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6-3 真似したら大体できちゃうからこの世界はタチが悪い

 薄暗い防衛エリアに輝く光線が走る。

 眩しく輝く光線は軌跡を描いて壁にぶつかり、轟音と共に亀裂を作っていく。


 音と砂煙が消えた後に残るは、ガケ崩れを起こしたのかと錯覚するようなガレキの山。


「すげぇ……」

「ふふーん! ついにできるようになったっちゃよー!」


 アマツがマンガのキャラの技をマネして練習すること数日。本当にレールガンを完成させちゃったよ!

 ぼうぜんとつぶやく俺に、自慢げに胸を張るアマツ。


「どう!? 主さん! すごいっしょ!?」

「いや、ほんとにスゴイよこれ、一体どういう仕組みなんだ?」


 褒めてオーラをまき散らしながら寄ってきたアマツになでなでで答え、ついでに素朴な疑問を口にしてみる。

 アマツはなでられながらも、顔をやや上にあげ、人差し指をアゴに当てる。


「えっとー。まずは水でぐるんっと砲身を作るんよ。そん中に弾ば入れて、後はビビッと両手で電気をシュッと流せば――」


 なるほど、わからん。

 水魔法で砲身を作るくらいまでなら見ててわかったが、そっから先は聞いてもよくわからん。

 

「そっかそっか、ところでもう一回見せてもらってもいいか? 今度は的をしっかり狙ってな」

「オッケーっちゃよー!」


 ダンジョン管理機能で壁を治し、その手前に的用の木製デコイを置き、アマツの所まで戻る。

 俺たちがいる位置から的までは目算で約100メートルほどある。


 アマツは先ほどと同じように集中すると、自身の前に水の砲身を作り、中央部分に弾を置く。

 そして砲身をつつむように両手を添えて――


 アマツが一瞬青白く輝き、水の砲身から光と蒸気がほとばしる!

 ほぼ同時に壁から轟音が響き、先ほどと同じような亀裂を作った!


 うん、威力だけなら間違いなくトップクラス。これはウチの切り札になりうる。

 ただし……


「次の課題はちゃんと的に当てれるようにすることだな」

「お水を使うと真っすぐ飛ばないんよー」


 的と亀裂の間に広がる距離を見て、ぽつりとつぶやく。

 まずはこの命中誤差を何とかしないと、実用には程遠い。


「その辺は俺もなんかアイデアだしてみるよ、レールガンはロマンの一つだしな」

「主さんが新しい本を出してくれたら、ウチもまた読んで探してみるとねー」


 そういえばアマツはちゃんと工学系の本にも目を通していたな。意外とそっちの才能があるのかもしれない。

 

「でも今日は疲れちったからおしまいっ。ひとっぷろ浴びてくるっさねー」

「燃費の悪さもあるのか。まぁ、あれだけの威力だし当然か」

「主さんも一緒に入らんかね?」

「実に魅力的な提案だけど、この後オルフェとのスパーリングがあるから、またの機会にな」


 ここに来て大分時間もたったし、頃合いだろう。

 オルフェに念話でそちらに向かうと伝えたところ、草原エリアで待ってるという返答がきた。


「よし、それじゃあ撤収!」

「はーい!」


 壁を直し、俺たちはそれぞれの目的地に向かっていった。



 ああ……空がどこまでも青いなぁ。それに草原エリアに吹かせている風が心地いい。

 草原に大の字で寝転がるなんて子供の頃以来やった記憶がない。このまま目を閉じれば体の疲労も手伝って気持ちよく寝れてしまいそうだ。

 

「ごしゅじーん。もう終わりぃ?」


 道着服を着たオルフェがあおるようにのぞき込む。じかに触れると魔力で作った障壁が消えてしまうために、素肌をさらさない長袖長ズボンという服装だが、高身長でスラっとしているオルフェには、よく似合っている。


「ごしゅじーん?」

「ちょっと、休憩してただけだ。もう一本行くぞ!」


 気合を入れて立ち上がる!

 同時にオルフェは軽快にステップを踏んで距離を取り、軽く構えを取る。


「じゃあいくよぉー?」

「よぉーし! かかってこいやぁ!」


 何時でも障壁を出せるよう魔力を練り直す。

 オルフェを見つめ返したのが合図となったのか、オルフェは左右に軽くステップを踏む。


 さて、どうくる?


 あるタイミングで地面に足が付いた瞬間。こちらに向かって地を蹴り、一気に距離を詰めてきた!

 気迫の声とともに、オルフェの右手甲が俺の顔面にめがけて飛ぶ!

 速い! 右腕に障壁展開! ここは待ち受ける!


