい。あくまでおまえを誰よりなんて、一夜でも言わないようなやつだ。いいのか?」
「ええ、優しくしてくださいね」
「…………さて、聞こえてるなら、二人任せたぞ」
「聞こえる距離なら理解できる、ということ?」
「まぁな、それよりお前は……」
ふーむ、お父さんは何する気なんだか。後、もう一人はティアさんだろうか。
ティアさんといえばさ、人格二つあるっぽいのも気になる。
まぁ…どうでもいいか。
よく言ってたことを考えると、そうでもなきゃ明らかに変なこと言ってたのは、後でも気づけなかった。
◎視点 ゼクス・アローラ
気づけなかった理由。
「お前はまだ三人のままか?」
「そうだよ~。」 「うん。」 「まだこんな感じ」
ティア、シャイ、ペルソナ。
俺はシャイとはほとんど話せていない。名前の通り引っ込み思案なんだと。
「シャイは私たちで独り占めしたいんだってさ、あなたのこと」
どうもベタ惚れしたのはティアだけではなかったようですなぁ…。
「ペルはいいのか?」
「うん、二人にせがまれてるし、私は特に誰でもーってかんじ」
「いいのかよそんなで」
「そういうものよ」
いつかの事故で生まれたペルソナは、こうやって自分の意思を優先しようとはしなかった。
嫌ではないんだろうが、不安である。
「では私の部屋へ来てくださいな」
「おうよ」
多分準備万端だな、これ。
思い出すのは16年前。会話しか思い出せねぇ。
ま、俺の回想なんて俺にしか需要ねぇし、いいか。
「おはようございます」
「ええ、おはようございます。……っ」
「何で笑ってるのさ」
「シャイの件でそうかしこまられていると…おかしいです」
「口調だけだとシャイとペルソナ区別つかないんだよな」
「だって、シャイがティアを拒絶して作った繋ぐだけの淑女の仮想人格だしね」
「……お前ら、大変だな?」
「そうでもありませんよ、少なくとも私は純粋に楽しんでますもの、この三人の暮らしも、…………そして、ティアの恋も」
「ははっ……そうか」
ティアは俺にベタ惚れ…今ならとにかく、当時にいうのは恥ずかしすぎるな…まぁ、そんなだった。
魔物から助けたときに…という、吊り橋効果的な、古典的なファンタジー恋愛的なあれである。とはいえ当時5才。ティア以外は精神年齢がすでに高かったのもあり、二人は純粋に男としてこいつはどうなのか、と見極められた気がする。
この分だと、認めたんだろうなって。もしくはティアがもう止められないレベルのベタ惚れなのか。
……会っていない時間で増していくような惚れ方じゃなくね?
ただ、俺はいくつかの理由で受け入れられなかった。
直近だ。ノインが子供を産めなかったのは。確かにあいつはまだ10代だが、あれはそんなものでは済まない異常な光景だった。そもそもあの存在が、人間だったのかと皆が疑った。
その直後だ。人を愛したとしてもそれを表にすることはあり得ず、生殖を忌避することに変わりない。
とはいえ当時の俺が感じたのは、男女の恋愛というより、子供への親愛であり、あの子を忌避するつもりもなかった。
元々子供が好きでもないが、嫌がったら泣かれそうだし。泣かれるのは嫌だなって。
今も、それだけかもしれない。だとしたらこの男、とても非情だ。
無駄な自嘲はさておき、アルマの気に入りそうな食事を手に取り向かうノインと、パインがさっき希望していた食事を持ってきたマリルを見つけた。
まぁ、大丈夫だろうと判断して、急ぐことにした。
◎視点 アルマ・アローラ
時間不明
あまりに眠いので視界がぼやけてる。とりあえず見えてる情報で時間がわからないレベル。
「お姉ちゃん早く寝たら…?」
「そーするー」
時々のぶっ倒れるのとは別ベクトルで大変。
「あれ、うそ…」
聞こえた声を総合すると、聖女様が血が子供がー、である。妙に血という言葉が聞こえる割には物騒さがない。毎月来るようになるらしいあれか?
「そーいや早けりゃもう来るかもねー」
とりあえずはどーでもいい。……来なきゃ来ないで後で気に病むかもしれないが。
「そんな話はいいんだよ」
人間に必要なのは衣食住!食う、寝る!そしてぬくもり。
衣食足りて礼節を知るとかなんとか。なんか間を忘れてるんだけどまぁいいや。その辺ちゃんとしておくくらいの余裕は持ちましょうと。
「なんかねむー」
このときはそんなこと考えてないわけで。
「ねむ………ねむーい…………」
しかし眠れない。
「でももうベッドには入ろうかなぁ…あ、これおいしかったよ」
「おー、よかったよかった。後でティアさんに伝えといて」
「ティアさんなんだ」
「うん、そう」
話がかみ合っていたのかやら。
「まぁ、いいや、おやすみ」
「うん、お休み」
とことこ部屋に向かう。
「お父さんをとられないようにしないと」
静かなままだろうけど、一悶着起こりそう。
さすがにこれは部外者として楽しむのがいいかも。どうせどうするかなんて決めてるだろうし。
◎朝チュン
「この浮気者ーー!!!!」
うるさい!!!
