陽の月の聖憶
記憶。というわけでこの回が早い分、次は遅いかもしれません。
◎隠れ里ケイブ 東都ケイシへの道
なんか道を見つけた。
「どなたですか?」
道の先に人がいるようにも見えるので呼びかける。
……反応ねぇな。
「ふむ」
どうしたものかなぁ。
先ほどからふらついて、まともな成果がない。
どうやら戻った方がいいらしいね。
「あら、もうお戻りに?」
「あれ、お父さんとなんかしてるわけじゃなかったの?」
「ち、ちちち違います!!えっと、その、あーそうだ!あなたにお話ししたいことがありまして、来ていただけますか?」
なんか顔赤くしてパニックに陥っているのだが、どういうことだろう?
こっちから振っといて言うのもなんだけど、何を言わんとしてたのかさっぱりわからないや。
「うん、行くよ」
「では、あちらに見える東都ケイシの入り口へ」
言われてみれば確かに見える。分ける必要あるのか?
「まず、聖女の役割についてご説明します」
はい、よろしくお願いします。
「聖女の仕事は危険因子や法神になる素質を持つもの、つまり強力な魔法を扱えるものを把握、管理することです」
「どうやってやってるの?」
……馬鹿正直に聞いたけど、よく考えれば聖女とやらは明らかに奇妙なことをしている。
「名前を与えることで、管理しています。例えばあなたは“雀炎”と名付けました」
「ほうほう」
通り名とか二つ名とか言い様はいろいろあるわけだけど。あれらは管理のためのものらしい。
「私は雲に魔力を乗せて強力な魔法の痕跡や、すでに刻印した名前などを探していますね」
蜘蛛…?んん、冗談です。雲だよ、雲。発音が違う。
「………あ、自己紹介がまだでした」
……あ。
「私はティアと申します、世界樹様の啓示を預かり、魔法使いを管理する聖女にございます……あの場で名乗っておくべきだった」
「ふむふむ。じゃあ私も。アルマ・アローラです。今は女王としてブルームの家名を名乗ってますけど。まぁ…アルマって呼んで」
「わかりました、よろしくね、アルマちゃん」
「うん、よろしくね、ティアさん」
ゆったりと、目の前の建物の中に入る。
ここは…エレベーター?
「下へ参ります」
「言う必要なくない…?」
◎東都ケイシ 大樹の本陣(卯の御前)侵入口
目の前に広がる景色は、異様そのものだった。天井は異様に高胃のだろうが、それが決して見えないほどには広がる枝葉に覆われている。それは中央にある一本の大樹からのものだね。
葉は赤く、枝は白い。幹は普通に茶色なのが少し異様だ。それより床より下から天井を貫通して地上に伸びてる程の高さってどういうことですかね?
ここは丘の上らしく下にはいくつかの建物が見える。
「さて、後ろが別のエレベーターです。こちらは電気式なので揺れますよー?」
「あー、あのときと同じのか」
「あれ、知ってるの?」
すびあ゜けで乗ったもの。
「一度ね、変なところ行ってさ」
「……ふぅむ」
「詳しく知りたかったらフィーアさんに聞くといいよ?」
とりあえずエレベーター。あれ、あっちのより振動大きいね?まぁ不安定だけど振動そのものは気にはならない。
ただこれ、私たちが入ってる金属の箱が落っこちてるんだよね。
もちろんなんやかんやして電気とか使ってゆっくり下ろしているんだけど、そう考えると怖いなぁって。
「つきますよ」
「何でわかるの?」
別に何の予兆もなかったのに。
「大体の時間は覚えてしまいました」
「あー、そっか、しょっちゅう上り下りしてるのか」
ぴーん、とかって音が鳴り、到着を示してくれる。
「ここが、世界樹を管理する場所の一つです」
そっかぁ。
町というには奇妙なくらい開けている。ここが何かの施設かのような。夜市みたいな。
「では、裏へ」
「そっちなのね」
それは予想外。って……小屋じゃん。
「暗いのでお気をつけください」
「分かったわ」
下り階段。本当に降りてばっかりだね。
そこにあったのは部屋。海賊の会議室みたいなとこ…でいいのかな?
机いっぱいに地図が広がっている。
「そもそも、今回問題になる検索結果はこちらです」
急な始め方をされて、その地図に表示された光を含め困惑するほかない。
「これは五文字以上の刻印をつけたものの居場所です」
この森に赤い?光が見える。
「こちらには赤があるのはとにかく、銅があるのは危険です」
これは2つ重なっているのか。
「銀が消えたんですよ。絶命した痕跡もないですし、刻印をあちらの意思で解除されました」
絶命したって…。
「“純雪銀嶺花”は命魔の創造主。何らかの手段で生き延びていましたが、同じ命のまま魂に干渉するすべも学んだのでしょう」
よく考えると、命魔と命の使い魔は同じか。とすると…。
大陸をなぎ払う猫神獣と同等のポテンシャルを持つ。
あと戦闘用に調整されたものだけではないんだろうけど、それでもお父さんは打ち勝ったことがある。
………?????
あれ、お父さんめっちゃやばくね?
「まぁ、ゼクス様なら……っと、失礼しました」
「お父さんの話、後で聞かせてくれない?」
「はい!是非!……もうだめだぁ」
いったい何をしているんだ?私の振り方もおかしいし。しかも私の発言、この返しのための振りだろ?
