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1-6 魔法のやり方は世界の数だけある。この世界じゃそうなんだよ!

 さて、外で寝るのが問題ないとすればこのまま川に向かって今夜は付近で一泊。

 というのも悪くはないんだが、一つ問題があった。


「向こうで寝るとなると、明かりがないんだよな……」


 そう、今の俺は火種を持っていない。こういう時物語だとライターは持っていて火はなんとかなるケースが多いが、あいにく俺はタバコは吸わないので普段持ち歩いていない。

 無論俺は現代人なので、火打ち石とかに使える石とか使い方は当然知らない。


 召喚ウィンドウを開いてライターやマッチをチェックする。うーん、あるにはあるんだがリンとか化学物質っぽいものを使ってるせいか、お高くて召喚できない。

 まぁ、今は夜になってもやることがないし即寝てもいいかな。そう頭を切り替えた時だった。


「ふふふ。明かりがほしいなら、マスターにとってファンタジーな解決案があるよ」


 困ったときのコア先生は既に解決案を見つけ出していらっしゃる。流石だ。


「コア先生、ファンタジーな解決案とはなんでしょうか?」

「魔法を使うのさ」


 魔法! 異世界に行ったら100人中100人が使ってみたいと思うアレの事か!?

 でも魔法こそ相応のDPを使わないといけない気がするんですけど。

 

「マスターの元の世界だと幻想やおとぎ話の中の物だったけど、やり方さえわかれば簡単に使えるようになるレベルの知識だよ。つまり元の世界だとたまたま誰も魔法の使い方を発見できなかった。という事じゃないかな」


 魔力とか別の問題があるから誰でも使えるわけじゃないけどね、とコアさんは続ける。

 魔法ってそんなに身近にできるようになる存在だったのか!?

 確かに昔の西洋とかだと魔女狩りとかの歴史があるが、実は本当に魔法はあって適性がない連中がよってたかって火あぶりにしたので、ロストテクノロジーになっちゃったとか……?


 いや、まぁそれは今はどうでもいい話か。とりあえず元の世界では、魔法に関してコロンブスになれた奴はいなかった、ということにしておこう。


「もっともマスターの今の魔力だと、せいぜい指先から小さな火を短時間だせるだけだろうけどね。まさに爪に火を灯すってやつさ」


 上手いことを言いおる。とはいえ小さな火でも種火にはできるだろう、これで明かりの問題も解決したといっていい。


「それじゃ、川に行って体を洗ってくる。帰りは明日になると思う」

「2日目にして朝帰りかい? お土産は忘れずに持って帰ってきておくれよ」


 いやいや、夜の森を歩きたくないだけですって。





「ふぃ~、ようやくさっぱりした」


 水深が膝くらいまであるところで座って休む。

 ちなみにTシャツやパンツは既に洗ってその辺の木にかけて干してある。

 

「空が青いなぁ……」


 空を見上げてつぶやく。昨日は疲労やDPの残量が気になって気が付かなかったが、改めて空を見上げるとどこまでも青い空が広がってた。


 そう、いくら見渡しても青く、地球にあるはずのあるものがない!

 

「雲がないのはともかく、太陽が見つからない?」


 しかし、この森林エリアは太陽がないのに空からは青い光が降り注いでいる。そういえば昨日コアルームに戻る直前には部屋が赤くなっていた。

 だから夕暮れだと思っていたのだが太陽がないとわかった今、あれはなんだったのかと思い返す。


 いや、そもそもここの1日1か月1年は地球と同じなのか?

 昨日は異世界に飛んだ実感がわかなくてまったく気にしなかった。


 しかし心の整理がついてきた今、今後の生活のために地球との違いを知っておく必要があると認識できるまでには頭が回るようになっている。


「なぁコアさん。この世界の1日って何時間なんだ?」

「その答えなら管理ウィンドウを見るのが早いんじゃないかな?」


 言われて管理ウィンドウを開き、森林エリアの詳細を確認する。

 面積、気温、湿度、風力、時間当たりのDP消費量、それらにまざって日照時間と夜間時間の項目があった。しかも操作できるみたい。


 つまりこれはこのダンジョン内ならエリア毎に1日を何時間にでも俺が決められるって事なのか!

