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5-7 海底改造計画

 塩田の手入れも終わって温暖の海洋エリアに戻ってきた時、すでにアマツが人魚形態のまま白浜に座っていた。


「なんだ、戻ってきてたなら教えてくれてもよかったのに」

「ウチもちょっと休憩っちゃねー」


 少し苦笑をまぜた顔でアマツがこちらを向いて答えを返す。俺を引っ張って泳いだり、雷魔法を使ったりしてたから流石に疲れちゃったか。 

 そのままアマツの横に腰かけ、アマツの方を向く


「んじゃ、俺ももっかい休憩。で、魚達の願いはどうだった?」


 俺がアマツに頼んだこと、それは魚達の願いを聞いてまとめる事。

 要件は魚達に伝えたから、アマツの補助がないと海の底にいけない俺が一緒に行く必要もない。アマツが聞いてまとめておけば余計な手間も増えないだろう。

 

「バッチリ聞いてきたっちゃよ!」


 いつも通りニコッと笑ってサムズアップを返してくる。実に頼もしい。

 そのまま目線を上げて指を口元に当てて思い出そうとする。

 うーん、メモくらいは渡してやるべきだったか? でも水中でメモって書けるんかな? そんなものがあるとしても、あくまで人が行ける範囲を想定してるだろうし海底はどうなんだろう?


「まずはもっといろんなものを食べてみたいっちゅーのが多かったよ」


 ふむぅ、コアさんの影響があるのか知らんが、ウチのダンジョンに住む魚はなかなかグルメのようだな。


「次にもっと安心して寝れるところがほしいって」

「うーん。俺はそこまで魚の生態は知らないから、そのへんはお前に頼っていいか?」

「もちろんっちゃ!」


 知識を強化すれば問題ないけど、アマツがいるなら頼るほうがDPにもアマツにもいい。


「後は……決まった水の流れを作ってほしいって言ってたっちゃ」


 決まった水の流れ……海流か? 確かにその辺りの事はまったく考えてない。

 これもどういう海流がいいのかわからんから、完全にアマツ任せになるな。


「それから、彼女がほしいとか彼氏がほしいとか……」

「あー、その辺は召喚しても結局は本人次第だって言っとけ」


 そんなピンポイントな召喚できたら俺がやりたいわ! それはともかく、大体願いはわかった。

 立ち上がって尻についた砂を払い、アマツに向かって手を差し出す。


「よし、そろそろ行くか。今日中に終わらせちまおう」

「うん!」


 アマツが俺の手を取り、立ち上がろうとしたので


「そぉい!」


 そのまま海にぶん投げると、アマツは空中で綺麗に一回転して頭から海に飛び込んだ。

 俺も三度障壁を張り、アマツが待つ海へと向かった。




 今回は作業が中心となるので、まだ水深が浅い所から潜ってみた。浅い所は青い光がよくとおっているためか、ただでさえ綺麗な水がさらに輝いて見える。さらに下、一面の白い砂や岩も青く見えるほどよく輝いていた。


 んー? 一面の白い砂や岩? テレビでよくみるダイビングの映像だともっといっぱい海藻とか……そう! サンゴだ! サンゴがあった! あれって確か魚のエサの元になるなんやかんやが住み着くんだったかな?


 そうじゃなくてもサンゴがあれば、今後みんなでダイビングする時にも観光資源として力を発揮してくれるだろう。

 召喚ウィンドウからサンゴを何種類か選び、適当に配置する。

 

「おー、主さんこれはなんね? 色とりどりで綺麗っちゃねー」


 アマツができたてのサンゴ礁の上を泳いで回って聞いてきたので、うろ覚えの知識をアマツに伝授する。


「一応こいつも時々様子を見てくれ、必要ならサンゴの生態に関する知識を入れるから」

「わかったっちゃ!」

 

 その後も熱帯や寒冷の海洋エリアに漁礁やサンゴ礁を仕込み、ついでにプランクトンも増量しておいたのでこれで食料の種類については達成できたかな?


