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5-4 海の中へ

 朝飯と定例のミーティングを済ませたのち、俺とアマツは温泉を経由して海洋エリア(温暖)に入る。

 ここもアマツに任せてからあんまりきてなかったなぁ。


 気候が温暖なだけあって、水着でも暑すぎず寒すぎず丁度いい気温なので日光浴にはもってこいだな。

 まぁ、今日は海中に入るのが目的なのでしないけど。


 軽く準備運動をしている俺の横をアマツが駆け抜けて海に飛び込むと、人魚形態に戻って水面から顔をだして手を振ってきた。


「主さん、早く早くー!」


 急かすアマツに押されるように歩いて海に入り、膝くらいまで浸かったところで立ち止まる。

 

 それじゃあ、始めますか! 

 集中して魔力を練る。自分の中心から水をはじく障壁が広がるイメージを!


「障壁展開!」


 自分の中心から透明な壁が広がっていく。

 それは水だけを押しのけて広がり、直径2メートルくらいの玉になった。


「よし、うまくいったな!」


 そう、俺にはこの手があった! やっぱりこの能力を取っておいてよかった、戦闘時以外でも使い勝手が良すぎる。

  

「おおー! これで主さんも一緒に行けるっちゃね!」

「ああ。でも最初は本当に大丈夫かどうかゆっくり確認しながらだぞ? もし障壁が水圧に耐えられなかったら、すぐに俺を抱えて陸にあがってくれよ」

「了解っちゃ!」

 

 腰が水面の下に来るくらいまで歩き、そこから先はアマツの水魔法で運んでもらおう。

 ダイビングは地球でも経験がない、海の底に何があるのかとても楽しみ!



「主さん、そろそろ潜るっちゃよー」


 沖に出て数分、俺が入ったウォーターボールのような障壁を運んでいたアマツが声をかけてきた。

 

「いよいよか、よろしく頼む」


 浅瀬で潜水を試した限りでは問題なかったので、ついに本番か。

 水がウォーターボールを包み込むようにまとわりつき、手で押し込むように海へ沈めていく。

 思わず上を見上げると徐々に水面が遠くなり、どんどん深く沈んでいくのがわかる。


 まずは、呼吸のチェック。よし、問題なくできる。

 障壁も大丈夫、水圧で何かしら影響があるかと思ったがまだビクともしない。

 魔力も十分練りこんであるから、少なくとも一時間は例え俺が気絶しても消えるという事はないはずだ。


 横を並走していたアマツに問題ないというサインを送ると、アマツが嬉しそうにサインを返して来た。

 あらためて進行方向、正面下側に視線を移し……


 透明な障壁の向こうに広がる世界は、俺の想像をはるかに超えていて……


 まるで雨上がりの青空のように、どこまでも見通せるほど澄みきった青い水。

 そこから見える海底も遥か彼方まで続いているのが見え、空を飛んでいると錯覚する程。

 そして、そんな世界を自由に泳ぐ色とりどりの魚の群れ。

 

「ビューティフォー……」


 水の下に広がる光景にただただ感動するしかなかった。


「主さん、主さん!」

「……っ! すまない、ちょっと感動しすぎてな。どうした?」


 呼ばれてアマツの方を向くと、アマツはちょいちょいと俺の頭上やや後方を指さし


「ほら見て主さん! みんな歓迎してくれてるとよ!」


 へぇ、言われて見ればアマツの周りにも魚が集まってきているが、これは歓迎されているのか。悪い気はしないな。

 手を振って伝わるのかはわからんが、とりあえず挨拶をしてみるべく、俺は上を見上げ……


「うぉっ!?」


 スイミーのように大きな魚群を作ってゆっくりついてきてくれてるかと思いきや、エサをあげる時のコイのように口をパクパクさせて、ビッシリ障壁に張り付いてつついてるのは予想外だったわ。


 これは、思った以上に歓迎されてるのか、それともただ物珍しいだけなのか……


「いや、ちょっと待ってくれ! あんまり障壁に衝撃を与えると……」


 この障壁、持続時間を重視してるから強度はあんまり強くないんだよ!

 言葉も言い終わらぬうちに、魚がつついていた障壁の一部にヒビが入った。

  

「あっ」


 思わずハモる、俺とアマツの声。

 俺たちが思考停止している間にもヒビが入って弱くなった部分から、水圧に負けてどんどんヒビが入っていく。

 あはは、放射線状に広がっていくヒビがきれいだなー。


 って違う!


「うっわ、やべぇーー!! ちょっとアマツ、早く上げて! 緊急浮上! 早く!早く!(ハリー!ハリー!)


 このタイプの障壁を張りなおすにはいったん消さないといけないから、ここでそれをやったら溺れちまうんだよぉ!

 

「みんな、そこどいて! 主さんが通るっちゃよ!」


 今までゆっくり沈んでいたが、ベクトルを反転させてロケットのごとく水面に向けて急加速!

 同時に魚たちがばらけて進路ができ、その中を一気に浮上する!


「うぉぁー!」


 一気に体にかかった加速で思わず障壁に激突するが、障壁はなんとか耐えてくれた!

 俺が入ったウォーターボールは魚でできたトンネルを潜り抜けて、潜水艦が浮上するように水面に顔を出す。


 よ、よかった。ここまでくれば大丈夫だ。

 いったん障壁を解除するとアマツが俺を抱きかかえて陸に向かって泳ぎ出し、ほどなくして俺たちはスタート地点である白浜に帰ってきた。

 

 アマツは俺の足が地面に付くところまで運ぶと手を離したので、俺は少しよろけながらも水から上がって座り込む。

 

「主さんはここで休んでてほしいっちゃ」


 振り向いた俺に水面から頭だけ出したアマツが話しかける。確かに魔力を使ったのでちょっと休んで回復したい所だったから丁度いい、


「じゃあ、お前も休んだらどうだ?」


 しかし、アマツは首を横に振ると


「ウチはちょっと先に行って、あいつらシメてくるっちゃ」


 少し怒気を含む声でそう答えると、潜って行ってしまった。


 ……シメるって、殺す事じゃないよね? 

 でも、もしそっちの意味でシメるんなら久しぶりにシメサバ食べたい。


 アマツが戻ってくるまで、俺は食べたい魚料理を想像しながら魔力回復を待つのだった。

 

シメサバ食べたい

別にサバじゃなくてもいいけど

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