 直後。重い衝撃とともに、オルフェの右裏拳が障壁にめり込む。

 さらに威力を上げたな! もっと魔力を込めないと障壁が耐えきれないか!


 そう思った瞬間にも、オルフェは勢いのまま後ろの左足を前に蹴りだす!

 それに反応し、右腕の障壁を強化するべく魔力を込め――


 瞬間。左ハイだと思っていた蹴りが突然角度を変え、俺の右足を刈るローキックになった!

 反射的に右足で地面を蹴り、その反動でキックの軌道から右足を逃がす。


 だが、オルフェの攻撃が終わらない。

 左足を地面に付けると同時に背中をこちらに向け、右足に回転の力をたした後ろ回し蹴りを放つ!


 この動きはカポエラか! 狙いは俺の浮いた右足だな!


 が、甘い! 足元に魔法障壁を作り、それを踏み台にして飛ぶ!

 一瞬の間を置き、体の下をオルフェの蹴りが通り過ぎた。

 おっかねぇ! あんなんくらったら右足がちぎれ飛ぶぞ!


 だが、オルフェの攻撃を避け切ったぞ! 蹴った勢いでバク宙しながら避けきった自分を心の中で褒めちぎる。

 青空が見え、地平線が見え、地面が見えて次に見えたのは――


 回転した勢いを殺さず二周目の回し蹴りを放とうとしているオルフェの姿だった。


 空中じゃオルフェの蹴りをかわせない。防ぐための障壁を作る魔力は先ほど踏み台に使ってしまった。打つ手は……ない。 

 

「ちょっ! 待って! 降参!」


 念話で必死に伝えるも、急に止めることはできないのか、オルフェの足がこちらに向かってくるのがゆっくり見えた。

 ああ、死ぬ間際はゆっくり見えるっていうのは本当だったんだな。

 命を刈り取る衝撃に備え、目を閉じる。できれば痛みはありませんように。

 

 今か今かと待ち構え、感じたのは背中に2つの感触。痛くなかった。


「ご主人。大丈夫?」


 同時に前の方からオルフェの心配する声が聞こえた。

 ゆっくり目を開けると、心配そうにのぞき込むオルフェの顔。


 生きてた!


「いや、おまえに蹴られて死ぬんじゃないかと本気で思ったぞ。よく蹴りを止めれたな」

「ご主人が念話で必死に伝えてきたしね。寸止めの練習にはなったよぉ」


 にこやかに笑って答えてくれたが、あの蹴りを寸止めされてたんか。おっかねぇ。


「なぁ、あの足の動きってカポエラか?」

「そうだよ。踊ってるようで好きだし蹴り技が多いから練習したんだぁ」

「あー、最近蹴り技のバリエーションが増えてきたのってそれでかぁ」


 俺自身はあんまりカポエラの事はわからないが、今のオルフェはどんな体勢をしていても、蹴り技が飛んでくるので攻撃を受けきれなくなってきている。


「うーん。さらにDPで強化しないと、オルフェには追い付けないか」


 オルフェが格闘経験を積んだことで最近は差が開く一方だし、筋力もそうだが動体視力や反応も上げないと対応できない。

 まぁ、DPさえあればいつかは上げれると考えてコツコツやってくしかないか。


「もう疲れたから今日は終わりでいいか?」

「いいよぉ。ご主人付き合ってくれてありがとう」


 はぁ。今日もなんとか生き残れた。

 心に平穏を取り戻せた今、自分が置かれた状況に気が付く。


「あれ? 俺、お姫様ダッコされてる!?」


 そう、先ほどからずっとオルフェに抱きかかえられていたのだ!

 

「すまん! ずっとしゃべってて重くはなかったか!?」

「ご主人軽いし問題ないよぉ」


 やだ……中性的な容姿もあってイケメンに見える!


「ねぇ、ご主人暇なら僕のトレーニングに付き合ってくれないかな?」

「いいけど、俺は何すればいいんだ?」

「僕が全力で走るから、ご主人はこのままじっとしてくれてればいいよぉ」


 ゑ?


 俺の返答を待たずにオルフェが草原を走り始める!

 

 うぉぉぉ! 速っ!

 以前ククノチにもお姫様ダッコされて森林エリアを駆け抜けられたが、オルフェはそれよりはるかに速い!

 なのに、上半身がまったくぶれてない! オルフェの体幹すげぇな!


 結局コアさんが晩飯に呼ぶまで付き合わされた。スタミナもはんぱないな! 

 

アマツがレールガン(命中率最悪)を習得しました!

オルフェがカポエラを習得しました!


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レールガンに関してあまり深い考察はしない方向でお願いします。


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