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1-4 見たことがない食べ物を食べる時は勇気がいるよね

「おかえり、ようやく知識を強化できるだけのDPがたまったよ」

「ゼェ! ……ああ……俺は……ハァ……やったよ……本当に……ハァ……頑張ったよ……」


 チクショウ! 結局、日が沈むまで飯が食えなかったじゃないか!


 ダンジョンルームに戻るなり、膝をつきそのまま仰向けに倒れこむ。

 ああ、俺は頑張ったよ。たぶん今日一日で今までの日常の3か月分は動いた気がする。なんにせよとにかく飯だ、流石にもう気力でカバーするのも限界に近い。


 仰向けのまま強化ウィンドウを開き知識の強化をする。DPがまたギリギリになったが、今はいっぱい木の実をとってきたし問題はないだろう。

 そのままうつ伏せになるように回転し、木の実を一つ手に取って見つめる。


 ……わかる。今まで木の実Aとしてしか認識してなかったものが、忘れていた名前を思い出すように名前がはっきりわかり、直感的ではあるがなぜか確信をもってこいつは食べられるという感覚がわいてきた。


 とりあえず一種類ずつ並べてみる。取ってきた木の実は全部で8種類、その中で食用可能判定がでたのは4種類だった。

 アブねぇ! 1/2の確率ではずれを引くところだった、空腹に任せて漢識別しなくてよかった! 命がかかってる状況で50%のロシアンルーレットとかリスクがでかすぎだ。


 とりあえず食える木の実だけを並べてみると


 イマウトルニ

 最初に取ったコアルーム近くに群生していてリンゴににた見た目をしている。

 ただし色は白い。コアルームに近かったので一番数を多くとってきた。


 イズマソク

 巨峰くらいの大きさで色も巨峰に近い。なんか漢方薬のようなにおいがする。


 イナガジア

 見た目はラズベリーに近いが大きさが2倍以上ある。


 ドクリンゴモドキ

 探索中に見つけたから取ってきたんだけど……

 蔓からぶら下がるように実がなっていて、しかも見た目は完全にみかんなんだけど。

 いろいろおかしいぞお前、進化手順間違えたんじゃないか?


 ちなみに食べられない木の実判定の中にドクリンゴがあった。見た目はこちらも完璧にみかんだった。

 食べられない木の実は例外なく迷宮の胃袋送りになる。俺は食えないがコアさん曰くDPに変換するには問題がないとのこと、悪食で助かった。


 ということでようやく、ようやく! 念願の食事タイムだ!

 最初に一番数が多いイマウトルニをかじる。


 ……しぶい。

 食べられないほどではないが好んで食べたくはない、そんな感じだ。ただ、今は相当な空腹状態なので多少我慢して完食する。


 さて次にいこう、イズマソクを手に取り一口かじった。


「ぶはっ! ……オエッ!! グエェェ!」


 なんだこれ! なんだこれ! くそまじいいいいぃぃ!!

 思わず吐き出し悶絶し絶叫する。

 なんというか昔どこぞのTV番組でやっていた、苦渋と辛酸を抽出したものをソムリエに飲ませていたが、多分これはそれをミックスしたような感じだった。

 ただただ苦くて渋くて辛くて酸っぱい。それらがまざりあって味という概念を超えて苦痛として襲ってくる。そんな感じだった。流石にこれは例え餓死寸前でもノーサンキューだ。拷問用にはいいかもしれんが、いくら体に支障がでないといってもこれが食用可能判定なのはどうかしている。


「フラグ回収乙、というやつだね」


 しゃべってないからセーフだと思ってたが異世界だと思っただけでも成立するらしい。コアさんの問いかけに答える気力はなかった。

 とはいえ、飯は食わねばならぬ。味に対する期待値を大幅に下げながらも、ようやく苦痛が収まってきたのでイナガジアを一口かじる。


 瞬間、かじった場所から果汁が漏れ出る。俺は反射的に果汁を飲む。


「味がないな……?」


 まさかさっきのイズマソクの実のせいで味覚障害になったのか!? しかしここは異世界、味がない木の実があっても不思議でないと思い返す。味があろうとなかろうと水分が多いこの実は水筒の代用になりそうだ。

 これは明日は多めに取っておきたい木の実になった。


 最後にドクリンゴモドキを眼前に置く。名前はリンゴだが見た目はみかんなのでとりあえず皮を剥いてみると赤色のスイカっぽい果肉が見えた。

 もうこの時点で不安しかないが食用可能のはずだし死ななきゃ安いの精神で覚悟を決め、スイカっぽい果肉を一口かじる。

 ……果肉は柔らかく、舌で転がしてみるとイチゴのようにつぶつぶしてる。おまえつぶつぶ要素なんてどこにあったんだよ?

 転がるうちに果肉がほどけ、果汁が舌に触れて脳に味を伝えて――


「……あんまぁーい!」


 あーちきしょー! いい意味で裏切られたぜ、なんだよお前やるじゃん! でも味がブドウっぽいのはどういうわけだよ! お前もう地球の果物に喧嘩売ってるよ! だが許す! 美味しいは全てが許されるのです。だから明日も貴方様を食べてもよろしいでしょうか? 拒否権はないけどな!


 ……あまりの美味さに軽くトリップしてる間にドクリンゴモドキを全て食べつくしてしまった。満腹にはならなかったが晩飯としては十分だ。ほんと最後がこれでよかった。


「よっこいしょっと」


 少し休憩を入れた後、イナガジアを取り除いて残っていた木の実を迷宮の胃袋に持っていく。木の実が床に飲まれるのを見届けた後コアルームに戻る。


「お疲れ様。今日はもう終わりかな?」

「ああ、もう指一本動かせねぇよ」


 今から森林エリアに行っても夜だろうし何より体力がもうない。改めて仰向けに倒れこんで目を閉じる。

上半身裸なので床がちょっぴり冷たい。管理ウィンドウを開いてDPをチェックし、プラスになっていることを確認する。


 ん……?

 イマウトルニ1種類だった時に比べてDPが増えるペースが速くなっていた。詳細を開いてみると6種類の木の実がそれぞれ並列でDPに変換されていた。一応確認してみるか。


「なぁコアさん、一つの食べ物をDPに変換する速度はどんなに量が多くても変わらないのか?」

「変わらないね、だからDPが増える速度を上げたいなら食べ物の種類を増やしていかないといけないね」


 うーむ、これは階層やモンスターを増やしていくほど維持費が増していくこのダンジョンにとっては足かせになるルールだな。食べ物の種類を増やしていかないとDPが増えないどころか赤字になってしまう。

 まぁ今のところは木の実だけでも十分まかなっていける。広げる時に気を付けて行けばいいだろう。


 それより仰向けで目を閉じていたのでそろそろ意識を保っているのもやっとの状態だ、今日はもう寝ることにしよう。


「もう限界だし寝るわ、俺」

「お疲れ様マスター。明日もよろしく頼むよ」


 明日もか、本当に今日はびっくりすることだらけだったわ。目が覚めたら元の布団の中にいたりしてな。

 そんな事を思いながら俺は睡魔に身をゆだねていったのだった。

知識が強化されました!

 →森林エリアに生息している植物の名前と可食判定ができるようになりました。


新規食材を獲得!

 →イマウトルニ

 →イズマソク

 →イナガジア

 →ドクリンゴモドキ

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― 新着の感想 ―
[一言] 途中のソムリエのはあれ、トリ○アの種でやってたやつですなあ。気づけたのは何人いるのやら。
[良い点]  味の表現がユニークでございます!
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