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4-8 温泉を作るぞー! 



 歓迎会から一夜明けた翌日、俺は早速海洋エリアの拡張や草原エリアの追加やそこに住む動物や魚介の召喚をした。

 そして二人に早速世話をしてもらうようになって早数日が立った。


 新しい事を始めれば新しい問題が出てくるのは当然と言えるだろう。そしてそれはいつも想定外のところから問題が出てくるのだ。

 今回の問題はアマツに関することだ、といっても本人に問題があるわけじゃない。問題があったのは彼女の仕事場、即ち海洋エリアにある。


 海洋エリアは熱帯・温帯・寒冷と3種類に増えたが、そのどれもが陸は白浜になっている。そして彼女にはそれぞれの海の中で生態系の管理をしてもらっているわけだが、仕事が終われば陸に上がって白浜を歩いてポータルに向かう。当然びしょ濡れの体でだ。

 そうなるとポータルに着くころには砂まみれになっている。洗い流すにも水場は森林エリアの川しかない。つまり、海洋エリア付近に体を洗い流せる設備がなかったのだ。


 必要な設備がない、即ちこれはダンジョンマスターである俺の落ち度。

 だから早急に体を洗い流せる設備を作る必要があった、つまりその設備とは……



「というわけで、海洋エリアから直通でいける温泉を作ります」


 一同が集まったダイニングルーム、そして夕食の後にそう高らかに宣言した。

 反応はあんまりなかった、食器を洗ってるコアさん以外はきょとんとした表情をしている。多分温泉というものがよくわからないのだろう。

 

「お、ついに温泉かい? これで温かいお湯に浸かれるようになるね」


 唯一温泉というものがわかるコアさんだけがこちらを振り向いて明るく答えてくれた。ふーむ、食器洗いは当番制であるがこれも自動化できないものかね。これも罠をうまく使えばできそうな気がする。


「温かいお湯に……浸かる?」


 若干青ざめた表情で呟くように聞いてくるアマツ。

 ん? なんだ人魚ってお湯がダメなのか? 魚なのに……いや、魚だからダメなのか? そういえば魚って何度の水まで生きていられるんだ?


「あー、まぁこれから作るから実物を見せた方が早いかな、じゃあちょっと作ってくるから見たい奴は付いてきてくれ」


 椅子から立ち上がりコアルームに向かって歩く。ふっと後ろを振り向くとコアさんを除く三人が付いてきていた。

 このダンジョンでできる事ってまだまだ少ないから暇なんだろうな。


 拡張ウィンドウから新しいエリアを設定する、今回追加するのは山岳エリアをカスタマイズしてできる岩場エリアだ。

 設定が完了するとコアルームの一角に新しいポータルが作られる、これをくぐればすぐに岩場エリアもとい温泉に入れるが……


「大分ポータルも増えてきましたねー」


 後ろからククノチののんびりした声が聞こえたので、振り向いて周りを見渡す。

 もう迷宮の胃袋を除けば全方位にポータルがある。確かに今はコアルームにほぼ全てのエリアに行くためのポータルが集まってるからなぁ……


「そうだな、ここも整理して居住用、生産用といった具合にわけたほうがいいな。まぁ今は温泉だ、行こう」


 問題を先送りにして岩場エリアへのポータルをくぐると、最初にでこぼこした岩の感触を足に感じた。

そして正面に見えた景色は所々に切りたった岩が点在するまごうことなき岩場と地平線、上を見上げれば他と変わらぬ太陽のない青空がどこまで広がっている。


「殺風景な場所ですねー」

「木も草も何もないですね」

「水もなかと」

「作ったのは岩場エリアだし最初はこんなもんだろ、温泉作って景観を整えればいい場所になりそうじゃないか」


 ここから観光地のような温泉を作ればケモミミ娘達の感想も変わるだろうし早速始めよう。

 まずは裸足でも歩けるように地面を整地する。拡張ウィンドウから地面の整地を選ぶと、窪んでいた部分に粒子が集まり、収まると窪地が平らな岩に代わる。逆に出っ張っていた部分はやすりで削られるように削られ平らになっていく。


「すげぇな……一体どうなってるんだほんとに」


 ダンジョンの細かい調整は防衛エリアでやってるけど、岩が生えたり削られたりするのはさすが異世界と言うほかない。

 

