4-1 DP使い道会議
「準備はいいかい? マスター」
「おーう、こっちは何時でもいいから二人とも始めてくれ」
防衛エリアの1区画にて――
リンゴの大きさ位の石をもっているコアさんとククノチを腕を組みながら見据える。
二人には俺が新しく獲得した”スキル”の性能調査に協力してもらってるのだ。
「じゃあ、投げるよ!」
「えいっ!」
掛け声と共に2人が俺に向かって持っていた石を投げる!
以前なら回避運動をしないと当たっていただろう。
しかし、今の俺はもはや動く必要もないのだ!
「障壁展開!」
練っておいた魔力を声と共に発散!
イメージしていた通りに六角形のポリゴン達が俺を取り囲むように具現化する!
そして、投げつけられた石はポリゴンにぶつかり跳ね返る。
――先日の戦闘での反省点、それは俺には”盾”がないことだった。
俺の獲物は弓なので、それで受けたら壊れて矢は撃てなくなるし、前回は肩に石が当たったら痛みで回復するまで撃てなかった。
そこで、被弾する事自体を抑えるために新しく身につけたのが、先ほどの障壁魔法である。
出せる障壁は大きく分けて2種類。
1つ目は全身をポリゴン障壁で球型に囲む全方位対応型。
地球で見ていたアニメキャラの丸パクリではあるが、それ故にイメージがはっきりしてたからスムーズに具現化ができた。
今後はヤバイと感じたら、ほぼ無意識で出せるようになるまで訓練しておきたい。
もう一つは四角形のポリゴン障壁を空間に出現させる、オーソドックスなタイプだ。
敵の攻撃を防ぐのはもちろん、小さく作って足場にするなどシンプルだからこそ応用範囲も大きい。
最初にスキルとして”障壁魔法”を強化ウィンドウの能力欄から見た時、別にイメージできればスキルなんざいらないって思ってたんだけどなぁ……
でも、スキルを取る前に試しに障壁を出してみたところ、小さくて脆い壁を出すのが精いっぱいだった。
スキルのあるなしは例えるなら、空気放電で電気を送るのと送電ケーブルを使って送るくらい魔量効率に差があるみたいだ。
コアさんが以前言っていたことを体験したわけだが……
これほど差があると、ある一定以上の魔法の発動にはスキルがないと使い物にならんな。
その分、スキルとして持っておけば本当に応用は幅広い。
――俺の障壁魔法にはもう一つ、便利な使い方があるのを見つけた。
♦
「よし、それじゃあミーティング始めるぞー」
ダイニングルームでイスに座る2人に開会の宣言をし、同時に後ろに障壁を出す。
その障壁はホワイトボードのように白く、さらに日本語でこう書かれている部分がある。
”議題 筋狼族を変換してできたDPの有意義な使い方”
そう、社畜時代の職業が影響してるのか、はたまた愛読していたマンガの影響か、俺の障壁にはイメージしたテクスチャーを貼ることができた!
これ、地味だけど超便利!
ホワイトボードやプロジェクターで投影するパワポのように使ったり、障壁に具体的なイメージ図を描いて絵で説明できるのは、言葉だけに比べてすごい楽!
もちろんイメージで物の質感を再現したり、触ったらバレる所もしっかりリスペクトされている。
「議題は書いてある通りだ。先日の襲撃を撃退して大量のDPを獲得したから、2人にも防衛面生産面問わずいろいろアイデアを出してもらって、より良いダンジョンにしていきたいと思う」
三人寄ればなんとやら、俺一人で使い道を決めるより、この世界に詳しいコアさんと農業担当のククノチの意見も聞きたい。
「はい、マスター」
「はいそこ」
「ミーティングに菓子は必須だと思うよ。糖分は頭の活性化に繋がるらしいじゃないか」
「あっ、ではお酒も必要ですー。お酒は人を饒舌にしてくれますよー」
おうお前ら、大分欲望に忠実になってきたな。
「菓子はまぁいい、何か出してやるよ。だが酒はダメだ、麦茶にしろ」
「やった! 言ってみるもんだね」
「残念ですー。麦茶で我慢しますー」
出す菓子は何がいいかな? あ、久しぶりにコレ食べたい。
「ほれ、生八つ橋と麦茶だ。出したからには何か意見出せよ?」
「それじゃ、今度は真面目に一つ意見を出すよ。これを味見した後でね」
「麦茶もおいしいですねー」
ペロリと一口で生八つ橋を食べて麦茶で流し込むと、「甘くて美味しい」と感想を漏らし、満足そうにしっぽを振るコアさん。
「うん、それじゃあマスターも先日の戦闘で感じたと思うけど、この世界の魔力は使い道の幅が広い。対応が後手に回ると全滅する危険があるよね」
――確かに。
先日の襲撃では、俺とククノチが挑発に引っかかって前にでそうになった。
あの時コアさんが止めてくれなかったら、そのまま返り討ちにあって全滅してただろう。
あの時はたまたま何とかなったが、このままだと何時か全滅するよな。間違いない。
「そこで魔力を打ち消す能力を持った仲間と、魔力感知に優れた仲間を新しく加えることを提案するよ」
ふーむ、DPはあるし2人加入しても食べ物は賄える。
ならばここで新しいハーレム要員を入れるのも悪くない、というよりすごくいい!
「じゃあ、新しく2人仲間を入れよう。戦闘面はそれでいいとして生産の仕事は何をしてもらおうかね?」
「ダンゴウサギの肉だけじゃ飽きてきたし、そろそろ本格的に畜産に手を出したらどうだい?」
そうだな、俺は肉より卵がほしいから、畜産をやってもらうというのはいい案だ。
「となると、もう一人には水産関係をしてもらおうかな」
「いいね! 今の海洋エリアも軌道に乗ったし拡張してもっとたくさんの海産物を入れよう!」
「そうですねー、海産物が増えるのもいいですねー」
うちの子達、こんなに食欲旺盛だったっけ?
いや、他に娯楽がないからしょうがないのか。
「ダンジョンの拡張に関しては新メンバーにも聞いてもらいたいから、会議はいったん中断な。召喚の準備ができたら念話で連絡するからそれまで自由時間にしよう」
「じゃあ、私はウサギ狩りでもしてくるかな。マスターはどんなケモミミにするか悩むと長いからね」
「私はキュウリにあげるご飯を作ってきますー」
さて、今度はどんなケモミミ娘にするかな?
2人を見送った後、ゆっくり椅子に座り召喚ウィンドウを開いた。