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5-EX2 異世界からの来訪者2

 長い長い防衛エリアを歩きぬいて、俺とメルさんとあとシェルさんは居住エリアにたどり着く。実用的な事だけじゃなくて趣味や好みの話もできたからか、大分心の距離が縮んだかな。

 防衛エリアを抜けると、まずは様々なエリアに続くポータルをまとめた転移部屋に出る。

 

「コアルームに行く前にまずは冷たい飲み物でもどうかな?」


 メルさんがうなづいたのを見た後に、ダイニングルームに続くポータルに入る。

 最初に目に入ったのは、テーブルを埋め尽くすかのように置かれた食材の数々、そしてそれら食材の調理をしている割烹着姿のコアさんだった。


「マスター、冷やしたお茶ならそこに置いてあるから勝手に持って行ってよ」

「さすがコアさん。ありがたくいただくよ」


 調理をする手を止めないまま、首を動かして場所を教えてくれた。首を向けた延長線上には、氷につつまれた木製のピッチャーとカップが2つ、後は底が深めの皿が置かれていた。


 これらは罠をカスタマイズして組み立てた木工旋盤で作った俺の作品たちである。いろいろ試行錯誤はあったが一度できてしまえば量産・応用が効いたのでカップに皿、ピッチャーにトレーなどなどいろいろな小物ができた。

 元々は日常的に使えるものができたらいいなくらいで始めたが、やってみたら結構楽しかった!


「どうぞ」


 二人にお茶を、メルさんにはイスもすすめた後に、俺もカップに注いで一気に飲み干す。

 うん、うまい。このお茶も先日の山菜狩りで見つけた食用可能の葉を、コアさんが湯につけたり蒸したりしてできた成果の一つだ。日本茶とはだいぶ味は違うが、これはこれで飲めるシロモノに仕上がった。

 一息入れた後、手際よく調理を進めるコアさんに視線をうつす。


「三人はどこにいったんだ?」 

「今日の作業がまだ残ってるとかでみんないっちゃったよ」


 昼飯を食ってシエスタしてたのは俺だけだったか。二杯目のお茶をすすりながら、あらためてテーブルに積まれた食材の山を視界にいれる。


「ところでさ、食材取ってくるように頼んだのは俺だけど、いくらなんでも多すぎない?」


 野菜に果物、魚はまぁいいとして、テーブル中央に鎮座する豚一頭がものすごく目立つ。


「まぁ、いい機会だしいろいろ作り置きしておこうと思って。ウチには保存が効く倉庫があるしね」


 ダンジョンコア自身が維持に必要なエネルギーを作り出す部屋、通称迷宮の胃袋を倉庫あつかいするのはどうなのよ?

 あの部屋は入れたものはエネルギーにするまでその状態を保つから倉庫として、そしてなんでもエネルギー変換できるからゴミ箱替わりとしてもありがたく使わせてもらってるけどね。

 

 二杯目も飲み干してからカップをテーブルにおく。


「よし、じゃあメルさんをコアルームに案内してくるよ」

「コアルームにいるのが私の本体だから、なんか違和感があるけど行っておいで。待ってるから」


 確かに、あくまで本体はコアの方なんだよねぇ。

 苦笑しながらメルさんの方に振り向く。


「では、行きましょうか」


 メルさんが立ち上がったのを見て、俺はコアルームに向かって歩き出した。



  

