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4-3 続 長いわりに、なかなか結論がでない討議

「では、次に水産を担当する種族を決める。誰か意見はないか?」

「はい、まずはオーソドックスに人魚はどうでしょうか?」

「ふむ、無難なところだな……ほかに意見があるものはいるか?」


 一人の議員が手を上げて発言したところで、議長は他の意見を聞くべく周りを見渡す。

 しかし、他に誰も手をあげようとしない。


「他に意見のある者はいないのか?」


 促しても手を上げる議員はだれもいなかった。


「例えばほら……河童とかクラーケンとかいないのか?」


 ざわ…… ざわ……


「河童はやっぱりキュウリしか作らなそうなイメージが……」

「クラーケンは完璧にイカじゃないですか、それにDPが足りませんよあんなの」

「そもそも水に関わりがある種族ってあんまり知らないんですよねぇ。ケモミミじゃないし」

「……では他に意見がなさそうなので人魚で決定とする」


 馬頭が決まった瞬間と比べると、明らかに盛り上がりに欠けるまばらな拍手が返ってきた。


「では、種族が決まったところで容姿を決めよう。先ほどと同じように多数決でいいな」

「議長! 質問があります」


 一人の議員が手を上げたので発言を許可する。


「種族が人魚という事はいわゆるエラ耳という事になりますが、それはケモミミなのでしょうか?」


 ざわ…… ざわ……


「魚は獣ではないのでエラ耳はケモミミではないのでは?」

「あれはあれでいいものですよ、私はあのヌメっとしてそうな耳を撫でてみたいです」

「エルフ耳が却下されたのですぞ! エラ耳も却下されてしかるべきですぞ!」

「いや、あれはドライアドにつけるからダメだったのであって、今回は元からついてるしいいのでは?」

「ケモミミもエラ耳も地球では見ることができないものですからねぇ」

「では、これも多数決で決めましょう。エラ耳が問題ないという者は手を上げなさい」


 挙手した議員はおよそ8割、エラ耳が市民権を得た瞬間である。


「では、人魚にはエラ耳でいきましょう。次に……」


 容姿に関する最大の議題が解決したところで、その他のパーツも次々と決定させていくのだった。





「人魚のほうもこれで大体固まったな」


 馬頭と同じように集会場中央にはホログラムされた2人の女性が立っている。一人は普通の人型でもう一人は人魚型になっている。

 人魚形態だけでは不便そうなので人化能力を付け、人間形態での姿も作成したためである。


 人魚らしくということで、母なる海をイメージした優しそうな青瞳に青髪のストレートヘアーをなびかせ、それをわけるように生えているエメラルドグリーンのエラミミ。

 そこに全会一致で「海の恵みは豊穣でなければならない」との結論になったククノチ並みの巨乳に、それをつつむように水中戦を想定してホルターネックのトップスを装備させた。

 人間形態ではそれに加えて魔法使い風の衣装を上に装備させている。


 ホログラムの人魚が一周するように回ると、どこからともなく拍手が巻き起こり、やがて会場全体が拍手の渦に包まれていった。


「いやぁ、こうしてみるとエラミミ、人魚もいいものですな」

「そうですなぁ、後はこれで博多弁をしゃべってくれれば最高なんですが……」

「いえいえ、何をおっしゃいますか人魚と言えば讃岐弁でしょう」

「違う! 北九州弁がかわいくて最高じゃないですか!」

「あの、私は津軽弁がいいと思うんです」


 最初はある一部分での雑談のはずだった。しかし1度火が付いた方言談義は会場全体に炎上してしまった。


「おい、お前ら方言も設定できないからどの方言がいいか論議しても意味がないぞ」


 議長の正論も、完全に炎上状態になってしまった議員たちには届かなかった。

 やがて、言葉に詰まった議員の一人が相手を殴り飛ばし、そうして殴り合いのゴングが高らかに鳴る。

 しかし、もう話すべきことはすべて終えている。無理に止める必要もないので議長は事が収まるまで静観することに決めたのだった。





「よし、二人のカスタマイズが終わったぞ」

「おや、ようやく決まったのかい?」


 一度召喚ウィンドウから目を離して呟くと、キッチンの方から良く知った声が聞こえてきた。


「あれ? コアさんウサギ狩りに行ったんじゃなかったのか?」

「マスター、あれから何時間たってると思ってるんだい? もう夕食の時間だよ?」

「そうですー、長すぎますよー」


 時計がないからどれくらい時間がかかったのかはわからないが、腐葉土を作りに行ったはずのククノチも正面のイスに座っている。

 そして、テーブルに置いてあったはずの菓子がない。


「おい、俺の生八つ橋はどこにいった?」

「乾くといけないからククノチと一緒に食べておいたよ」 


 くそ! 結局ほとんど食べれなかった。


「それより今日の夕飯だけど、筋狼族の肉をメインにした鍋だよ。5人分用意してるけどそれでいいかな?」

「おー準備してくれてたのか。さすがコアさん」


 筋狼族の肉は予想した通り、焼いただけでは硬くてあまり美味しくなかった。しかし、肉を諦めきれなかったコアさんは数多の実験の末、肉がほぐれて自然に骨から取れる程煮込むと噛み応えが丁度よくなり、肉の旨味がよく混ざったいいスープができることを発見した!

 このスープはこして飲んで良し、鍋の下地にして良し、隠し味に使って良しと万能っぷりがすごい。

 きっと新しく入る2人も気に入ってくれるだろう。


「じゃあククノチ、新人用のイスを2つ用意してくれ」

「お任せください―」


 ククノチは立ち上がると慣れた手つきでイスを2つ用意してくれた。前より体力も魔力も上げてあるからイス2つ用意するくらいは朝飯……いや夕飯前だな。


「よし、これで準備は整ったな。それじゃ主賓に登場してもらおうか」

「”歓迎しよう、盛大にな”ってやつだね」

「歓迎するならお酒が必要ですよねー」


 ククノチそれお前が飲みたいだけだろ。

 苦笑しながらも召喚を承認すると、俺たちの目の前に光の粒子が集まってきた。

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