「いつになくあからさまに干渉してるんだよなぁ…」
不審極まりない動きばかりしている気がしてくる。
「えっと、干渉についてはよくわかりませんが。そのゼクス様より、ブルーム、ミラージュ、ゼロスサン対エルダーアースの戦争の協力に関するご依頼は承りました」
「うん…?」
協力?なんかいやな予感。
「法神の動員数を増やします」
何それ怖い。
「追加で世界樹様による直接攻撃を行います」
世界樹って動くんだ…。
「ちなみにあの中央におられるのが世界樹です」
やっぱり?あれが動くの?
「せっかくですしあとでお話しましょう、世界樹様も貴女を気にかけておりましたし」
「喋るの!?しかも私、えっ!?」
言葉が出ないよ!
「それより、この光の話しよう」
「はい、それじゃあ説明を続けるよ~」
ふぅ、このイス?で一息つこう。
「銀については、後は気をつけてとだけ。問題は銅です。彼女は進軍してくる可能性があります」
「……進軍?一人じゃないって断言できるの?」
「はい、彼女は洗脳に秀でた馬鹿軍師、だって」
馬鹿なんだ?それだめじゃね?
「それで、兵力の把握はできるの?」
「無理ですね、ですが多くはないかと」
ふむふむ。……ふむ?
「その洗脳についてだけど、その手の魔法って大半は魂魔法を使っている間は効果を受けないの、だから戦闘中は可能な限り使っていてくれる?」
全力発揮変身とかか。まぁあれはオーラを消費しないから大丈夫だろう。
「わかった、けどその前に一つ確認したいことがあるの」
「何でしょう」
「ドライさんが百億の兵って言ってたけどあれはものの例え?」
文字通りかもしれないと思ってしまった。伝説の人間なら不可能な数字ではなさそうだし。
「過去にそれだけの数の使い魔の操作をこなしたことがあるとか、百億の兵に匹敵する戦力という意味でしかないんじゃないかな?」
「そっかあ…」
不穏だけど、どうにかすることはできるよね。
「ああ、あなたのお父さんの話をするならあれが必要、か」
「あれ?」
「一つ大事なノートがありまして、大分奥にしまってますから探さなくてはね」
それはそれは。
彼女には今すぐ探してもらわなくては。ここにいるうちに出撃だ。
え、今すぐなんだ?
「それでは探してきますね」
「うん、じゃあ一人で先に戻らせてもらうよ」
もう戻らなくては。
◎視点 世界樹
移動しないので場所の記載はなし
アルマがエレベーターに苦戦しているのを眺めているとき
ふむ、“雀炎”は調子が良さそうだ。
『ティア、必要なのはこれか』
魔法で保管庫から取りしておいたものを彼女のそばへ寄せる。
「はい、こちらです!」
『ならばよい』
しかし相も変わらず考えるのも暇だなとは思うが、自分の声の方が遠く感じるのは不思議なものだ。自然の摂理に反しているようにしか思えんのだが。
『急ぐ必要はないのだろう、ゆるりと休め』
「はい、ありがとうございます」
大地に干渉されるのを感じる。土人形か。その考えはなかった。なんせあまりにも無意味であるからだ。
……囮だな。なんて残忍な。まぁ、あれは任せていいだろう。
『どうするのだ、おぬしは』
「私は、やはりゼクス様がいいのです」
『………女子だと、いいな』
「はい!」
うむ、笑顔が尊い。これでいいのだ、とはいえないのが悲しいな。
まともに生きられる女子なら、よいのだが。
◎視点なし
「さぁ、始めようか!!私のパァーティー!!戦いだ!宴だ!陛下に忠誠を!血の献上を!!正義の証を!!!」
「やめて、やめて、木をいじめないで!」
「うるさいエルフの女」
「稲荷様をも侮辱するか!!狂国の奴隷風情が!!」
「……いや悪い、そんなつもりはなかった」
「…………悪いことはいわない。やめなさい?」
「子供扱いすんじゃねぇ!??」
◎視点 アルマ・アローラ
なんとなく、ユリウスのことを思い出す。
「……勝てるのか?おまえはそんな化け物相手でも」
私は、一人だけ知っていた。
そいつの名は白山歩実……とかいってたけど名前絶対おかしいだろ。いつかに聞いたとおり、実だろう。
「あれかぁ……まじでやりあうはめになったのかぁ…」
このとき、白銀人と初めて巡り会ったと思っていたんだ…。
って言うか父親がそうって流石にわかるかいな、って話。ただでさえ隠されていたのに、全力が出せていないのに。
「……長い文だけどわからない」
そりゃあ後日の再編集なので。っと、わかるわけないのにやっちゃった。
そろそろつきそう。
「……始めるよ、みんな」
さぁかっこよく決めましょう!!
「戦いの時間だ」
エレベーターが開いた先の光景は、とりあえず、平和でした。
時々私はいなくなる。別に、人が楽しく話しているのを眺めるだけでも楽しいけれど。でも私は話しかけるのは少し苦手で、睨めつけたりして距離をとったりして、人を避けた自覚はある。そしたら避けられる。当然だよ、ね…?でも私、このせいで私を愛せなくなる。何でだろうね、私だけは嫌う理由なんてないはずなのにね。
悩んでいるかもしれない、幸せかもしれない、もはや縁も残らない古き友に感謝の心を、そして幸福を。
時間を合わせるのは忘れたぴょん。
ps(という名のセルフツッコミ)最後ので台無しだよバカ。いやまぁあのときから変なことしか言わねぇ奴だけどな?