 メルさんのダンジョンコア見学は特に何事もなく……というより入るなり「これは違いますね」の一言で終了となった。

 俺にはまったくわからないが、波長とかそういうものが違うらしい。


 コア見学が一瞬で終わったことで歓迎会までの時間ができてしまった。なので、森林エリアや農地・草原等今まで作った疑似世界を見学してもらった。

 しかし、それでも時間が余ってしまった。個人的にはダイニングルームでコアさんの調理を眺めているのも悪くない。

 だが、メルさんがダンジョンを操作するところをみたいといったので、いい機会だから前々から作りたかったあの施設を、実演をかねて作ろう。


「メルさんシェルさん、ここが高山エリア……というより当ダンジョン自慢の温泉エリアでございます」


 海洋エリアの見学が終わった後、直通のポータルを通って俺には見慣れた風呂場に到着する。

 入った瞬間、隣から感嘆の息が聞こえた。もちろん発生源はメルさんがもらしたものだ。


 最初に作った時は崖の上に源泉、そこから滝のように下の大きな湯舟に入るメイン浴槽と打たせ湯。それにぬるま湯と水風呂の3種類くらいだったんだが

 アマツが最初に入ってからというもの、やたら風呂が気に入ったらしく事あるごとにねだってきてなぁ……


 足湯に寝湯に立ち湯などなど、DPをあまり使わなくても浴槽を拡張してお湯を流すだけでできる湯舟はあらかた作ってしまった。

 そこにククノチの監修で観葉植物を生やし、最後に俺の凝り性と悪乗りが合わさった結果、地球の温泉施設が素っ裸で逃げそうなそれはもう風光明媚な温泉ができあがってしまった。

 なんせ、DPさえあれば大きくし放題だし、日々のメンテナンスも保全機能を使えば一瞬で終わるし。


 だが、それなりの温泉施設なら大抵あるはずのサウナはまだない。

 基本的に区切ってお湯を張ればいいだけの湯舟と違って、熱源がいるサウナには相応のコストがかかるからだ。

 とはいえ新しいDP生産施設の漁業と畜産も回ってきたしそれになにより……


「主さん! サウナを作るって本当と!?」


 多分コアさん経由で話を聞いたアマツが海洋エリアに繋がるポータルから飛び出てきた。

 君はサウナの話をしてからずっと楽しみにしてたもんねぇ。

 話を聞いてから海から急いで上がり、ポータルまでの砂浜を全力で走ったのだろう、体中に砂がべっとりついている。


「ああ、本当だ。できるには時間がかかるから、まずは砂を落としてきな」


 アマツをシャワーに向かわせて、こちらは早速作ろう。

 作る場所は以前考えていた源泉からメイン風呂に流れる滝の横の崖をくり抜いてサウナにしよう。

 まずは崖の中に六畳間位の穴を空け、人が通れる通路を開通させる。

 

 崖の岩壁が突然消えて、部屋ができた事にメルさんが驚きの声をもらす。

 そうそう、そういう反応が欲しかったんだよ。ダンジョンモンスター達はそれが普通だったからか、温泉を作った時も平然としてたからな。


 だが、ダンジョン生成ですごいのはここからである。

 まずは魔法の赤い光源を天井に設置し、座れるように段差を設置してから床素材を「木材」に設定すると光の粒子が床を包み込む。

 さらに部屋の片隅にサウナストーンを積み上げるように召喚し、床にDP消費で動く熱源を設置すればサウナの完成だ。


 俺にはもはや見慣れたものだが、光が収まり床が石材から木材に変わったサウナを見て、メルさんが異様に興奮しだした。

 いや、部屋の中を指さし、俺の肩をたたきまくって「どうやってるんですか!?」って聞かれても……私にもわからん。

 コアさんにでも聞いてくれ。ちゃんと答えてくれるかは保証できないがな。

 

 あのコア、何かを隠してるのは間違いないけど、どう聞いてもはぐらかされるんだよな。

 ただ、騙して悪事に加担させるとかそういうたぐいでもないし、不利益があるわけでもない。

 今は俺達が日々楽しく過ごせるようにダンジョン拡張してるだけだし、必要な時が来たら向こうから言ってくれるだろう。


「主さーん! サウナできたかやー?」

「ああ、できたぞー。ちょうど室温も上がってる頃だぞー」


 ドアを作りサウナストーンが程よく熱せられ部屋の気温が上がってきたと思うころ、シャワーを浴びたアマツが小走りで走ってきた。

 そのまま俺たちの横を通り抜けてサウナのドアに手をかける。


「わかってると思うが、奥の積んである石には触るなよ。ヤケドするからなー」

「はーい!」


 返事をするとアマツは部屋の中へと消えていった。さてさて最初は何分持つかな?

 

「さて、メルさん。まだ時間もありますしせっかくですから入浴してはどうですか? 湯あみ着は用意しますよ」


 メルさんは俺たちのノリについていけずにちょっと引き気味だったが、入浴できると聞いて持ち直したようだ。 

 まぁ、それもサウナの暑さに負けたアマツがサウナから飛び出し、「差分」を思いっきり揺らしながらダッシュして水風呂に飛び込むまでの短い間だったけどね。

 

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