「すまんがそこも整地するからちょっとどいてくれないか?」


 入り口付近にいたケモミミ娘達にどいてもらって残りを整地すると、岩場エリアは一面の石畳が敷かれたように平らなエリアに変貌した。

 

「よし、整地終わり。すまんがケガしそうな出っ張りがないかチェックしてくれないか?」


 整地のチェックは任せて湯舟を作ろう。部屋の真ん中に大きめのくぼ地を作り、周辺を岩で盛り上げるとあっという間に湯舟っぽく見える横に広い穴ができた。とりあえず十人は余裕で入れるサイズにしておいたが、拡張するときは粘土で作ったかのように簡単に穴を広げる事ができるので、必要になったらすればいい。


 次は源泉が出る場所を作ろう。湯舟の真ん中を盛り上げてそこから源泉がわきでるようにしてもいいが、以前社員旅行で入った滝湯が素晴らしかったのでそれを再現したい。

 というわけでまずは崖から作ろう、拡張ウィンドウから湯舟の一辺を上に引き上げるとそれにあわせて岩がにょきにょき伸びて壁を作っていく。もう驚かないぞ。


 それにしても驚いてるのは俺だけなのか、後ろを向くと他の三人は岩が伸びる様を平然と見守っていた。


「なぁ、君たちはこう岩が伸びても驚かないのか?」

「え? こういうものじゃないんですか?」


 オルフェがきょとんとした表情で答える。他の二人も同意見らしい。

 これが地球で育った(?)俺とこの世界で生まれた三人の価値観の違いか。


「俺が元居た世界だとこんなことゲームや物語の中だけの話だったからなー」


 地球でこんな事ができたら石は取り放題だし、ちょっと失敗しても簡単にやり直せるから、さぞや便利な世の中だったんだろうなぁ。

 ま、こっちの世界でできる事なら遠慮なくやっていこう。高さ三メートルくらいまでの岩壁を生やし、階段をつけて上に登れるようにする。

 つけた階段を上りながら部屋の外側に向けて手を横に突き出すと、何もない空間のはずなのにある部分で壁を感じ、それ以上は力を入れても手を奥に突き出せない。前に農地エリアで試したようにここが部屋の片隅だからだ。

 やっぱり部屋の奥に見える景色はホログラムなんだろうか。そんな事を考えながら岩壁の上に立つ、そこは下と同じように整地されていた。


 整地された岩壁は包丁で切られた豆腐のように約五メートル先からスパっと何もない。ここが部屋の最奥であり、そこから先はどこまでも広がる岩場が見える。これもホログラムではあるが実にいい景色である。天気も晴天だしな。


 湯舟を作った時と同じように窪みを作り、中央を盛り上げてここに源泉を設置しよう。さらに下の湯舟に向かってお湯が落ちるように溝を作れば……


「よし、これで後はお湯をためれば一応の完成だ」

 

 源泉を設置すると湯気がふきだしてお湯が溢れ出てきた。臭いはないな、アルカリ性だからか?

 お湯は徐々に窪地にたまり、溢れた分が溝を伝い滝となって下の湯舟に落ちる。

 今まで音が何もなかった岩場エリアに滝の音が響く。うん、これだけでも大分風情がある、やはり音というものは大事な要素だな。


「源泉はさわるなよ、火傷するからな」

 

 振り向いて温泉を知らなかった三人に警告しておく。温泉卵を作るために源泉の温度は高めに設定してあるからな。滝で落として湯舟にたまるときには適温になるように調整を入れるつもりだ。


「主さん……うち熱いお湯には入りたくなかとよ」


 不安な顔で訴えてくるアマツ。

 下の湯舟に張るお湯は人間に適温になるように調節することを説明したが、まだ不安があるのか表情が暗いな。


「よし、じゃあ水風呂を作ろう。これなら大丈夫だろ?」


 水風呂の事を説明するとアマツが納得したように頷く。

 実のところ水風呂は元から作るつもりだった。会社に泊るほどではないが忙しいときは、近くの健康ランドに行って風呂とサウナと水風呂でリフレッシュするのが日課だったからな。


 皆にも風呂の良さを是非味わっていただきたい。そのためにさっさと作ってしまおう。


温泉は拡張していくので、何かアイデアがあったら感想に!

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