とんでもない大声で目を覚ました。
「急ぐか」
寝巻きのまま即でリビングへ向かう。
「お前、あいつの命の保証はないんだぞ…」
「ずっと、望んでたことだ。俺には断れなかった」
「そうかよ。お前らしいとは思えんが……元々狂ってたことを考えるとそれでもおかしくねぇか」
命の保証、狂ってた……物騒だけど、詳細は聞くだけ無駄だね。
聞いたところで、後で話すの一点張り。そんなの聞いてたくないし、ほっとこう。
「どう弁解するつもりだ?」
「どうせ持て余すから愛人の一人や二人作ってもいいんじゃない、って言われたことある」
「あー、そうだったな、うん、その、あれだ。さすがブルーム」
あ、マリル来た。前見て歩いて?下見てないで。
それを指摘したくはないので別の話で釣る。
「マリルは知ってるみたいね、なんか言った方がいいんじゃない?」
(「……すまねぇ」)
何かしらは言いたいこともありそうだし。
後うるせぇですわ。そう言うの分かってたから聞きたくなかったのに。
「…………………………お父さんを奪わせないからね」
めーっちゃ小声で「泥棒猫なんかに」とか言ってるんですけど。
こっわ。
え、そんなにファザコン極まってたっけ?あれー?
「……完全に女としての戦いに行く声じゃねぇか」
アハトさん!それめっちゃわかる。
「アルマちゃん、その子大丈夫かい…?」
「お父さんがどうにかする」
押しつけるようにいってしまえー。言うまでもなくそうだし。
「本人でしかどうにもできないってのならまぁいいか」
当事者に「あなたは黙ってて」っていうのよくあるけどあれは手がつけられないからねぇ。
「修羅場だねぇ……おはよー。あなた、お兄ちゃん」
「っああ、おはよう」
「おはよー、まぁお前は気にしなくていいだろ」
誰でも気にするよね?
「見てたしね」
お父さんがむせた。変な鳥が変な鳴き声で鳴くのが無駄に響く。
ここで飼ってるらしい真っ黒な鳥か。明らかに飼う種の鳥ではないやつ。
「な、なななな…」
「こわー」
「あなた何してるの?」
「いやー、お兄ちゃんすっごいね。ドライほど…」
シャットアウトしておくが、もう何があったか察した。で!浮気者。彼女の希望。泥棒猫。
よし、しばこう。
「お父さん、何がどうあれとりあえずビンタ」
「はぇ?」
近づいて、バチーン!
悪いことをしたらこうされるって。
「いてて…」
「やべぇなお前の娘」
ひどい。否定できないけど。
「聞き分けよかったからすること一回しかなかったけど悪いことしたらビンタするって口酸っぱくして言ってたんだよ」
うん、いわれてた。
「相変わらずの饒舌…」
「そんなもんだ」
あー、うん、確かにお父さんしゃべりたがりかも。ところで次の質問どう答えよう。
「てか一回は何があった?」
「「人を殺した」」
「はぁ!?それビンタで済ませ……………ぁー、いや、おまえ人殺しだしなぁ…」
なーんか普通かのようにとんでもないこと聞いた。
「実際な、私怨で復讐で危険で…相手も人殺しだし、ついでに廻金(って法が実質皆無)だぜ?」
こう聞くとなんか酷い。
「例のやつか…」
「詳しくはアルマも記憶を封印したからわからんし今はいいだろ」
。
「で、帰るのか?」
「もう時間ないからな、予定変えて直で行く」
まだ事件は終わらないのが。
「アルマ、ノイン、フンフ。ミラージュに向かうぞ」
とはいえ、私は少し休めそう。
あ。ここでフラグ立ててたのか。
みんな、誰かのことが嫌いなんだって。知らないなぁ、嫌いって感情。まぁ、それでいいんだ。私、そんなの知らなくていいんだ。でもそうとは言えない。だってそれって無責任じゃん?とはいえ、前に社会学の話でドラマツルギーがどうとか説明したじゃん?今の社会に異常者は確かに必要なんだと思うよ、その対策を練っている限りは。じゃあ、そこから外れ尽くした私たちは、どうなんだろうって、どう思ってるんだろうって、聞いてみようかな。もう一には断られたけどさ。まず龍二は答えてくれるし、さ。
ね、ウィッチ!