 ダンジョンの外はどうなっているか知らんが、少なくともこの森林エリアは地球に合わせておいた方が何かと都合がいい。


 しかし、1日の長さも自由に操れるとかダンジョンマスターってほんとすごいな。

 ダンジョン内限定とはいえまさに神の能力を得たような気分だ。もっとも食べ物を集めないとすぐに干からびて死んでしまうし、何をするにもDPが必要になってしまうが……


 しかし、食べ物ねぇ……

 そうだ!! こんだけ条件がいいなら!


「――へっくし!!」


 いかんいかん。水につかったまま考え事をしてたせいで、十二分に体が冷えてしまっていたようだ。

 今、風邪を引くのはまずいので早く川から上がることにしよう。


 川から上がった後に召喚ウィンドウからボロを出す。着心地は最悪だが、今干してるものが乾くまでのガマンだ。


 さて、昼を食べてからかなり時間が立っている。そろそろ日没(?)になってもおかしくない頃合いだろう。まだ明るい内に寝床と火を起こす準備をしないといけないな。





「よし、こんなもんかな?」


 河原の近くの空いたスペースに草をかき集め、その上に襤褸を敷いて仮の寝床を完成させる。

 そして薪になりそうな枝を集めて石窯代わりに円状においた石の中心に置く。

 風を吹かす気がないので草や枝に重しが不要なのは楽でいい。


 空を見上げると空全体が赤くなり始めていた。青色の光をだしていたスポットライトが徐々に赤色に変わっていくような感じだ。

 地球に居たころと比べると、違和感がすごいが気にしないことにする。


 手ごろな石に腰かけて目を閉じ強化ウィンドウを表示する。

 知識の強化一覧から魔法(基礎)を選んで強化対象を自分に選択する。確かに基礎は以前の食用可否の知識よりちょっと多い程度のDPで済んだ。


 さて、これで魔法の使い方がわかるようになったはずだ。

 うん、思い出す感覚で魔法とは何なのかがわかってきた。


 そのまま瞑想して精神統一をする。以前だったら、例え何時間続けていてもただ目を閉じているだけだったり雑念が纏わりつくだけだっただろう。

 しかし今はその先を知ってしまった。


 何かをやり遂げる意思の力を精神力とか言ったりするが、さらにその先「意思の力を現実世界に出す力」の事をいわゆる魔力と呼ぶのだろうという事に。


 人差し指を立てて指先から火が出ているイメージを強く持つ。

 後はそれを意思なり言葉なりで発現すればいいだけだ。


 ――出ろ――

 

 そう強く意識してからゆっくり目を開ける。見えてきたのは暗くなってきた背景、俺の人差し指、そして指先からともるマッチで出したくらいの……火。


「ほんとに……出た」


 自分の指先に灯る火を見つめて呆然とつぶやく。こんなマッチ棒に火をつけた程度であっても、初めて魔法を使ったことに変わりはない。

 ほんとに出せちゃった、俺ってすごい!


「ねぇマスター、初めての魔法に感動してる所悪いんだけどさ」


 脳裏にコアさんの声が響く。もう少し感動にひたりたかったのに、いったい何なんだ?

 そう思ったのもつかの間、指先に灯っていた火がフッと消えた。


「マスターの魔力は少ないから早く火をつけた方がってもう手遅れか、今日は明かりなしで寝るしかないね」


 ……やっちまったー!?

 その後、同じように精神統一して念じてみても指先から火が出ることはなかった。

 クソッ、これが「MPが足りない」ってやつか!?


 結局その日はもうふて寝するしかやることがなかったので、さっさと寝ることにした。

 ちょっぴり襤褸からはみ出た草がチクチクして痛かったが、それなりに柔らかかったので良しとしよう。


知識が強化されました!

 →魔法が使えるようになった!


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魔法の仕様は予告なく変更する場合がございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 簡潔にわかりやすくシステムの説明をまとめている 一話辺りの文量も程よく苦にならない読みやすさ [気になる点] 本題に入るまでの説明パートの長さ クセの強い主人公 [一言] これからも頑…
2020/07/21 19:45 退会済み
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