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5-3 朝風呂にて

「ふぃー、やっぱり朝風呂は最高だぁ~」


 温泉を作ってからというもの、朝風呂に毎日入るようになった。温かい湯に浸かって軽く顔を洗うと、まだ眠気が残っていた頭も段々覚めてくる。


 肩までつかり、風呂のフチに頭を乗せて足を延ばし体から力を抜く。ゆっくり目を閉じて湯の温かさと風呂に落ちてくる滝の音を体全身で感じると、湯と一体になった気分にさえなる。


 はぁ~癒されるわ~、溶けそう~。


「主さん、おはようっちゃー」

「おーう、おはようさんー」


 脱衣所から入ってきたであろうアマツに目を閉じたまま挨拶を返す。


 アマツは最初に温泉に入った日からすっかり風呂が気に入ったようで、海洋エリアから戻ってきた時はもちろん、暇なときはよく風呂に入っているようだ。さらには彼女も朝風呂を日課にしているようで、同じ時間に入る事も珍しくない。


 全員で入ったのは最初の一回のみで、その日以降は自由に入っていいという事になっている。清掃もダンジョン保全機能であっというまに終わるので、正真正銘の二十四時間稼働する温泉である。

 一応脱衣所も男女別にしっかりわけた。


 少し首を傾けてちろっと目を開けると、シャワーに向かって歩くアマツの姿が見えた。

 歩くごとに彼女が持つ身長に対して不釣り合いな果実が揺れ動く。そう、最近彼女……というよりオルフェを除く三人。いや、コアさんは元からほとんどつけてなかったから二人か……は、いつころからか湯あみ着を着なくなった。

 

 きっと、お互いに慣れてしまったのだろう。俺自身も最初こそ欲情しかけたこともあったが、今はもう美術品を見るような感覚になっている。重要なのはしぐさやシチュエーションであって、裸そのものではないということが身に染みてわかった。

 

「主さん。隣、失礼するっちゃねー」

「おうよ」


 シャワーを浴びたアマツが一声かけてメイン風呂に入ると、人魚形態に戻って俺の近くまで泳いでくる。

 アマツの下半身……魚部分の鱗が青空の光を反射して青緑色に輝く。それは鱗の一枚一枚がエメラルドのように輝いていて、芸術に疎い俺でも美術的価値があるんじゃないかと思う程奇麗だ。


「んー? うちの下半身ばっか見てどうしたね?」

「いや、いい鱗だなーと思ってな。光に照らされてると特にね」


 素直に褒めると、アマツは「えへへー」と顔全体の筋肉を総動員しないとできない大きな笑顔を返してきてくれた。カワイイ!

 思わず手が頭に伸びてなでてしまったが、アマツは嫌がるそぶりをみせなかったのでそのままなで続ける。地球だったら事案だろうが、ここにはそんな法律などない!


「んふふー、主さんに嫌われてなくてほんとに良かったっちゃよ」


 え? 俺がいつアマツを嫌ったんだ? この前溺れかけた件があってから、しっかりコミュニケーションを取ってるつもりだったんだけどなぁ。


 アマツはすねたとも悲しげとも取れる表情を浮かべると、


「だって主さん、ククノチやオルフェんとこにはよく手伝いに行ってっけど、ウチのとこには一度もきてないもん」

 

 ぷいっとそっぽを向いて文句を言ってきた。だが、すぐにこっちに向き直り。


「でも、それはウチの思い違いだったんじゃね。主さん水の中で呼吸ができないんじゃ当然っちゃ」


 そういって少し寂しさをまぜたような苦笑を浮かべてきた。


 うーん、確かにククノチやオルフェに対しては種まきや餌やり、せん定や家畜の世話などなど人手が足りなくなったらコアさんも含めて手伝いにいっている。

 だが、アマツは場所が場所なのでやった事といえば陸から餌を投げ入れるか、監視ウインドウを使って遠隔で操作するくらいだった。


 アマツがそう思っていたのなら、なんとか一回は行ってやれないもんか……まずは地球で水中に潜れる方法を考えてみる。

 潜水艦はまだ論外。酸素ボンベを出す位ならいけない事もないが、それを使い捨てられるほどのDPはない。さらにダイビングの知識やスキルが必要だし、水圧や潜水病、窒素中毒のリスクもある。うーん、それらを総合的に考えるとやめたほうがいいという結論になってしまった。


 ならば次はファンタジーな方からアプローチしてみよう。

 真っ先に上がるのは”水中呼吸”のスキルがある。これは文字通り水中から酸素を取り込めるようになるんだと思う。ただし、水中で呼吸できるようになったらもう人じゃなくなるからか、必要DPがお高くて無理だった。

 それに水中で呼吸できるようになっても、海水が目にしみそうだから嫌だ。

 他には俺が水生生物に変身する能力を持つという方法があるが、どうやらアマツと違って後天的に能力を付けようとすると必要DPが増えるのか、こちらも手が届かない。


 むぅ、やはりまだ無理なのか。何か、何か他に手は……俺ができることはないのか?


「あっ!」


 思わず立ち上がってしまい、その時に飛んだ水しぶきがアマツの顔面に直撃してしまったが、アマツはまったく動じずにこちらを見ていた。さすが人魚。

 違った、感心してる場合じゃないや。


「あったぞ、俺が海の中に行けるかもしれない方法が!」

「ほんとかや!?」

「ああ、でもこの方法はお前の力が必要だぞ」

「任せるっちゃ!」


 満面の笑みを浮かべてこちらにサムズアップしながら、元気よく返事を返してくれる

 ホントにこの子は感情が豊かで素直に反応を返してきてくれるから、話していてすごく楽しい。ちょっと方言で戸惑うこともあるけど、そこはご愛敬ってやつかな。


「よし、それじゃコアさんのうまい朝飯を食ったら、今日は海洋エリアに行くか」

「うん!」


 アマツと話してたらお湯で体もちょうど良く温まった。今日やる事も決まったし、そろそろ朝ごはんの準備もできたころだろ。

 風呂から上がって今日の作業にそなえるとするか!


ちょっと短いですがキリがよかったんや


スーパー銭湯に泊った時の朝風呂、私は大好きです。

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