 後は寝床と海流だが、これはもうアマツの采配に任せることにした。

 アマツが水魔法で俺を移動させ、


「主さん、このへんをもっと柔らかい砂にして海藻を付けてほしいっちゃ」

「ほいよー」


 硬い岩しかない海底を指さしたので、拡張ウインドウから岩を砂場に変える。

 後は適当に海藻を生やして……


「こんな感じか?」

「そーねぇ。後は実際につかってもらってからっちゃねぇ」


 こんな感じで寝床を数か所作ったり、


「主さん、この辺りにこう、こーんな水の流れがあると泳ぐのが楽になるっちゃよ」


 両手を左から右に動かし、体いっぱいのジェスチャーをして説明するアマツ。かわいい。

 でも、海流かぁ。地球だと海流ってどうやってできてんだ? まぁ、ここは異世界だし別に地球に習う必要もないだろう。


 というわけで罠で作ってしまおう。突風の罠を使えばいけるかな?

 とりあえず巨大サーキュレーターのような突風の罠を置いて試してみることにした。

 

 結構な音を立ててサーキューレーターが起動すると、周囲を泳いでいた回遊魚達が寄ってきて海流に乗って泳いでいく。

 うーん、これはこれで目的は達成してるんだけど、魚達がプロペラ部分に巻き込まれそうで危ないし、何より美しくない。なんか他に方法はないもんか……


 アマツや他の魚達が海流に乗って泳いで戻るを繰り返して遊んでいるのを、心のカメラに焼きうつしながら考える。絵になるなぁ。

 

 ……そうだ! プロペラ部分が危ないならプロペラを取ってしまえばいい。つまり……羽なし扇風機だな!

 一度出したサーキュレーターを消して、罠のカスタマイズ機能を利用して羽なし扇風機型にして設置しなおす。


「……できた!」


 見た目は完璧に羽なし扇風機だが、地面に固定するために突き刺さるように伸びた棒と、何より大きさが違う。直径が2車線道路のトンネルくらいある。

 うむ、大分静かになったし、なんか近未来っぽくなって見た目も大分よくなった。何よりくぐればいいので連続で置いてもよける必要がない。


「よし、アマツ。必要なところにこれを置くから俺を運んでくれ」

「わかったっちゃ!」


 アマツに導かれるままに扇風機の中央をくぐると、大体20メートルくらいは海流に乗っていただろうか?

 とりあえず海流が弱くなったと感じる間隔で設置していく。

 

 なんの気もなしに後ろを向くと、沢山の回遊魚達が後ろをついてきていた。流石にシメられたからか障壁をつついてくることもなく、只々後ろを泳いでついてくる。

 せっかくなので横を泳いでいたアマツに魚達も並走してもらうように頼むと、ほどなくして俺たちは魚達に取り囲まれた。


 綺麗な水の海の中、降り注ぐ日の光、背景には作りたてのサンゴ礁に近未来的な扇風機。トドメに並走する魚達。

 これ素敵バロメーターが振り切れる奴や! もっと俺の魔力が強くなって障壁を強く維持できるようになったらみんなもつれて来よう!

 

「よし、これで終わりだな」


 海流が1周するように扇風機を設置してみた。今回罠を作ったDPと常時運用による維持費はかなりの額だが、今後ここから入ってくるDPや食材の事を考えると先行投資と思えば痛くもない。


 後は魚達に実際に使ってもらって問題がでたら、また直せばいい。うん、とりあえず今日のところはこんなもんだろ。

 

「おーい、アマツー。そろそろ撤収するぞー」

「はーい」


 帰るためにアマツを呼び寄せると、なぜか俺たちに話しかけた魚がついてきた。

 

「ん? どうした? なんかダメなところでもあったか?」

「なんか、一緒についてくって言ってるっちゃ」


 え? なんで? 

 俺の疑問に答えるかのように、アマツが魚の言葉を翻訳してくれた。


『私に……神託が下りたのです』


あの扇風機ははたして近未来といえるのか・・・?

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